(2019年以来の開催となった「The Box」)PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

遂に「The Box」で開催!CT第7戦『Western Australia Margaret River Pro』3日目

現地時間5月21日、マーガレットリバーを舞台としたCT第7戦『Western Australia Margaret River Pro』は3日目を迎えた。
この日は前日に入った南西ウネリが更に強まり、メインブレイクから2019年以来となる「The Box」に移動してメンズのRound of 16から再開。

「The Box」はスラブと呼ばれる底掘れするバレルオンリーのライトの波で、テイクオフのポジションもピンポイント。
CT選手でさえもテイクオフをメイクできない場面が多々あったほどのハードブレイク。
この日は波数が少なく、パーフェクトなコンディションではなかったが、いくつかのハイスコアが生まれていた。

カノア vs コナー

(タイラーとリラックスするコナー)
PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

H3では、五十嵐カノア vs コナー・オレアリーの日本人対決が実現。

両者共に「The Box」での経験は少なく、オージーレッグで調子が良く、フロントサイドになるカノアが有利かと65%のファン投票を見ても思えたが、いざヒートが始まるとコナーが序盤にバックサイドで綺麗にバレルを抜けて5.67をスコアした一方、カノアはワイプアウトを繰り返し、1ポイント止まり。

終了間際はコナーでさえテイクオフできずにフリーフォールしてしまうほどで、結局カノアは一本もメイクできずに敗退。
コナーが今シーズン初のQF行きを決め、カノアとの対戦成績を6戦中4勝に伸ばした。

(カノアでさえテイクオフできない波だった)
PHOTO: © WSL/Cait Miers
(バックハンドでバレルをメイクしたコナー)
PHOTO: © WSL/Cait Miers

勝利者インタビューでは「あなたは階段を上がってきて”見た目は最高じゃなかったけど、やりきった。グーフィーフッターのためにやったんだ。BOXで頑張る大きな男のためにやったんだ”と話していたよね」とマイクを向けられ、「ここでサーフィンした経験はほぼないんだ。何とかして感覚をつかもうとしたけど、正直まだ手探り。明日もっと多くの波を掴めば、きっと理解できるはずって思っていた。カノアがワイプアウトした時も、自分にプライオリティが来たと思って落ち着いていたよ。6年前に1度だけこの会場でヒートでサーフィンしたことがある。今回はヒート中に学ぶのが一番だと思っていたんだ」とコナー。

「これ以上ないってくらい最高の展開よね。昨日はメンタル面について話したけど、今日もまたしっかり集中していて、マーガレットリバーでQF進出を決めた。このイベントを通じて、どれくらい自信がついた?」との問いには、「昨日を乗り越えたことで、本当に肩の荷が下りた。今日はとにかくプレッシャーをかけずに自分らしくやろうって思っていたよ。昨日とはまた違ったチャレンジだったけど、今日はそんなに神経をすり減らす感じじゃなくて、むしろワクワクするような良いバトルができるチャンスだって捉えていた。そういうマインドでこのヒートに臨んだのさ。とにかく、できるだけ多くのチャンスを自分に与えたかった。でも正直、波は難しかった。経験があまりないポイントだから、良いポジションを見つけたり、正しい波を選ぶのが難しいんだ。それでも、1本は良い波をつかめたんで、まあ良かったと思うよ」と答え、最後に日本語でファンにメッセージを送っていた。

QFはバックドアのように「The Box」を手なずけていたハワイのバロン・マミヤとのカード。
次はメインブレイクが舞台になると予想されるため、勝算は十分にある。

コラピント兄弟がベスト8進出

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

オープニングヒートでワイルドカードのマイキー・マクドナー(AUS)と対戦したグリフィン・コラピント(USA)は、「The Box」での練習の成果を発揮。
手始めに7.00をスコアすると、更に攻めたライディングを披露。テイクオフからバレルにプルイン。フォームボールに押し出されてリップへ飛び上がり、ワイプアウトか?と一瞬完全に姿を消した後、スピットアウトして9.00のハイスコアを出してマイキーをコンビネーションに追い込んで圧勝した。

「人生で最高のヒートの一つだったと感じてる。ジャージ姿でバレルをメイクするのは、サーファーにとって夢なんだ。これまでのキャリアでは、その夢を逃してばかりだった気がする。タヒチやパイプラインで、次の日が最高のバレルコンディションなのに自分はもう負けてて、横で指をくわえて見てるだけとかね。本当に悔しい思いを沢山してきた。今日は朝起きて、” うわ、今日はここでサーフできるんだ”って実感が湧いた。このチャンスに感謝していたよ」

下のシークエンス3枚目を見るとこの体勢から戻れたのが驚異だ。

PHOTO: © WSL/Cait Miers
PHOTO: © WSL/Cait Miers
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(この日、カットをクリアしたクロスビー)
PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

グリフィンには嬉しいことがもう一つ。
弟のクロスビーがH6でジャクソン・バンチ(HAW)を相手に辛くも勝利してミッドシーズンカットもクリアしたのだ。

コラピント兄弟はトップ10入りして好調だった2024年とは一転、今年は兄のグリフィンでさえカットが危ない位置にいた。
それだけツアーで戦うことは厳しいのだ。

「海の中で、様々な感情が一気に溢れてきて、泣きそうになった。シーズンの始めに肘を骨折して、ポルトガルでは結果が出なくて。エルサルバドルで3位になって、”よし、戻ってきたぞっ!”って思ったんだ。それでオーストラリアに来たけど、最初の2戦でまたRound of 32が続いた。正直、この大会に入る時はかなり不安だった。でも、これまでやってきた努力と準備を信じるしかないと思った。去年のセスのストーリーにもすごく勇気づけられて、彼がここでやったことを自分もやってやろうと思った。そして今、こんな特別な瞬間を作ることができて、本当に嬉しい」

マーガレットリバーの次はコラピント兄弟の地元であるトラッセルズでのイベントが控えている。
きっと盛大な応援団が盛り上げることだろう。

残り1枠をかけての戦い

(カットのクリアは優勝が条件のイーマイカラニ)
PHOTO: © WSL/Cait Miers

クロスビーの喜びの裏でジャクソンはCS落ちが決定。
また、クロスビーの結果により、マシュー・マクギリヴレイ(RSA)もCS落ちが決定した。

残り1枠は昨日敗退したアレホ・ムニーツ(BRA)とまだ残っているイーマイカラニ・デヴォルト(HAW)の二人の争いとなる。
シチュエーションは、カットライン上のアレホが有利で、ランキング32位のイーマイカラニは優勝が条件となっている。

覚醒したバロン・マミヤ

(バロン・マミヤ)
PHOTO: © WSL/Cait Miers

「The Box」で最もバレルを手懐けていたのが、グリフィンの他、バロン・マミヤ(HAW)とトライアルから勝ち上がったローカルのジェイコブ・ウィルコックス。

バロンは僅か2回の経験ながら、ノースショアで鍛えたバレルのスキルとジャック・ロビンソンのフリーサーフィンをヒントに次々とバレルをメイクして8.00、7.17を重ね、トータル15.17で圧勝。
対戦相手のジェイク・マーシャル(USA)は全く手が出せず、3ポイント止まりだった。

「めっちゃ最高だったよ。内心はビビってたけど、”落ち着け、リラックスしろ”って自分に言い聞かせてた。パイプやチョープーみたいな波では、本当に興奮しすぎて、感情がコントロールできなくなって失敗することが過去にあったから、今回は普通のヒートだと思って冷静にいこうって思ってた。それでリズムに乗れて、すごく楽しいセッションになった。良い波もあったし、バレルにも入れたし、本当に最高だったよ」

PHOTO: © WSL/Cait Miers
PHOTO: © WSL/Cait Miers
PHOTO: © WSL/Cait Miers
PHOTO: © WSL/Cait Miers
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2度目のQF進出を果たしたジェイコブ

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder
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かつてジャック・ロビンソンと共に西オーストラリアの神童と呼ばれていたジェイコブはジョアオ・チアンカ(BRA)とのH5で8.17をスコア。
バックハンドでリーフブレイクの特性を見事に攻略して2019年のベルズ戦以来、2度目のQF進出を果たした。

「ずっと夢見てきた瞬間だった。昨日のラウンドを勝ち抜いた時点で、みんなが「The Box」に行きたがってるって聞いて、本当にテンション上がったよ。正直、最高のボックスってわけじゃなかったけど、あそこでヒートに出られたこと自体が本当に特別だった。これまで何度も観客として見てきて、自分も出たいって願ってたんだ。すごく楽しいヒートだったよ。ただ、自分としてはまだやれた感もある。ベストウェイブを狙いたい気持ちと、勝負に徹しなきゃいけないっていうバランスが難しくて。ラストに1本見送ったのは、優先権をキープしたかったから。ジョアンチアンカは本当に手強い選手。特にあんな波ではね。序盤に1本乗ってたけど、もしメイクしてたら10点満点だったかも。それくらいの波だった。展開が全然違ったかもしれない。でもまあ、今回はちょっとローカルの運が味方してくれたんじゃないかな」

ジョーディがトップのイタロに迫る

PHOTO: © WSL/Cait Miers

「The Box」でのヒートは8ヒート中6ヒートで、残りの2ヒートはメインブレイクに戻って進行した。

ここでジョーディ・スミス(RSA)がマルコ・ミニョ(FRA)を、イーマイカラニ・デヴォルト(HAW)がアラン・クリーランド(MEX)を共に圧倒してQF進出。

4大会連続のQF進出を決め、ライブランキング2位でトップのイタロとの差を更に縮めたジョーディは、「最高の気分だったよ。7ポイント台でスタートして、その後の9ポイント台は本当に特別だった。めっちゃ嬉しかった。「The Box」用に戦略は立ててたんだけど、現地に着いたら風が入り始めてね。これは風が本格的に入る前に早めに攻めないとって思った。そしたら運営がUターンして戻って、仕切り直してくれたんだ。完璧な判断だったよ。本当に自分には最高の展開だった」とコメント。

37歳、ツアー最年長のジョーディは2010年からの長いキャリアで最高のシーズンを送っている。
そのジョーディとQFで倒さなければツアー脱落が決定するイーマイカラニは、「ジョーディはこの波で世界一のサーファーの一人だから、本当に激しいバトルになると思う」と話している。

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

現地時間5月22日はオフが決定。
ネクストコールは現地時間5月23日の7時15分(日本時間の同日8時15分)

Western Australia Margaret River Pro Men’s Round of 16 Results:
HEAT 1: Griffin Colapinto (USA) 16.00 DEF. Mikey McDonagh (AUS) 2.43
HEAT 2: Leonardo Fioravanti (ITA) 12.16 DEF. Miguel Pupo (BRA) 7.04
HEAT 3: Connor O’Leary (JPN) 8.50 DEF. Kanoa Igarashi (JPN) 2.50
HEAT 4: Barron Mamiya (HAW) 15.17 DEF. Jake Marshall (USA) 5.73
HEAT 5: Jacob Willcox (AUS) 12.50 DEF. Joao Chianca (BRA) 5.87
HEAT 6: Crosby Colapinto (USA) 6.53 DEF. Jackson Bunch (HAW) 3.34
HEAT 7: Jordy Smith (RSA) 17.33 DEF. Marco Mignot (FRA) 7.17
HEAT 8: Imaikalani deVault (HAW) 15.33 DEF. Alan Cleland (MEX) 8.26

Western Australia Margaret River Pro Men’s Quarterfinal Matchups: 
HEAT 1: Griffin Colapinto (USA) vs. Leonardo Fioravanti (ITA)
HEAT 2: Connor O’Leary (JPN) vs. Barron Mamiya (HAW)
HEAT 3: Jacob Willcox (AUS) vs. Crosby Colapinto (USA)
HEAT 4: Jordy Smith (RSA) vs. Imaikalani deVault (HAW)

Western Australia Margaret River Pro Women’s Round of 16 Matchups: 
HEAT 1: Molly Picklum (AUS) vs. Bella Kenworthy (USA)
HEAT 2: Caroline Marks (USA) vs. Bronte Macaulay (AUS)
HEAT 3: Caitlin Simmers (USA) vs. Brisa Hennessy (CRC)
HEAT 4: Luana Silva (BRA) vs. Erin Brooks (CAN)
HEAT 5: Gabriela Bryan (HAW) vs. Sally Fitzgibbons (AUS)
HEAT 6: Sawyer Lindblad (USA) vs. Bettylou Sakura Johnson (HAW)
HEAT 7: Isabella Nichols (AUS) vs. Vahine Fierro (FRA)
HEAT 8: Tyler Wright (AUS) vs. Lakey Peterson (USA)

WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/

(黒本人志)

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