(ミッドシーズンカットを免れたコナー) PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

CT第7戦『Western Australia Margaret River Pro』2日目は壮絶な戦いに!

西オーストラリアのマーガレットリバーで開催中のCT第7戦『Western Australia Margaret River Pro』は2日間のオフの後、メンズElimination Roundから再開。

ウィメンズのElimination Roundの後、メンズRound of 32は二つのヒートを同時進行させるオーバーラッピングヒートを利用して日没までにベスト16が決定。

会場のメインブレイクは、公式8-12ft。まるで冬のサンセットビーチのようなワイルドでパワフルな波となり、目の覚めるようなビッグマニューバーの連続の裏で何本ものサーフボードが餌食になり、番狂わせが続出した。
ミッドシーズンカットによる一喜一憂もあり、壮絶な1日となった。

カノアがオージーレッグトップを固める

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

日本の五十嵐カノアとコナー・オレアリーはオーバーラッピングヒートで同じラインナップに並び、プライオリティを持っていたカノア はベルズでの怪我で欠場したラムジ・ブキアム(MAR)のリプレイスメントに入ったウィンター・ヴィンセント(AUS)と対戦。

ウィンターは今年の『World Junior Championships』で2位になった20歳のアップカマー。
CSでも2024年の南アフリカですでに3位に入っており、層が厚いオージーの中でも期待されている一人。

ヒートは一つ一つのセクションを丁寧に大きく乗ったカノアが序盤からリード。後半にはスピーディーなターンとカットバック、クローズセクションも綺麗に決めてヒートのハイスコア7.33を出して圧勝した。

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

ベルズで2位、ゴールドコーストで3位になったカノアは、通常のCTランキングとは別に設けられた「GWM Aussie Treble」というオーストラリアレッグ3戦のポイントによるシリーズでトップに立っている。

ベルズで優勝したロボ、ゴールドコーストで優勝したフィリッペがこのラウンドで敗退したため、シリーズチャンピオンの可能性が高くなっている。

勝利者インタビューではまず「カノア、オーストラリアでの好調ぶりは本当に素晴らしいわね。今日のマーガレットリバーでもその勢いを保っていたけど、何があったの?」と聞かれ、「コーチを信頼して、彼の言うことに従ったまでさ。今日は、誰が勝っているのかほとんど分からないような感じだった。みんなバラバラに散っていて、セットを避けながらの展開だった。戦略というよりは、とにかく“生き残る”ようなヒートだった。みんなで避けるゲームって感じで話してて、ワイルドな沖に出て、戻ってきて、ミディアムサイズの波を探す。そんな感じだった。ちょっと迷った感じもあったけど、1本か2本は乗れたので、十分だったよ」とコメント。

PHOTO: © WSL/Cait Miers

「そういう状況で、ずっと動き回っている中で、どうやって集中してラインを決めて、アクションできるセクションを見極めているの?」との問いには、「正直、乗れそうな波には何でも乗ったんだ。普通のヒートだったら、5秒くらいかけて波を見極め、” この波でスコア出せるかな?”って判断してから動くけど、今日は乗れそうなら、とりあえず行くって感じだった。多分、5〜6本は乗ったけど、その中の3本はすごく悪い波だった。それでも良いからとにかく乗る。壁に何かを投げ続けて、頼む引っかかってくれって気持ちだった」と話していた。

最後に「今のところ上手くいってるよね。素晴らしいリアクションがあって、すでに2位と3位も獲得してAussie Trebleをリードしている。この勢いを保つには、何が必要だと思う?」と聞かれ、「2位とか4位とかでも本当に僅差なんだ。このイベントは本当に様々なことが変わり得る場所。みんなトップのレースに食い込めるかどうかがかかっていて、ここで大きな結果を狙っている。シーズン後半に向けて、すごく大事なイベントなのさ。色々な意味で、このイベントは特別な重みを感じるね。幸い今年はカットを突破できたけど、それでもこのイベントには何か特別な存在感がある。どのイベントも1万ポイントがかかっているとはいえ、この大会のポイントは他よりも大きく感じられるのさ。だからこそ、ここで結果を出したい。ランキングでも上のポジションに行けるし。自分としては、一つずつヒートを勝って、集中し続けたい」と返していた。

コナーがカットを免れる

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

次のH6では、コナーがリアム・オブライエン(AUS)と対戦。
コナーはランキング19位、リアムは23位と違いにミッドシーズンカットをかけてのヒートになった。

両者ともにスコアが伸びない中、最初にリアムが強烈なターン一つで7.83をスコア。しかし、コナーは大柄な身体を活かしたパワフルなバックハンドアタックで8.50を返し、この勝負に競り勝った。

「本当に緊張してたよ。あのヒートにはすごく多くのものがかかっていたから。数日間、試合が空いてしまい、その分色々と考え込む時間も多かった。スポーツ心理学者のマーク・スパーゴとかなり密に取り組んでいて、ポジティブな感情もネガティブな感情もすべて“普通のこと”だって自分に言い聞かせてる。要はそれをちゃんと認識して、受け入れて、“これはゲームの一部なんだ”って考えること。多くのものがかかってるから、緊張してもいいし、不安になっても、怖くなってもいい。それが普通なんだ。特にこういう波でリアム・オブライエンと戦うとなると、彼は本当に強い。今日のようなコンディションではトップレベルのサーファーだからね。僕の場合、緊張すると後ろ足に体重をかけて守りに入りがちなんだけど、最近は“緊張した時こそ前に出ろ、もっと攻めろ”って自分に言い聞かせてる。それが僕が目指すサーフィンだし、パフォーマンスなんだ。ただ、それを実行するだけ。メンタルとの戦いはずっと続いてる。それだけは確かだね」

コナーはライブランキング15位に浮上して後半戦進出も確定させた一方、リアムはカットライン下の23位でCS落ちとなった。
ゴールドコーストでヒーローになった彼だが、現実は厳しい。

次のRound of 16は「カノア vs コナー」の日本人対決が実現。
過去の対戦成績は5戦中3ヒートでコナーが勝っている。

(CS落ちとなったリアム) PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

イタロ、ヤゴ、フィリッペ 、イーサン、ロボが…

(ヤゴを倒したマイキー) PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

Elimination Roundより5分増えた40分のオーバーラッピングヒートとなったRound of 32は、最初からワイルドカードが番狂わせを起こしていた。

ワイルドカードのマイキー・マクドナー(AUS)がランキング2位のヤゴ・ドラ(BRA)を倒したのだ。

2018年、16歳の時にベルズ戦にワイルドカードで出場経験があるマイキーは、23歳になって2度目のワイルドカードを得た。
本当はベルズでワイルドカードを得ていたが、怪我で欠場。今回のマーガレットリバーが復帰戦となる。
CSでは2024年のゴールドコーストでの開幕戦で優勝したが、第2戦以降は全く結果を残せなかった。

「次のラウンドに進めて本当に最高の気分だよ。事前に一度この会場でヒートを経験してたから、ある程度何が求められるかわかってた。ヤゴは素晴らしいコンペティターで、めちゃくちゃキレてたけど、自分はとにかく“どこで大きなターンを入れるか”っていうことに集中したんだ。まるで“海の戦場”って感じで、沢山巻かれたね。その分、価値ある勝利だった。昨年は正直きつかった。本当に“天国と地獄”の両方を味わったと思う。でも、こうしてビッグステージで戦えるチャンスをまたもらえて、めっちゃ嬉しい。自分にはこの場所にふさわしいって気がしてるし、この勢いで次のニューカッスルのCSにも良い感触を持って臨めそうだね」
マイキー・マクドナー

PHOTO: © WSL/Cait Miers

更にH9ではトライアルから勝ち上がったジェイコブ・ウィルコックス(AUS)がイタロ・フェレイラ(BRA)とのグーフィーフッター対決で8.33を出して圧勝。
これでイタロはオーストラリアレッグの3戦を全てワイルドカードにやられている。
ライブランキングでは、まだイタロがトップを維持しているが、2位に浮上してきたジョーディ・スミス(RSA)がポイント差を縮めている。

「イタロと対戦できて最高だったよ。彼は大好きなサーファーの一人。本当に才能に溢れていて、見ていて圧倒される。自分が尊敬しているグーフィーフッターと対戦できるのはテンションが上がるし、それに勝てたことは本当に最高だった。でも正直に言うと、あのヒートではもっとしっかり勝てた気もしてる。1本しっかりメイクしたライドはあったけど、他は転んじゃったしね。今日の波は楽しいよ。風向きがちょっと南東よりに変わってて、それがメインブレイクには合ってると思う。ウネリもちょっと落ち着いている。良い波に乗れるチャンスもあるし、楽しかった」
ジェイコブ・ウィルコックス

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder
PHOTO: © WSL/Cait Miers

H11では、ゴールドコーストでの優勝で6位まで浮上したフィリッペ・トレド(BRA)がカットライン下のルーキー、ジャクソン・バンチ(HAW)とのロースコア勝負に敗退。
逆にジャクソンは首の皮一枚で繋がった。

H12では、カットライン下のクロスビー・コラピント(USA)がランキング5位のイーサン・ユーイング(AUS)を相手に「この日最高のヒート」と称される勝負を制した。

同じく、カットライン下で境地に立たされているイーマイカラニ・デヴォルト(HAW)は最終ヒートで8.00を出してジャック・ロビンソン(AUS)を倒した。
ローカルのジャックは今イベントで3連覇を狙っていたが、まさかの早期敗退となった。

「シーズンの最初からこんな感じでやれたら良かった。このイベントは自分に合ってる気がするし、去年もいい成績を残せた。実はこれはリマッチなんだ。去年のクオーターでジャックに最後の30秒、ブザービーターで逆転されたのさ。すごく楽しいヒートだったよ。ジャックとやると、毎回バチバチに激しいヒートになる。彼はこの場所で倒すべき相手だって、みんなそう思ってるよね。だから今回勝てて本当に嬉しい」
イーマイカラニ・デヴォルト

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

9名が残留、9名のカットが決定

(後半戦進出を決めたアラン)
PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

本日の結果により、コナーの他、ジェイク・マーシャル(USA)、グリフィン・コラピント(USA)、ジョアオ・チアンカ(BRA)、セス・モニーツ(HAW)、コール・ハウシュマンド(USA)、アラン・クリーランド(MEX)、マルコ・ミニョ(FRA)、ジョエル・ヴォーン(AUS)の残留が決定。

一方、CS落ちとなったのは、リアムの他、ライアン・カリナン(AUS)、デイヴィッド・シルヴァ(BRA)、イアン・ジャンティ(HAW)、ジョージ・ピッター(AUS)、サミュエル・プーポ(BRA)、イアン・ゴーベイア(BRA)、エドガー・グロッジア(BRA)、ラムジ・ブキアム(MAR)の9名。

怪我で欠場が続いているガブリエル・メディナ(BRA)はシーズンワイルドカードを獲得している。

まだ決定していないカットライン付近の選手は、アレホ・ムニーツ(BRA)、マシュー・マクギリヴレイ(RSA)、クロスビー・コラピント(USA)、ジャクソン・バンチ(HAW)、イーマイカラニ・デヴォルト(HAW)の5名。

サリーとレイキーが残留に望みをつなぐ勝利

(レイキーとエリン) PHOTO: © WSL/Cait Miers

Elimination Roundのみ行われたウィメンズサイドは、ベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)、サリー・フィッツギボンズ(AUS)、エリン・ブルックス(CAN)、レイキー・ピーターソン(USA)が勝ち上がった一方、ワイルドカードのウィロー・ハーディ(AUS)、ジョアン・ディファイ(FRA)のリプレイスメントで出場が続いているナディア・エロスタルベ(EUK)が敗退。

ゴールドコーストで2位になりながらも、カットライン下の15位に位置するサリーは、残り8分に今日なセットを超える際にボードが折れるアクシデントがあったが、序盤に乗った2本で逃げ切ることに成功した。

サリーと勝ち上がったサクラはゴールドコーストでの優勝の後、一転してElimination Round行きとなったが、ハワイアンらしいビッグターンでヒートのハイスコアを出していた。

「バーレーヘッズでの結果を思えば、正直、こんな所にいたくない。でも、私にとって良い目覚ましになったと思う。気持ちを整理して、また一からやり直すだけ。ここには勝ちを狙いに来ている」

波を超えるだけでボードが折れるパワーだった) PHOTO: © WSL/Cait Miers
(Elimination Roundを勝ち上がったサクラ)
PHOTO: © WSL/Cait Miers

ネクストコールは現地時間5月21日の7時15分(日本時間の同日8時15分)
予報では南西ウネリが続き、朝はオフショアの予報。
「The Box」開催の可能性もある。

Western Australia Margaret River Pro Men’s Elimination Round Results:
HEAT 1: Jacob Willcox (AUS) 11.03 DEF. Barron Mamiya (HAW) 9.24, Ryan Callinan (AUS) 8.20
HEAT 2: Imaikalani deVault (HAW) 12.50 DEF. Winter Vincent (AUS) 11.64, Seth Moniz (HAW) 7.76
HEAT 3: Ian Gentil (HAW) 14.33 DEF. Mikey McDonagh (AUS) 10.90, Alejo Muniz (BRA) 8.37
HEAT 4: Crosby Colapinto (USA) 10.00 DEF. Edgard Groggia (BRA) 9.50, Deivid Silva (BRA) 8.93

Western Australia Margaret River Pro Women’s Elimination Round Results:
HEAT 1: Bettylou Sakura Johnson (HAW) 8.84 DEF. Sally Fitzgibbons (AUS) 8.33, Willow Hardy (AUS) 7.97
HEAT 2: Erin Brooks (CAN) 11.50 DEF. Lakey Peterson (USA) 10.27, Nadia Erostarbe (EUK) 4.47

Western Australia Margaret River Pro Men’s Round of 32 Results:
HEAT 1: Mikey McDonagh (AUS) 12.77 DEF. Yago Dora (BRA) 11.30
HEAT 2: Griffin Colapinto (USA) 10.97 DEF. Cole Houshmand (USA) 9.90
HEAT 3: Leonardo Fioravanti (ITA) 17.13 DEF. Ian Gentil (HAW) 13.60
HEAT 4: Miguel Pupo (BRA) 15.27 DEF. George Pittar (AUS) 11.83
HEAT 5: Kanoa Igarashi (JPN) 13.16 DEF. Winter Vincent (AUS) 7.93
HEAT 6: Connor O’Leary (JPN) 14.37 DEF. Liam O’Brien (AUS) 13.33
HEAT 7: Jake Marshall (USA) 12.76 DEF. Samuel Pupo (BRA) 10.10
HEAT 8: Barron Mamiya (HAW) 13.54 DEF. Ian Gouveia (BRA) 13.06
HEAT 9: Jacob Willcox (AUS) 15.00 DEF. Italo Ferreira (BRA) 12.87
HEAT 10: Joao Chianca (BRA) 13.93 DEF. Matthew McGillivray (RSA) 10.87
HEAT 11: Jackson Bunch (HAW) 9.13 DEF. Filipe Toledo (BRA) 7.56
HEAT 12: Crosby Colapinto (USA) 16.00 DEF. Ethan Ewing (AUS) 14.33
HEAT 13: Jordy Smith (RSA) 12.50 DEF. Edgard Groggia (BRA) 8.53
HEAT 14: Marco Mignot (FRA) 13.67 DEF. Joel Vaughan (AUS) 12.80
HEAT 15: Alan Cleland (MEX) 13.40 DEF. Rio Waida (INA) 10.50
HEAT 16: Imaikalani deVault (HAW) 14.33 DEF. Jack Robinson (AUS) 11.33

Western Australia Margaret River Pro Men’s Round of 16 Matchups:
HEAT 1: Mikey McDonagh (AUS) vs. Griffin Colapinto (USA)
HEAT 2: Leonardo Fioravanti (ITA) vs. Miguel Pupo (BRA)
HEAT 3: Kanoa Igarashi (JPN) vs. Connor O’Leary (JPN)
HEAT 4: Jake Marshall (USA) vs. Barron Mamiya (HAW)
HEAT 5: Jacob Willcox (AUS) vs. Joao Chianca (BRA)
HEAT 6: Jackson Bunch (HAW) vs. Crosby Colapinto (USA)
HEAT 7: Jordy Smith (RSA) vs. Marco Mignot (FRA)
HEAT 8: Alan Cleland (MEX) vs. Imaikalani deVault (HAW)

Western Australia Margaret River Pro Women’s Round of 16 Matchups: 
HEAT 1: Molly Picklum (AUS) vs. Bella Kenworthy (USA)
HEAT 2: Caroline Marks (USA) vs. Bronte Macaulay (AUS)
HEAT 3: Caitlin Simmers (USA) vs. Brisa Hennessy (CRC)
HEAT 4: Luana Silva (BRA) vs. Erin Brooks (CAN)
HEAT 5: Gabriela Bryan (HAW) vs. Sally Fitzgibbons (AUS)
HEAT 6: Sawyer Lindblad (USA) vs. Bettylou Sakura Johnson (HAW)
HEAT 7: Isabella Nichols (AUS) vs. Vahine Fierro (FRA)
HEAT 8: Tyler Wright (AUS) vs. Lakey Peterson (USA)

WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/

(黒本人志)

この記事に 関連するタグ

※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等を禁じます。