ベルズ、ゴールドコースト、マーガレットリバーと巡るオーストラリアレッグの最終イベント、CT第7戦『Western Australia Margaret River Pro』が現地時間5月17日〜27日に開催される。
今年は通常のCTランキングとは別に「GWM Aussie Treble」というシリーズが設けられ、日本の五十嵐カノアが堂々のカレントリーダーの座を手に入れている。
また、マーガレットリバーはシーズン後半戦を回る選手を決めるミッドシーズンカットの最終イベントになり、ライン付近にいる選手にとっては正念場となる。
イベント前のウェスタンオーストラリアには理想的なウネリが入り、そのセッションの模様が公開されている。
首位を固めたいガブリエラ・ブライアンとイタロ・フェレイラ

PHOTO: © WSL/Cait Miers
シーズン前半の折り返し地点でトップに立っているのは、ハワイのガブリエラ・ブライアンとブラジリアンのイタロ・フェレイラ。
両者は対照的で、ガブリエラが3位、2位、1位と着実に順位を上げてきた一方、イタロは開幕から3戦の勢いが特にオーストラリアレッグで衰えている。
「ゴールドコーストではちょっと大変だったけど、ウェスタンオーストラリアのマーガレットリバーに戻ってこれて本当に嬉しいわ。ここに来るたびに、気分がリセットされる感じがする。大好きな場所なの。波も良さそうだし、ワクワクしてる。特にミッドシーズンカットにまつわる思い出が多い場所。ツアーに出てから毎年ここに来る時は、カットラインの下だったけど、今年はまったく違う。初年度はカットに残るために2位に入らなきゃいけなくて、2位になった。その後ここで初優勝して、イルカと一緒に波に乗った。本当に特別な場所なの。もう1年経ったなんて信じられないけど、すごく記憶に残ってるし、またここに戻れたのが嬉しい。この場所の持つ生のエネルギーが本当に大好きよ」
ガブリエラ・ブライアン
過去のマーガレットリバー戦では常にミッドシーズンカットのプレッシャーを抱えていたガブリエラ。
そのたびに彼女はツアーでのベストパフォーマンスを発揮し、2022年には2位でルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。ツアーに加わった5人のルーキーの中で、唯一後半戦進出を果たした。
2023年はRound of 16で敗退し、CSへの降格を覚悟していたが、それも見事にカバーした。
2024年、遂にこの地で初のCT優勝を勝ち取り、勝利を象徴するように、イルカの群れが彼女の波に寄り添ったシーンは印象的だった。
今シーズンは、エルサルバドルでの優勝、ポルトガルでの準優勝と、2戦連続ファイナル入りが現在のランキング1位に大きく貢献している。
今大会でもメインブレイクでの強さを示し、その座をさらに固めたいところだ。

PHOTO: © WSL/Cait Miers
「去年は本当にクレイジーだった。ツアーから落ちかけたんだ。しかし、今はトップさ。去年はマーガレットリバーの後、タヒチで勝って、リオでも勝って、最終的に世界2位になった。あの瞬間にすべてが変わったのさ。時にはリセットが必要で、今年はそれを実行した。西オーストラリアは本当に特別な場所。美しいし、朝日も夕日も最高。波も至る所にある。ここはサーファーにとって理想の場所なんだ。レギュラー、グーフィー、バレル、エアセクション、なんでもある。一回のセッションで、バレルもビッグターンもビッグエアも全部できるから、大好きなんだ」
イタロ・フェレイラ
昨年のイタロはミッドシーズンカットの危機に直面した状態でウェスタンオーストラリアに臨み、9位でカットをクリアした。
次のタヒチとブラジルで優勝と以前の野獣が復活して最終的にはランキング2位でシーズンを終えていた。
今年はベルズビーチとゴールドコーストではどちらもワイルドカードに敗れ、優勝経験がないマーガレットリバー戦に挑む。
ブラジリアンのヤゴ・ドラ、南アフリカのジョーディ・スミスが2位と3位に迫る中、オーストラリアレッグの最終イベントで成功を収めたい。
ジャックロボの野望

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder
ウェスタンオーストラリアローカルで優勝候補の筆頭、ロボことジャック・ロビンソン。
2022年にホームで悲願の初優勝を果たし、2023年はケガにより欠場したが、2024年に再び登場し勝利。ルーキーイヤーの2021年以降、マーガレットリバーで無敗を誇っている。
2022年、2024年共にファイナルでジョン・ジョン・フローレンスと対戦しての優勝はロボにとって大きな意味を持つ。
2025年はベルズで五十嵐カノアと争って優勝したが、ゴールドコーストではオージーワイルドカードに敗れ最下位に…。
特別な地元の舞台で、再び勢いを取り戻すことを誓っている。
「ホームに戻り、自宅のベッドで寝られるのは最高だよね。ここに戻ると地元の応援を感じるし、自分にとってすべての始まりだった。ジョンは本当に刺激的な存在。時代のベンチマークを作った人で、自分は彼より少し若いからずっと彼に憧れていたし、いつか勝ちたいと思ってた。だから実現できて最高だった。今年はみんな調子が良いし、良いイベントになると思う。ランキングのことはあまり考えず、とにかくここで過ごせることが嬉しい。シーズン終盤に全部決まるだろうしね」

念願のCT初優勝を狙うブロンテ・マコーレー

PHOTO: © WSL/Cait Miers
タティアナ・ウェストン・ウェブのリプレイスメントに入ったブロンテ・マコーレーもウェスタンオーストラリアを代表するローカルの一人。
6シーズンにわたるCTキャリアを誇るベテランだが、昨年でフルタイムでのCT出場から引退した。
1989年に優勝した元CT選手のデイブ・マコーレーを父に持ち、姉のローラも2014年と2017年にワイルドカードとして出場。
マーガレットリバーが1985年にCTの舞台になって以来、マコーレー一家にとって特別なイベントになっている。
ブロンテは過去4年のうち3回でSF進出を果たしている。
悲願のCT初優勝をこの舞台で飾る可能性も十分にある。
「正直、また戻ってくるとは思っていなかったわ。1か月くらい前にWSLから電話がかかってきて、“去年のチャレンジャーシリーズでの順位で、あなたが次点だからワイルドカードのチャンスがある”って言われて、本当に嬉しいサプライズだった。それで“よし、もうちょっとサーフィンしなきゃ、メインブレイクに行こう”って思ったの。夏の間は『ライジング・タイド』の女の子たちにコーチングしていて、今朝は彼女たちが大きなサイズのメインブレイクでチャージしてた。自分は大学にも通ってるから、サーフィンする時間は減ってるけど、合間を見て少しでも入るようにしてるわ」
3名のワイルドカード

ブロンテの他、ワイルドカードはマイキー・マクドナー。
トライアルで勝ったジェイコブ・ウィルコックスとウィロー・ハーディが本戦出場を果たしている。
ジェイコブは今イベントで8回目の出場。
2024年にルーキーとしてCT入りを果たしたが、同大会でミッドシーズンカットによりツアーを離脱。
今大会には並々ならぬ思いがある。
ウィローは2021年に僅か14歳でトライアルを勝ち抜きCT初出場を果たした逸材。
現在18歳となり、今季CSの出場資格を得たばかりのアップカマーで、地元の波を知り尽くした強みを活かしてジャイアントキラーになる可能性を秘めている。
生き残りをかけた最後のチャンス

PHOTO: © WSL/Cait Miers
3年に渡り、マーガレットリバーはミッドシーズンカット前のイベントとして他にはない緊張感を持ったイベントになっている。
今年はベテラン勢ではサリー・フィッツギボンズ(AUS)、ライアン・カリナン(AUS)、ブリッサ・ヘネシー(CRI)、ルーキーではジョージ・ピッター(AUS)、ジャクソン・バンチ(HAW)、ベラ・ケンワーズィ(USA)、ヴァヒネ・フィエロ(FRA)がマーガレットリバーでの好成績を必要としている。
また、今季は例年以上にランキングが混戦となっており、男女ともに生き残り争いは白熱している。
メンズサイドでは、アラン・クリーランド(MEX)、ジョアオ・チアンカ(BRA)、リアム・オブライエン(AUS)3人が同点でカットライン上に並ぶという異例の状況。
ウィメンズサイドでは、3つのカット上の席を巡って8名が争っており、全員に突破の可能性が残っている。
シーズン後半戦に進めるのは、メンズ22名、ウィメンズ10名。
敗れた選手はCSに回ることになる。
ただし、2026年はウィメンズのCT枠が24名に拡大されることが決定しているため、11〜14位の選手は2026年の出場資格を得られる。
一方で、2025年の後半戦には出場できないという複雑な構造になっている。
中でも15位のサリーはゴールドコーストで2位になりながらも危ないラインにいる。
Western Australia Margaret River Pro Men’s Opening Round Matchups:
HEAT 1: Filipe Toledo (BRA) vs. Connor O’Leary (JPN) vs. Imaikalani de Vault (HAW)
HEAT 2: Ethan Ewing (AUS) vs. Matthew McGillivray (RSA) vs. Ryan Callinan (AUS)
HEAT 3: Kanoa Igarashi (JPN) vs. Alan Cleland (MEX) vs. Edgard Groggia (BRA)
HEAT 4: Jordy Smith (RSA) vs. Joao Chianca (BRA) vs. Mikey McDonagh (AUS)
HEAT 5: Yago Dora (BRA) vs. Liam O’Brien (AUS) vs. Winter Vincent (AUS)
HEAT 6: Italo Ferreira (BRA) vs. George Pittar (AUS) vs. Jacob Willcox (AUS)
HEAT 7: lan Gentil (HAW) vs. Barron Mamiya (HAW) vs. Cole Houshmand (USA)
HEAT 8: Jack Robinson (AUS) vs. Marco Mignot (FRA) vs. Samuel Pupo (BRA)
HEAT 9: Miguel Pupo (BRA) vs. Alejo Muniz (BRA) vs. lan Gouveia (BRA)
HEAT 10: Leonardo Fioravanti (ITA) vs. Griffin Colapinto (USA) vs. Crosby Colapinto (USA)
HEAT 11: Rio Waida (INA) vs. Joel Vaughan (AUS) vs. Deivid Silva (BRA)
HEAT 12: Jake Marshall (USA) vs. Seth Moniz (HAW) vs. Jackson Bunch (HAW)
Western Australia Margaret River Pro Women’s Opening Round Matchups:
HEAT 1: Molly Picklum (AUS) vs. Sawyer Lindblad (USA) vs. Nadia Erostarbe (ESP)
HEAT 2: Caitlin Simmers (USA) vs. Lakey Peterson (USA) vs. Bronte Macaulay (AUS)
HEAT 3: Gabriela Bryan (HAW) vs. Vahine Fierro (FRA) vs. Willow Hardy (AUS)
HEAT 4: Isabella Nichols (AUS) vs. Luana Silva (BRA) vs. Sally Fitzgibbons (AUS)
HEAT 5: Tyler Wright (AUS) vs. Erin Brooks (CAN) vs. Brisa Hennessy (CRC)
HEAT 6: Bettylou Sakura Johnson (HAW) vs. Caroline Marks (USA) vs. Bella Kenworthy (USA)
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(黒本人志)