(ガブリエル・メディナ)

ガブリエル・メディナのWSLジャッジ批判について

F+(エフプラス)

私はSNSノータッチ派なので、超うといほうなんだけど、知り合いからガブのインスタ炎上話を聞いて、その後いろんな人からどう思うかを問われたので、個人的な意見として書いておこうと思う。
事の成り行きというか、あらすじはTHE SURF NEWSが詳しいので、この一件を知らない人はまずそちらを読んでください。

面倒だから事件を50字以内で述べよ、というなら、

ガブがインスタでWSLジャッジにクレームを出すと、即座にWSLのCEOエリック・ローガンが反論と共に非難、SNS炎上

(ピッタリ50字)

ガブのいうことはもっともだと思うし、○○推し、みたいなトレンドは昔から確実にある。タイトルホルダーは昔から、その推しのトレンドをうまくつかんだ選手と言っても過言ではないと思う。近年ブラジリアンに点が出ないというが、その逆にブラジリアンに甘い時だってあった。かつてのフィリッペとかイタロとか、最近のチアンカとかはいい例だと思う。まぁ、ガブ自身がどうだったか、というのは微妙なところで、なんか、ガブって昔から好かれていないというか、ヤリ玉にあがりがちというか、コーチである父と共にコンペティターエリア出禁を食らったり、インタビューでの発言で謝罪とか、何かと気の毒な形でブラジルの出る杭になって打たれていると思う。それでも若い頃には推しの時期もあったか。

(イタロ・フェレイラ)PHOTO:© WSL/Aaron Hughes

私はあのプールのファイナルのジャッジが違うとは思わなかった。確かにイタロのほうがいろいろやってたけど、いかんせん軽いというか、スプレーが薄い印象。当たりというかえぐりが浅い感じがしたから、そこに配点の重きを置くとグリフィンなんだろうと思う。ただ、ガブのいうジャッジに一貫性がないとか、このままいくとサーフィンの進化を阻害しかねない、という論点には100%賛同できる。最近まるでわからんジャッジだし、へぇ~、それでいいんだ、って何度思ったことか。タイミングとポケットだけのターンでいいなら、イタロのあれでもいいとしないとダメなんだけど、そうではないところが一貫性に欠ける部分だと思う。

ま、それらすべてを踏まえたうえでひとこと言うなら、だってそういう所でやってるんだからしょうがないじゃん、である。もちろん反旗を翻してジャッジが変わるならそれでもいいけど、ジャッジというのは双方が納得することのほうが少ないわけだから、どっちに転んでも文句は出るものだ。そしてCEOの主張のように、ジャッジが完全に全選手に対してフェアであったことなどおそらく一度もない。もちろんいいジャッジだと思うことはあっても、それは見ている私と意見が合っただけであって、別方向から見ればまた違うことになる。
WSLに所属し、WSLで競技をするということは、WSLルールにのっとってWSLジャッジの判定従う、ということなので、それがイヤならそこでやるな、という話でしかない。
WSLはサーフィンに対する情熱とか愛情とか選手に対する思いやりとかリスペクトとか、大いにある、っていうけど、ぶっちゃけそれらは企業的視点から考えたらジャマでしかないと思う。そんなウエットなしがらみを気にしてたら商売として成立しない。その損益分岐点というか、バランスのいいところが今のドリームツアーの形なんだと思う。以前とは桁違いの賞金額、各試合イチコケでも100万円を超えるギャランティーマネーなど、その利益を享受するなら、黙って従えだ。
昔のようなファミリーサーカス的なツアーであれば、選手とジャッジが顔つき合わせて議論したりとかあるだろうけど、今は隔離だからねぇ。
みんなサーフィンが大好きで、賞金なんか安くても頑張る、ジャッジだって手弁当でもいいって人がやる、みんな貧乏だけど、頑張って盛り上げていきましょう、的な、ある意味選手もスタッフもボランティアみたいなところから始まっているわけだけど、それが大きくなればお金が動く分、管理され、コントロールされ、ってことになるのは当然の帰結だ。

(イエロージャージのアメリカン、グリフィン)PHOTO:© WSL/Aaron Hughes

WSLはアメリカベースの団体で、アメリカのスポーツシーンで勝負するべく様々なことを行っている。アメリカのプロスポーツシーンは世界で見ても桁違いに大きなマーケットであり、そこで成功するということは巨額のお金が動くということだ。
そこにアメリカンヒーロー不在、というストーリーはやっぱりないんだろうな、と思う。
ブラジル人がイエロー着てるよりアメリカ人がイエロー着てたほうがアメリカウケはするだろう。少なくとも投資する側のアメリカ企業は、「で、アメリカ人は強いんですか?」ってなるのは当然だろうし。まぁ、ここでブラジルの企業が巨額の費用をツアーにつぎ込めば、話は一転するんだろうけど。

ASPからWSLになったときに、ベースがアメリカに行ったらこういう風になっていくんだぞ、って警鐘を鳴らしたジャーナリストが世界には多くいた。で、実際にこうなり、選手は潤い、サーファーはアスリートになり、仲間ではなく、コーチや専属スタッフと旅をするようになったけど、SNSの発達もあっていろいろ窮屈なことになった。
私はシンプルに、負けた選手が夜な夜なバーで暴れる、みたいなほうが好きかな(笑)。だってサーファーってそんなもんでしょ。
そしてサーフィンには滑らかさ、美しさが必要だと思う。テールワークではないレールワーク。だってそれがサーフィンでしょ。
ま、それらも個人的な好みであって、それらが正しいというわけではなく、WSLサーファーにとって絶対である現状のルールブックでは、WSLではWSLオフィスがすべて正しい。組織ってそういうことだ。
だからガブのこの問題も、正式な手続きを踏んでのプロテストであれば、内容は私たちのところまで届くことはなかっただろうし、こうしてSNS上で拡散されたところで、WSLが大きく変わるとも思えない。ま、ジャッジが俺らヤバイのかな、って危機感感じてくれればラッキーといえる程度だ。

この件に関してはルールブック上では完全に処分の対象だけど、ガブなので罰金レベルだろう。ボビー・マルチネスみたいに除名ってことになると、いよいよ独裁政権時代の到来か、という感じになるし、数試合出場停止とかでもSNS大炎上必至。何しろガブのインスタフォロワーは1120万人、WSLの3倍の数だ。
そうなると新しいツアーの誕生も現実味を帯びてくるかもしれない。団体というのはそうやって分離、結合しながら成長していくものでもあるから。

F+編集長つのだゆき

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