現在、カリフォルニアのローワー・トラッセルズで開催中のCT第8戦『Lexus Trestles Pro』にワイルドカードで出場しているケリー・スレーター。
このイベントに出場した大きな理由は、ケリーのアパレルブランド「Outerknown」がブランド設立10周年の節目としてイベントのパートナーになったためで、タヒチやフィジーのワイルドカードと異なり、53歳のケリーにパフォーマンス主体のこの波での勝算はほぼなかったと言える。
Opening Roundでも後半に2本乗っただけでスコアも伸びず、バロン・マミヤ(HAW)とのElimination Roundは終了間際に逆転され、結果最下位で姿を消した。
そんなケリーがヒート終了後にロングインタビューに答えた。
今のケリーはパートナーのカラニとの間に生まれたばかりの息子「タホ」に夢中のようで、家族との時間をなにより大切にしているようだ。
ローワー・トラッスルズで最も成功を収めてきたサーファーでもあるケリー。あなたのライディングをここでまた見られるのは、本当に嬉しいことです。この会場での経験はどうでしたか? そして、こんなにも多くのファンに囲まれているのを見て、どんな気持ち?
ファンのみんなには本当に感謝してる。ちょっと変に聞こえるかもしれないけど、正直、コンテストには出たくなかったんだ。オーストラリアで家族と一緒に過ごしてて、ただリラックスしていたかった。そこにずっといたいなって思ってたけど、仕事もあって帰ってきて。まあタイミング的にはちょうど合ったんだけどね。
でも、今朝のヒートでは凄くナーバスになってた。最初はリラックスしてる感じだったけど、相手が良い波を掴んだ瞬間、“自分もセットを待たないと”って思って、でもその波がなかなか来なかった。その後、彼が上手く波に乗って、自分はかなり厳しい状況に追い込まれたのさ。
“あとで立て直そう”って考えてたけど。まあヒートの中でやるべきことはやったつもり。でも、自分のサーフィンは全然良くなかった。どこか心ここにあらずというか、自分の先を行ってる感覚で、ちょっと投げやりになってた部分もあったね。
最初の2本の波では、最後の2ターンで転んでしまった。もっと落ち着いて、ペースをうまく調整して乗るべきだったと思うよ。
最後の最後に、致命的なミスをした。プライオリティを持っていたのに、乗る必要のない波に乗ってしまったんだ。そしたら、その後に良い波が来て、それをバロンが掴んだ。あれは完全に自分のミスさ。
でもまあ、バロンが良いサーフィンをしたし、自分もちょっとナーバスになっていたのは事実だね。

バロンとの対戦は、あまり見られないカードだけど、彼と当たるときは毎回特別ですね。2022年のパイプマスターズ(Round of 16で当時ワイルドカードだったバロンと対戦して最後の最後にパイプラインでケリーが絵に描いたようなバレルをメイク。ブザービーターで逆転に成功した)でのヒートを思い出す人も多いと思う。今日で対戦成績は2勝2敗でイーブンになりました。
そうなの?自分でも“何回対戦したかな?”って思っていたところで、正確には覚えてなかった。でも、バロンは今年凄く調子良いし、特にパイプラインみたいな波では本当に強い。
あの2022年のパイプでのヒートは、僕にとってもキャリアの中でもかなり大きな勝利のひとつだと思っている。彼はあの時、完全に乗ってたし、パイプを滑った歴代でも最高レベルのサーファーの一人だと思っているから、彼に勝てたことは僕にとっても価値があるし、“自分の勲章”みたいなものだね。
実際、あれ以来、パイプで彼に勝ってる人ってそんなにいないと思うよ。

あれは本当に良いヒートでした。ああいう思い出は大事にしたいですよね。そしてケリー、今家族がここに来てあなたの試合を見ているっていうのは、これまでと違った感覚なんじゃないかと思う。キャリアのこの段階に来て、どんな気持ち?
色々なことを両立するのは少し大変だね。睡眠のリズムも変わるし、優先順位も変わってくる。もちろん、それは前から分かってたことだけど。でも、本当に素晴らしいことだと思ってるし、僕たちは本当に幸せで、毎日が楽しいよ。
世界中の親なら誰でも分かると思うけど、簡単なことじゃない。でも、本当に素晴らしい経験で、毎日様々なことを学んでいけるのが楽しい。

『Outerknown』を立ち上げてから10年が経ちましたが、この節目について、どれくらい誇りに思っていますか?」
最高だよ。本当に嬉しい。サプライズだったんだよね。実は、このイベントをスポンサーすることになったのを知ったのは、2ヶ月くらい前のこと。
ディラン・スレーターから“実現することになったよ”ってメッセージが来たんだ。
凄く誇りに思ってる。過去の偉大なサーフブランドの多くも、結局は“ただサーフィンを続けたい”っていうサーファーたちが始めたものだったでしょ?
だから、デーン(レイノルズ)が会社を立ち上げたり、ジュリアン(ウィルソン)もやっていたり、僕も今こうしてやっている。
そういうのって凄く良いなって思うんだ。
僕たちの会社は、いわゆる“純粋なサーフブランド”とはちょっと違うけど、そこにあるDNAは同じだと思ってる。ジョン・ジョン(フローレンス)も自分のブランドをやってるし、それぞれ違うチャレンジだけど、楽しいし、素晴らしいチームにも恵まれてる。
ディラン・スレーターは本当に最高の仲間で、長年リップカールを引っ張ってきた人でもある。トラッセルズでファイナル5のスポンサーを決めたのも彼だったから、今回のイベントにも思い入れがあるんじゃないかな。

PHOTO: © WSL/Emma Sharon
この先の予定は?
ちょっと休もうかな。実はここしばらく、怪我に悩まされいる。2年前に股関節の手術を受けたんだけど、それ以降、本当に大変だった。思うようにサーフィンもできないし、ストレッチしたり体を自由に動かしたりするのも難しかった。だから、これからの3ヶ月は、その辺をどうやって対処していくか、そして今後どうしていくかを考える時間にしたいと思っている。
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(黒本人志)