コンペティターやコーチの経験を政界でも活かしたいウェイン「ラビット」バーソロミュー Photo: WSL / Will H-S

サーフィンの巨匠「ラビット」、ゴールドコーストの選挙区に出馬

78年サーフィンワールドチャンピオンのラビットことウェイン・バーソロミューがゴールドコースト、バーレー選挙区の労働党代表として10月の選挙に出馬を表明した。10年間ワールドツアーで活躍したのち、プロサーフィン組織ASP(Association of Surfing Professionals;現WSL)の会長を経て、今は地元ゴールドコーストの政治家に転職。その人物と政治への展望を見てみよう。

プロサーフィンの原形を作った一員

ゴールドコースト出身のラビットは1967年、13歳の時に地元レインボーベイでサーフィンを始めた。77年にはプロへ転向、ルーキーとしてワールドツアーに参戦した結果、南アフリカのショーン・トムソンに次いで2位で年を終えた。翌年はその経験を活かし世界チャンピオンの座を獲得。そこから7年連続トップ5を記録し、当時の最も優れたプロサーファーの一人として名を残した。

その後オーストラリア代表のコーチとしてISAの世界大会で2度の金メダルに導き、99年はASPマスターズ(36~49才)、2003年のグランドマスターズ(50歳以上)でもタイトルを獲得した。

1999年にはASPの会長に就任して、ワールドツアーの大改革に乗り出し、波の質で会場を厳選したいわゆる「Dream Tour」を作り上げた。現代のプロサーフィンを確立させた第一人者と言っても過言ではない。

50代後半でもサーフィンへの熱意は変わらない「ラビット」 Photo: ASP / Cestari

ラビットは、70年代に数人の仲間とハワイに乗り込み、ローカルとの抗争を乗り越え、世界で初めてプロサーファーという生き方を創り出した。その一連の出来事を描いた2008年公開のドキュメンタリー「Bustin’ Down the Door」は大きな反響を呼んだ。

2016年には、長年の夢だったゴールドコーストのWorld Surfing Reserve(世界サーフィン保護区)の認定に大きく貢献した。

政界へ

ラビットが長年夢見ていたゴールドコーストのWorld Surfing Reserve認定に向けて準備をしていた中でクイーンズランド州首相アナスタシア・パラシエ(オーストラリア労働党)と共に仕事をすることがあった。ラビットの人格や熱意に打たれたパラシエ首相が今年10月の選挙を前にラビットを直接労働党の代表に誘ったという。

ゴールドコーストは保守派が多く、前回選挙でも労働党の候補が右寄りのLNP(自由国民党)代表に大差で破られた。一般的に政治に関心が薄いサーファーが多い地区でラビットのように名の知れたサーファーを立てれば、代表に選ばれるチャンスはあると見たらしい。

浜辺で開かれた記者会見ではパラシエ首相は「ラビットは長年地域のために熱心に貢献してきた。一度会えば、どれだけゴールドコーストが好きかすぐにわかるだろう。」と述べた。

クイーンズランド州首相アナスタシア・パラシエの労働党からの出馬を発表 From youtube

代表としての展望

ラビットはStabmagのインタビューに対して、当選後の展望について以下のように語っている。

「当選したら取り組むべきことはたくさんある。コロナウイルス後の世界はコロナ前と大きく変わっている。コロナに対する対応もどんどん変わってきている。今から1年後、どのような世の中になっているのか、正確に予測できるのは不可能だろう。しかし、まずは市民を大切にすることは最優先するべきだと思う。健康と幸福は社会の根本だ。その2つが十分に保証されてからやっと前進して発展できる。これはどの政権も軸にするべきことだと思う。」

「労働党員として、特に弱者を大切にしたい。コロナ禍で苦しんでいる小規模事業者や新規立ち上げを支援し、新しい産業やコロナだからこそできる仕事や職業を見つけなくてはいけない。ITで発展したシリコン・バレーを参考に、ゴールドコーストの特徴を生かせた発展を考えたい。ここなら仕事の前や合間にちょっとサーフィンでリフレッシュすることはできる。現在は有望な人材はみな仕事を求めて大都会へ行ってしまうけれど、大学を建てたり、仕事を作れればゴールドコーストを出なくても十分活躍できるはずだ。」

「当然スポーツにも力を入れたい。みんなが思うよりも社会において重要な役割を果たすと思うのだ。スポーツをやる少年は誰も夢を持っている。それが実現するかどうかなんか関係ない。運動をして、楽しく健康で過ごしていることが大切なのだ。多くの人がスポーツに触れるためには緑地や施設が必要。お金がなくてスポーツができない子どもがいるなら、政府が彼らを支援すべきだと思う。サッカーにしたって、サーフィンにしたって、まったくただでできるスポーツはないからね。」

もしラビットが当選したら、コンペティターとしての経験やASPの運営実績を活かし、いちサーファー、いち海を愛する人間としてゴールドコーストの合理的な発展に貢献できるよう期待したい。

ケン ロウズ

参考:We Interviewed Rabbit Bartholomew About His Run For Office|Stabmag

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