「五十嵐ファミリー写真展&トークショー」THE SURF NEWSインタビュー

7/13(水)渋谷TRUNK(HOTEL) にて行われた「五十嵐ファミリー・写真展&トークショー」。

これまで、五十嵐カノアの父・勉さんのトークショーイベント開催はあったが、母・美佐子さんに弟のキアヌを交えた、ファミリーでの開催は初の試み。

今回は、先着30名のみが参加できる限定的なイベントとなったが、定員は募集開始から1時間ほどで終了。その後も約1週間の期間で200名以上の参加希望が寄せられる中、限られたスペースを利用しての開催となった。

勉さん、美佐子さん、キアヌが揃ってのトークショー

トークショーの内容は1995年のアメリカ移住から振り返り、勉さん美佐子さんの当時の思いから、渡米後のカノア・キアヌ誕生、幼少期の生活スタイルから現在まで多岐にわたる。

知り合いもいない、仕事のあてもなく飛び込んだ世界での苦労話しや金銭事情、サーフィンをもっとやりたいと言うカノアのため、キアヌが産まれて2日後に海の近くへ引っ越したエピソードなど、普段は聞けないリアルな話しも飛び出していた。

また、今回のトークショー開催にあたり、THE SURF NEWSの取材に答えてくれた内容なども踏まえて紹介したい。

父・勉さんが撮影した写真が多数展示された

今回のトークショー開催のきっかけなど

勉さん:今、カノアはJ-bay(CT)に出場するタイミングですが、キアヌはちょうどQSの開催がなく、JPSAのトライアルに出させてもらうことになって。
3人で日本に来ることになったので、今回は東京のみですが、ファンの方への感謝の意味で実施させてもらうことになりました。

それと、今回は美佐子がいるから、お母さん目線での色々な話しもできたらという考えもありました。

渡米は1995年、全てがゼロスタートだった

美佐子さん:もともと「自分達の子供はアメリカで育てたい」という思いがあって、それなら行こうよとなって。でも当初は全てが手探りで、現地にもあてはなく、知り合いもいませんでした。当時は今と違って、インターネットもSNSも無かったですから。
周りに同じような考えを持つ知り合いも居なかったし、参考例も無かった。完全にゼロスタートですね。

勉さん:まだカノアが小さかったころ、例えばコンテストに行くにも、サーフポイントの名前しか分からない。相談できる知り合いもいないし、常に紙の地図で場所を探しながら移動していましたね。

「ミッキーさんがいなかったら、現在の五十嵐ファミリーはなかった」冒頭では、鴨川から駆け付けた恩師、川井幹雄氏を紹介

当時の目標イメージと現在の状況

美佐子さん:将来への思いは強かったですし、絶対実現しようという気持ちでやってきましたが、当初描いていたイメージよりは、今は上を行っているかもしれない。
海外でも皆が知っているようなサーファーに育ってもらいたい、夢はCTという思いはありましたけど、それを越えてくれましたね。

勉さん:そうだね、もともと夫婦でサーフィンをしていたから、カノア・キアヌと、家族4人でサーフィンをしたいという思いでしたけど、僕もプロサーファーになりたかったし、やっぱりプロサーファーになって欲しいという思いはありましたね。

美佐子さん:カノアとキアヌは、それを分かっていて、父ができなかったことを自分達が、という気持ちはあったように思います。いつしか私達を引っ張ってくれて、当初私達が描いていた目標地点を引き上げてくれた、そんな風に思えますね。

限られたスペースに沢山のファンが駆け付けた

カノアのようなサーファーを育てるには

美佐子さん:自分達が特別なことをしてきた、という意識はあまりなく、基本的には他のご家庭と変わりはないのではと思っています。ですが、思ったことを形にしよう、そういう意思は強かったかも知れません。

勉さん:美佐子はとにかく行動力がある人。自分は色々なことを考えて、アイデアを出すほうですが(美佐子さんは)思ったことを実行に移す、その気持ちが強い。

美佐子さん:子育てという部分では、子供たちには「何があっても一人でやっていける」そんな人間に育ってほしいと思っていました。何かできないことがあっても、全て手伝ってしまうのではなく、時間がかかっても、できるまで見守る。
たくさん失敗しても良いから、とことん見守って、自分で考えられるように、そんな子育てを心掛けたつもりです。

勉さん:サーフィンだけに限った話しではないけど、結果だけでなく、プロセスにもこだわって、自分で学んでもらう。当時はあまり言われていなかったかもしれないけど、今風の考え方なのかもしれないですね。

アジア人として初、五十嵐カノアが着用したイエロージャージとサーフボードもディスプレイ

弟 キアヌの直近プランと今後の目標

キアヌ:直近で一番の目標は、8月にバージニアで開催されるQS3000です。
今自分のランキング(ノースアメリカ・リージョナル)は12位タイ(9番目)、来年のCS、その後のCTを目指すためにも、少しでも良い成績を残したいですね。
次のJPSAにもまたチャレンジしたいと思っています。

でもその先の目標は、CTに入って世界チャンピオンになり、金メダルを取ること。
一番の目標でありライバルは(兄の)カノア。カノアができないことを実現したいです。

兄 カノアと比較される立場、プレッシャーは?

キアヌ:昔はそれをプレッシャーに感じることはあったけど、今はポジティブに捉えています。次はキアヌだと言われているし、難しいけど、その期待に応えたいという気持ちです。
カノアは17歳からCTで戦っていて、本当に凄いこと。自分は少し出遅れたけど、強くなって逆にカノアにプレッシャーをかけたいですね。それにまた日本にCTが戻ってくると思っているし、CTの舞台でカノアとファイナルを戦うことも夢のひとつです。

勉さん似だと言われるキアヌ、常に明るくポジティブで、家族のムード―メーカー的な存在

多くのサーファーが憧れる五十嵐ファミリーの存在。だがときに、五十嵐カノアの活躍や家族としての成長は、海外で暮らしているからだ、条件が良かったらだと言われることもあるという。

しかし美佐子さんの言葉からは「海外にいれば良いサーファーが育つとも限らない、仮に日本にいたとしても、今の家族は実現できたはず」そんな強い思いと併せて「ここまで来れたのは周囲の皆さんが助けてくれたおかげでもある、温かく見守っていただき本当にありがとうございます」と感謝の気持ちも語られていた。

カノア・キアヌを育て上げた勉さん、美佐子さんの貴重な話しが聞けたトークショー。次回のチャンスがあれば、ぜひ参加してみてほしい。


五十嵐ファミリーについて

五十嵐ファミリーは父親ツトム、母親ミサコ、長男カノア、次男キアヌの4人家族。両親が1995年カリフォルニアに移住して1997年にカノア、そして2003年にキアヌが誕生。
現在、カノアは世界最高峰のプロサーフィン大会WSLチャンピオンシップツアーで常にランキング上位をキープしており、キアヌもプロサーファーとして活躍を期待されている。

五十嵐ファミリー

(THE SURF NEWS編集部)

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