Photo:Dan Imai

今後日本で定着するか!? サーフィン&ゴルフの新しいイベント「I.W. HARPER SURF & TURF」

照りつける陽射しが肌をジリジリと焼く、7月のある日の朝。右手にサーフボード、左手にゴルフバックを抱えた32人の男女が、静岡県・静波海岸に集結した。そこにはメディアでよく見る顔もちらほら。ここで3回目となるイベント「I.W. HARPER SURF & TURF」が開催された。


感度の高い人やファッションピープルの間で愛好者が増えているゴルフ。その流れはサーファーの間にも押し寄せ、ここ最近始める人が急増している。しかし、昔からゴルフを楽しむサーファーは一定数いて、カリフォルニアではSURF & TURFとして広く知られている。「朝サーフィンして昼からゴルフ」、「今日は波がよくないからゴルフ」など使われ方は様々だが、このクールなカルチャーを自社の商品を通じて伝えようとしているブランドがある。世界一のスピリッツカンパニー、ディアジオが保有するバーボンウィスキーブランド「I.W. HARPER」だ。

サーフィンの会場となったサーフスタジアム

今回で3回目を迎えたI.W. HARPER SURF & TURF。過去2回はいずれも茅ヶ崎で行われたが、今回は静波のウェイブプール(サーフスタジアム)を貸し切って開催された。その採点基準とルールは、真剣さと楽しさが同居するユニークなものだった。まず最初に行われたサーフィンは、初級、中級、上級の3クラスに分かれ、スタイル、エンジョイ、テクニックの3項目を2本の波で採点。

初級クラスは膝〜腿のホワイトウォーターに全力でパドルし、とにかくテイクオフを目指す。インストラクターがプッシュしてくれたおかげもあって全員立つことができ、なかにはロングライドを決める参加者も! その勇姿に笑顔と歓声が沸いた。

エンジョイ or スタイルポイント? を狙ったモデルのロラン

中級クラスはプロサーファーを除く11名がエントリー。ハイパフォーマンスのショートボード、ミッドレングス、ツイン、シングルスタビライザーとボードの長さもスタイルも様々。ウェイブプールが初めてという参加者もいたが、パーフェクトな波が全員をインサイドまで運んでくれた。

現役ラグビー選手のジャクソン・ヘモポもエントリー!

そして最後は全員がプロサーファーという上級クラス。大橋海人、金尾玲生、加藤嵐、森大騎、増山翔太、それに紅一点宮坂麻衣子を加えた6名が圧巻のパフォーマンスを披露。波は最もサイズのあるエキスパートだったが、彼らには少々物足りない様子。3ターン決めれば◎という波に対して、4回、5回とターンを刻み、最後は壁に激突しそうになりながらのエア。エキスパートの波では難しいとされるロングボードも、テイクオフと同時にハイラインをキープしてトリムからのファイブ。そのパフォーマンスは圧巻の一言で、イベントのハイライトとなった。

パワー&トリッキーなライディングで会場を盛り上げた金尾玲生
ショートボードでもトップレベルのパフォーマンスを魅せた森大騎
走りすぎるボードをテールコントロールしスタイルを出す増山翔太

今回サーフィンのジャッジを担当したのは、ショーロクこと宮内謙至プロ。プロでも乗り遅れてしまうテイクオフのコツと波の特徴について解説してもらった。

「サーフスタジアムはテイクオフが難しいと言われていますが、ポイントはパドルする方向です。進行方向とは逆に45度でパドルすると、誰でも・簡単にテイクオフできます。海とは違う感覚なので違和感があるかもしれないですが、慣れですね。ミッドレングスやロングボードは中級コースがオススメ。上級コース以上となると最初のセクションで波がホレ上がるので歩くのもフェイドして合わせるのも難しく、またフェイスも張ってくるためオーバースピードになってしまいます。あと、インサイドはかなり浅いのでギリギリまで乗らないように。ボードをクラッシュしたり、思わぬ怪我をします」

アウターサーフのひとときをハーパーソーダで乾杯

昼食を終え、午後はゴルフタイム。美しい茶畑を抜けた先の丘陵地帯に位置する相良カントリー倶楽部が舞台だ。自然林に囲まれた広いフェアウェイと開放感溢れる景色を目の前に、選手たちのテンションもアップ。8チームに分かれ、オネストジョン方式(自己申告したスコアと実際のスコアの打数差でポイントを算出)で9ホールをまわった。

レベルやスコアは関係なく、とにかく楽しむことが一番

プロサーファー、プロゴルファー、モデル、インフルエンサー、さらにラグビー選手や建築士など、多種多様な職業のアスリートがエントリーしたが、そもそもハードリカーブランドがなぜ、サーフィンとゴルフのイベントを主催するのか? その答えはディアジオ ジャパン マーケティング部カルチャーマネージャー尾崎氏の言葉の中にあった。

「我々の会社はグローバルでカルチャーを大切にし、洋酒やスピリッツの歴史を守りながら、バーやカクテル文化を盛り上げています。それは日本も同様です。何十種類もブランドを保有していますが、全てカルチャーと密接に繋がっています。例えば今回のイベントの冠であるハーパーは、英語表記のI.W. HARPERの“W”を上下逆にして“M”とし、I’M HARPERというキャッチコピーを作りました。HARPは「繰り返し行う」という意味があるので、「自分の趣味や情熱を注いでいることを繰り返し行なっている人」と定義づけ、それを実践する人たちを応援しています。「SURF & TURF」が西海岸発というのも、このカルチャーを選んだ理由の一つです(ハーパーもアメリカ生まれ)。サーフィンは時に恐怖が伴うフィジカルなスポーツで、ゴルフは究極のメンタルスポーツ。どちらも一筋縄ではいかないこのふたつのスポーツをこなしている人(繰り返し行なっている人)は本当にかっこよく、リスペクトの気持ちでいっぱいです」

サーフィンとゴルフは一見相反するスポーツのように見えるが共通点も多く、互いに良い影響を与えていると多くの人が口を揃える。優勝した大橋海人も3位の宮坂麻衣子も同様のようだ。

「サーフィンとゴルフは、メンタルの部分が近いです。この1本で決めなきゃというヒート中の最後の波と、グリーン上でのパターの1打。緊張感が似てますね(大橋)。トレーニング方法は違うと思いますが、遠心力や体感を鍛えるという部分では同じ気がします。また、海でいいライディングをすると仲間が『今のいい波だったね』と声をかけてくれ、ゴルフ場では一緒にまわるメンバーが『ナイスショット!』と称賛してくれる。どちらも仲間意識が芽生え、互いを高めあっている感じがします(宮坂)」

優勝したのは、3日前にメンタワイから帰国したばかりの大橋海人。キレキレのバックサイドで繋ぎ、フルローテーションでフィニッシュ。それを2本決め、満点を叩き出した。ゴルフのスコアも自己申告にプラス2ポイントという、圧倒的な強さを誇った。

陽が沈む直前に表彰式とBBQパーティが行われ、長い一日が終わった。みんなクタクタかと思いきや誰一人として疲れた様子はなく、明日どこでサーフィンするか、波が悪かったらゴルフにしようかと話している。なるほど、これこそがリアルな「SURF & TURF」だ。

3位:プロサーファー宮坂麻衣子

「ゴルフ歴はまだ1年くらいで、昨年行われたこの「SURF & TURF」がデビューでした。それからサーフィンの大会が忙しくて月に1回くらいしか練習できず、今回が3回目のラウンドでした。今日、 “勝ちたい”というアスリート魂に火がついたので(笑)、これからサーフィンもゴルフも両方頑張りたいと思います」

2位:インフルエンサー井上奈保

「3年前に知り合いの知り合いにハワイでサーフィンを教えてもらい、それから楽しくて今も続けています。ゴルフはコロナ禍に友達に誘われたのをきっかけに始めました。サーフィンとゴルフはどちらも自然に触れるスポーツという部分が好きで、関わる人もみんいい人!これからも長く続けていきたいです」

優勝:大橋海人

「ゴルフは20歳の頃からやってますが、コンテストを回っていたので1年に1回やるかやらないか程度でした。3年くらい前からがっちり始めて、朝ゴルフしてからサーフィンというのを月1ペースでやっています。ただ、誰にも教わったことがなく自己流なので、そろそろちゃんと習いたいなと思っています」

Photo:Dan Imai

(Yoshifumi Hayashi)

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