(ジョーディ・スミス) Photo by Angela Zorica

「スプレーマニアPart1」 – F+

F+(エフプラス)

ようやく秋らしいというか、酷暑を耐え抜き、何とか息継ぎのできる気候になってきた。とはいえ、あと1週間で10月というこの時期としては、まだまだ例年より暑いかなぁ、と思う。そうはいってもあと3か月で今年も終わっちゃうわけで、つべこべ言っててもカレンダー制作の締め切りはやってくる。パイプ、ベルズ、バーレーヘッズ、ポルトガル、Jベイ……世界各地でのCT選手たちのライディングを何度も見くらべて選ぶ作業は、楽しいけど、難しい。12か月分、できれば同じアクションにならないようにとか、水の色の変化とか、いろんな条件をかいくぐって選ばれていくけど、まぁ、最終的には個人の好みだったりしてしまうので、皆さんも同じように楽しんでくれればいいかな、と思う。
今回のチョイステーマは新しいライン、新しい攻めとかかなぁ。前回のコラムで世の親御さんがたに、もっと勉強を、と言った手前、今世界で何が起きているのかを知っていただくためにも、1か月間1枚の写真を眺めるカレンダーは、細かな気づきをもたらすものがいいかなぁ、と考えた次第。

サーフィンの良しあしを判断するうえで、ひとつのわかりやすい指標としてスプレー(サーフボードの動きに伴って飛ぶ水しぶき)がある。このスプレーに関しては動画より写真のほうがずっと雄弁に様々なことを語る。静止画像はごまかしがきかないのだ。
ディテールの差が大きくそのサーフィンの質に影響するので、写真で様々なことをチェックするのは正しいと思う。人間の動体視力には限度があるから。

見ていて派手な、すげぇな、って思うライディングでも家に帰って写真で見てみると、あれ、あの時のあのアクションはこれ? みたいなことはよくあって、絵にするとパッとしなくて使いにくいことがある。今日のコラムはあの人のあのショットがあるから大丈夫、みたいな時に家に帰って写真チェックしてガックシ、みたいな。基本そういうことが起きるのはたいてい決まって同じ人で、初めはこの人とは相性悪いなって思ってても、いつもとなると結局はその人のサーフィンの問題なんだろう、ということになっていく。

スプレーには大きさや分厚さ、形、アウトラインがどうか……などなど、様々な要素があり、その形ひとつひとつにどうしてそうなるかの原因がある。そしてスプレーをマニアックに観察すれば、どこでレールが抜けたとか、どこでどのフィンが抜けたとか、逆に入ったとか、板がどういう状態で回転しているかが正確にわかる。
サーフィンの原理は発泡スチロールの板、例えば水泳のビート板のようなものを水中に沈めて飛び出す力と、波がビーチに向かって押し寄せる力を合わせて上手く使うことで推力を得る。
ビート板を斜めに沈めれば斜めに飛び出すし、垂直に沈めれば真上に飛び出す。ボードの動きというのは、どう板を沈めたか、の結果でもある。その飛び出す力のかじ取りの重要な部品としてフィンが加わることにより、その抵抗によって複雑な動きが可能になる。

(ジョーディ・スミス) Photo by Angela Zorica

沈めて浮かせて、レールを入れて抜いて、の繰り返しでスピードが生まれる。そのスピードを急激に止めることで回転する動きになる。それを理解すればスプレーを見て、そのサーファーが乗っているボードがどういう動きをした結果そのスプレーになったのかが明確にわかる。基本、大きなスプレーを飛ばすにはたくさん水のある所で、たくさん水を押し出す、ということになるわけで、それはテールターンでは難しい。テールエリアだけで押し出す水の量はたかが知れているからだ。
ジョーディの2枚の写真。そっくりだけど、スピード感とかパワーとかまるで違うし、飛んでいるスプレーも全く違う。波側のレールをいかに深く長い時間踏み込んでいるかの差がスプレーにしっかり出ている。裸のジョーディ、ハンパない。

スプレーマニアPart2に続く

F+編集長つのだゆき

blank

「国内外サーフィン界の最新トレンド・ニュースを読み解く」をコンセプトに、最新サーフィンニュースをお届けします。

この記事に 関連するタグ

※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等を禁じます。