Photo: THE SURF NEWS

「思考と行動の多様性」GWを前にサーフィンの自粛を考える(TSN緊急アンケート付)

五輪の延期。サーフィン自粛。緊急事態宣言発動。そして行動の制限。

完全停止とまではいかなくても、不要不急の外出を取り止めている人達が感じるのは、いつまで続くのか、その後はどうなるのか、という未来への不安。これまでの普通の生活のありがたみを噛みしめている方もいれば、目先の緊迫感に追われている方もいる。

これまで当たり前だったことに対するありがたみを感じ、“アフターコロナ”の世界はどう変わり、その時、何をすべきなのか。今、そんな事を考えている方は、自らの足元を見直すための貴重な時間を与えられたと感じているのだろう。

一方で、そんな余裕も無く、目先の資金繰りに必死になっている方もいれば、社会のインフラ維持のための毎日を送っている方もいる(心から感謝したい)。またその一方で、新たにできた時間を愚痴と文句に費やし、ネガティブワードの検索とバッシングに充てている人もいるのかもしれない。

「正義の制裁」と「自粛警察」

様々なメディアでバッシングや不平不満が満ち溢れ、ギスギスした世の中になっているのが現実。しかし主体的に自らが欲する情報を引き出せる今の時代、自身がどこにフォーカスをあてるかにより、見える景色が異なってくるのは当たり前だ。それぞれ個人の事情により、これまで以上に行動や価値観の差が生まれ、思考の違いが顕著になっているのが今の実態と言えるだろう。

そんな中、マスメディアやネットニュースなどでも、バッシング的、魔女狩り的な話題とは別に、「怖いのはウイルスではなく人間」といった呼び掛けを耳にする機会が増えている。

今後、ますます増えるだろうと危惧・指摘されているのが、「自分が正しい」「異なる考えや言動が許せない」という感情と、それに連動する行動だ。こういう時だからこそ、よりネガティブ思考が増幅しやすいのだと脳科学者や認知科学者、精神科医などが警告している。

人間が集団で生きることに長けた生き物であり、それに成功し発展してきたからこそ、個人より集団の意思決定を尊重する。日本のような災害が多い島国では、歴史的な背景から見ても、こうした行動様式が顕著に表れやすい。

このような異常事態に、自己の欲求を抑え、集団の意に協力しているからこそ、その意に従わず好き勝手な行動を取る人間が許せないと感じる人が増える。こういう人々は、自らのルサンチマン(憤り/怨恨/非難)をサンクション(制裁)という行動につなげる。そもそも人間の脳自体が、正義を盾とし、制裁を下すことに悦びを感じるようできていて、正義中毒者とでもいうべき人達が多く生まれているとの指摘もある。

まさに、アルコールやギャンブル依存症と同様のドーパミンの分泌に起因する中毒症状が、「正義の制裁」をくだすことに悦びを感じる正義中毒者にも起きているというのだ。それが「不謹慎狩り」や「晒す」「炎上」などの行為として現れ、「差別」「偏見」を増幅させている。まさにSNS時代の特徴であるのだが、遂に「自粛警察」という新語も現れた。

現在、GWに向けた引き締め策の効果もあり、人々は圧倒的に自粛論に動き、陽性患者数も一見ピークアウトに向かうかのようなトレンドを見せ始めている。しかし、人にはそれぞれの事情があり、自粛をするべきか否か、どのような自粛方法をとるかについては様々な意見が出て当然だろう。また、個人を取り巻く事情に限らず、もともとの思考やそれに基づく行動からも、思考の違いが生まれているのかもれない。

皆が心待ちにしているサーフィン。そのための道を探る思考は持っていたい。

ホリエモンこと堀江貴文氏のような自粛反対論者は、有識者の中にも一定数居るようだが、サーファーの中でも、様々な意見を見聞きする。

「1年後の結果はだれにも分らない」「何が正解だったのかも変わるだろうし分からない」「自分の身は自分で守るしかない」「免疫力を維持する事こそが生き延びる術」「スウェーデンのように集団抗体を作る国策に変わるかも」「オーストラリアではビーチ開放したままでも感染者数が増えなかったらしい」「必要以上に恐れるな」「経済破綻の方が被害者が多いはず」「情報操作によりコントロールされたくない」―自粛論とは別に、その主張自体はあながち間違っているとも言い難いものもある。

いずれにせよ、皆がそれぞれ、安心して海に入り、気持ち良くサーフできる日を心待ちしている訳なのだから、そのための早道を探る思考だけは持っていたいものだし、そのアイディアを頭ごなしに否定することもしたくない。一人ひとりが、何を大切にするべきかを自分の頭で考え、そして他者の思考や行動の裏にある背景に思いを巡らせ尊重できるよう願いたい。

(齋藤丈)


★TSNアンケートの回答は締め切りました。各回の結果は以下よりご確認頂けます。

≫第1回TSNアンケート結果
≫第2回TSNアンケート結果


≫各地域の連盟や自治体からの自粛要請、駐車場の閉鎖やイベント中止情報は「新型コロナウイルスによるサーフィン業界への影響まとめ」にて更新中

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