(ファイナリスト) PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

フィリッペ・トレド&ベティルー・サクラ・ジョンソンが優勝!五十嵐カノアが3位!CT第6戦『Bonsoy Gold Coast Pro』最終日

オーストラリアで長年圧倒的な支持を得ている豆乳ブランド「Bonsoy」がメインスポンサーになったCT第6戦『Bonsoy Gold Coast Pro』が現地時間5月10日に終了。

サイクロンでのスナッパーロックスの地形悪化を受けて会場に選ばれたバーレーヘッズは、マンオンマン形式発祥の地としても知られ、20年以上前にはCTイベントが開催された実績もある。今回もその歴史を裏付けるようなハイクオリティな波がブレイクし、世界中のファンを熱狂させた。

2015年の再来

(フィリッペ・トレド)
PHOTO:© WSL/Andrew Shield

ファイナルデイのバーレーヘッズは公式3-4ftレンジ。
やや風の影響が入りながらも、バレルありのグッドコンディションでメンズ・ウィメンズ共にQFから再開。

メンズサイドでは2022年と2023年にブラジリアン初の2年連続ワールドタイトルを獲得した後、1年休暇したブランクがようやく戻ったフィリッペ・トレドと今シーズンのCSのワイルドカードを得てCT復帰を目指すワイルドカードのジュリアン・ウィルソン(AUS)がファイナリストに選ばれていた。

PHOTO:© WSL/Andrew Shield

Round of 32以降、全てのラウンドでハイスコアを出していたフィリッペはアレホ・ムニーツとのSFH1のブラジリアン対決でイベント唯一のパーフェクト10をスコア。
長いバレルを抜けて次のセクションでフルローテーションエアーを完璧に決めた最高のパフォーマンスに多くの人が勝利を予感しただろう。

熱狂的なファンの声援があったジュリアンとのファイナルはエアーとバレルの応酬。最後までどちらが勝つか分からないような最高のヒートになった。
この日のバーレーヘッズはポテンシャルがある波が多く、二人で合計28本も乗るファイナルとなり、8.53に9.07を重ねたフィリッペがトータル17.60で僅かにジュリアンを上回り、CT通算16勝目を決めた。

PHOTO:© WSL/Andrew Shield

「まず最初に、またここに戻ってこれたことを神に感謝したい。昨年は自分自身と家族のために1年休むことを決めた。ジュリアンも同じように家族を優先したけど、自分は彼より少し早く戻ってきた感じ。ツアーに戻ってくるのは本当に大変だった。みんな調子が良くて、どの選手もすごく準備ができている中に戻るのは簡単じゃなかった。でも“また自分もやるんだ”って気持ちを持ち直した。今は最高の気分だよ」

実はこの二人は2015年のスナッパーロックスでの開幕戦でもファイナルで対戦しており、フィリッペが優勝していた。

「本当に燃えたね。また10年ぶりにこのゴールドコーストで、ジュリアンと決勝で対戦できるなんて。オージーもブラジリアンも最高の観客だった。ツアーの選手たちは、みんな勝つために全力でやっている。ジュリアンも言っていたように、本当に自分たちの闘志を引き出してくれる戦いなんだ。今では、僕たち二人とも父親になって、家族もできた。昔を振り返ると、本当に若かった僕たちが夢を追いかけていて、今は美しい家族と一緒にまたこうしてここにいる。不思議で感慨深いよね」

フィリッペ30歳、ジュリアン36歳。
お互いに子宝に恵まれ、勝利の影には常に家族の存在がある。
この日はフィリッペの愛する息子の誕生日に重なり、表彰式ではブラジリアンがバースデーソングを贈る感動的な場面もあった。

(暗くなった表彰式にも沢山のファンが残った) PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

3年のブランクを埋めたジュリアン

(間違いなく今イベントの主役だったジュリアン)
PHOTO:© WSL/Andrew Shield

2021年、パンデミックの影響を受けたシーズンの第5戦を最後に家族との時間を優先するためツアーから離れたジュリアン。
世界の混乱が収まり、家族も落ち着いてきた2025年はCSからチャレンジを再開するが、その直前のCTで3年のブランクを埋めた形となった。

「まず何より、チャンスをくれたWSLに感謝したい。まさかここまでの結果になるとは思っていなかったけど、本当に思い出深い経験になった。復帰に際してファンの皆さんや周囲から受けたサポートには感極まったね。本当にありがとう。大好きなことから離れて、家族を優先しながら外から見るのは簡単じゃない。でも、今のサーファーたちに本当に刺激を受けた。これが自分の天職だと改めて感じているよ。子どもたちも今週は一緒に体験できて、本当に特別な時間だった。この機会をくれたことに心から感謝している。スポンサーの皆さんにも毎日雨でも晴れでも一緒に来てくれた妻と子どもたちにも感謝している。僕の話はもういいかな。フィリペ、本当におめでとう。今日のブラジリアンの観客は本当に熱くて、僕も燃えた。本当に心から、ありがとう」

ツアーから離れる前よりも進化したエアーのバリエーションとレールワーク。
簡単ではないだろうが、今年のCSをクリアして2026年は正式にCTの選手として戻ってくるだろう。

サクラがCT初制覇

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

ウィメンズサイドはQFH3でのエリン・ブルックス(CAN)とステファニー・ギルモア(AUS)の名勝負を経てサクラことベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)、サリー・フィッツギボンズ(AUS)がファイナル進出を果たした。

サクラは2024年のサンセットビーチ以来、2度目のファイナル。サリーは2021年のオーストラリア・ロットネスト島で優勝した以来のファイナル。
メンズサイドに比べ、ウィメンズはサクラの一方的なゲームとなり、1本目で8.50、最後に6.83を重ねてトータル15.33の圧勝。
2022年にツアー入りしたサクラが念願のCT初制覇を果たした。

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

「最高の気分よ。ゴールドコーストで初優勝できて、まるで夢のようだわ。これが“勝つ”ということなんだって、今実感している。そして、もっと勝ち続けたい。この気持ちを味わえて本当に嬉しいし、全てに感謝している。ここまで来るのに本当に沢山の努力、辛抱、根気が必要だった。今年はケガも含めて色々な困難があったけど、それを乗り越えて結果に繋げられて本当に幸せよ」

毎年ミッドシーズンカットのライン付近を彷徨っていたサクラは今回の優勝で7つもランキングを上げて一気に6位に浮上。
まだ確定ではないものの、今年はカットの心配なく後半戦に進めそうだ。

今日はとにかく全てを楽しみたかった。この瞬間をしっかり味わって、自分ならできると信じた。波が来た時には自分の力を信じて乗るだけ。とにかく、めっちゃ幸せよ」

瀬戸際のサリー

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

34歳、CT歴17年のサリーは2021年の3位以降、毎年ミッドシーズンカットでCS落ちして粘り強く這い上がっている。
バーレーヘッズではイザベラ・ニコルス(AUS)、エリン・ブルックス(CAN)と二人の若い強敵を倒して2位でポイントを稼いだものの、まだカットライン下の15位と危ないポジションにいる。

「ファイナルで自分を出し切りたかった。ここ数年、本当に闘いと試練の連続だったけど、それでも私はここにいたい。この国のために、ここにいるみんなのために、家族や友達のためにサーフィンを続けたいという思いは強いの。私にとってCTが全てで、まだ諦めたくない。父の誕生日に最高のプレゼントを贈りたかったけど、今日はベティの素晴らしい日だったわ」

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

五十嵐カノアは3位でランキング4位に浮上

(ジュリアンとカノア)
PHOTO:© WSL/Andrew Shield

ベルズ戦で2位になった五十嵐カノアはバーレーヘッズでも好調さと勝負運の強さを発揮。
QFのH4では、ジョーディ・スミス(RSA)を相手に大きなストレートエアーで7.67を出してトータル14.34で勝利。

ジュリアン・ウィルソン(AUS)とのSFのH2は、開始直後から熾烈なバレルとエアー合戦となり、共に13本も乗る息つく暇もないゲームとなった。
ファーストエクスチェンジでジュリアンが8.33。カノアは7.50。バックアップスコアは共に6ポイント台でジュリアンがリードのまま進行。後半、ジュリアンはスナップターンと高さのあるグラブエアーをメイクして7.27とバックアップを伸ばしてリードを広げる。カノアはニード8.11のシチュエーション。最後の波で高さのあるフルローテーションのエアーリバースを着地まで決めるが、7.40と僅かに逆転移は届かず、イベント前半から勢いがあったジュリアンに軍配が上がった。

それでもカノアは3位でフィニッシュしてランキング4位に浮上。
ワールドタイトルを争うファイナル5入りが現実的になってきた。

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder
PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

オーストラリアレッグの最終イベントになるCT第7戦『Western Australia Margaret River Pro』は5月17日〜27日に西オーストラリアのマーガレットリバーで開催。
1週間後、また世界最高峰のサーフィンレースが再開される。

『Bonsoy Gold Coast Pro』結果
1位 フィリッペ・トレド(BRA)
2位 ジュリアン・ウィルソン(AUS)
3位 アレホ・ムニーツ(BRA)、五十嵐カノア(JPN)
5位 ヤゴ・ドラ(BRA)、モーガン・シビリック(AUS)、ミゲル・プーポ(BRA)、ジョーディ・スミス(RSA)

ウィメンズ
1位 ベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)
2位 サリー・フィッツギボンズ(AUS)
3位 ヴァヒネ・フィエロ(FRA)、エリン・ブルックス(CAN)
5位 ルアーナ・シルヴァ(BRA)、モリー・ピックラム(AUS)、ステファニー・ギルモア(AUS)、イザベラ・ニコルス(AUS)

WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/

(黒本人志)

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