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【インタビュー】J-Bayを制したコナー・オレアリーの今の心境とは?

海外メディアのstabがCT第10戦『Corona Cero Open J-Bay』でキャリア初のCT優勝を決めたコナー・オレアリーにロングインタビュー。

優勝から少し経っての今の心境から始まり、ジョーディ・スミスとの裏話。なんと!コーチのドッグがコナーのベビーシッターだったことまで判明。
ツアーでも“最高に良い奴”と言われるコナーの魅力が詰まったインタビューです。

まだあの高揚感は残ってる? それとも、もう家に帰ってきてちょっと落ち着いた?

うーん、まあ、ちょっとはね。でも正直、まだ現実感がないんだ。いつになったら実感湧くのか自分でもわかんない。たぶん、また荷物まとめてタヒチに向かうときに少し落ち着くのかも。
でも今はマジでヤバいって感じ(笑)。
昨日コーヒー飲みに出かけて、何人かに会って、それでちょっとずつ現実味が出てきた感じ。少しずつ、じわじわと現実に落ちてきてる。

帰りのフライトではまずシドニーに寄ってからゴールディ(ゴールドコースト)に戻ったんだけど、空港に出たら両親が迎えに来てくれててさ。あと、クロヌラ時代からの親友のシェーン・キャンベルと、生涯のメンターみたいな存在のグレン・プリングルも。横断幕とか持ってて、叫んだりしてて(笑)。

最初はちょっと恥ずかしかった。目立つのって苦手なんだよね。でもそのあとで、「いや、これはめっちゃクールじゃん」って思えてきた。2020年からずっとレノックスに住んでて、シドニーに帰ることってほとんどないから、短い乗り継ぎ時間でも会えて本当に嬉しかった。嬉しさと切なさの入り混じった瞬間だったな。

ずっと思ってたんだ。もしCTで勝てることがあったら、自分だけじゃなくて、みんなにも「一緒に勝った」って感じてもらいたいって。で、実際にそうなった。びっくりしたのは、みんなが本気で喜んでくれてるってこと。本当に、心から喜んでくれてる。正直、それがいちばん嬉しかったかも。
勝ったこと以上に、「自分の勝利が、他の誰かにとっても意味のあることだった」って思えること。それが最高だった。

オーストラリアって“アンダードッグ”(伏兵)のストーリーが大好きだけど、それ以上に、君自身の人柄によるところも大きいと思う。ただ、いい奴でいるっていうこと。

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本当にそう。しばらくの間、自分を変えなきゃ成功できないんじゃないかって思ってた。もっと真剣にならなきゃいけない?もっとストイックに?もっと“アルファ感”を出すべき?ってね。

成功してるサーファーたちを見ると、みんな何かしら“強烈”なんだよ。イタロの攻撃性とか、ジャックのスピリチュアルな感じとか。
ずっと、「みんなすごいキャラしてるなあ」って思ってて、でも自分はただの普通の人間で、そのギャップをどう埋めればいいのか、ずっと分からなかった。

正直、このままの自分でいいのかな?って疑問に思う時期もあった。もっとリーダーっぽくなるべき?、もっと真面目に?、もっと非情に?とかね。でも結局、それって自分じゃないんだよ。
成功のために自分の性格を変えるなんて、そんなのやる意味ないって思った。

最終的に、いつも立ち返るのはこの考え方だった。
「自分がしてほしいように、人に接する」「全力でサーフィンする」「やるべきことをちゃんとやる」「人としてちゃんとしてる」。

肩書きは“プロサーファー”だけど、結局、自分はレノックスヘッド在住の普通の男。サーフィンが大好きだし、人と一緒にいるのも好き。だから、自分が「一緒にいたい」って思えるような人間でありたいんだ。

だからこそ、自分らしさを貫いて勝てたっていうのが、一番の達成感だった。

本当にそうだと思う。結局それって、すごく大事なことだよね。たとえば、好きだった先生のことを思い出しても、何を教わったかは忘れてても、“その先生が自分をどう感じさせてくれたか”は覚えてるじゃん。 ツアーにいる他のキャラの中には、もっとたくさんトロフィーを持ってる人もいるかもしれないけど、最終的に大事なのは人間性なんだと思う。

人生って短すぎるからね。これまでの経験から思うのは、コンテストって結局、家族のために食い扶持を稼ぐ手段なんだよね。突き詰めれば“仕事”でしかない。大工でもプロサーファーでも、本質的には変わらない。“同じ最高の仕事”なんだ(笑)。
自分はただ、自分の限界に挑戦して、できるだけのことをやろうとしてるだけ。

それにさ、マジでクレイジーな場所に行ける仕事なのに、それを当然のこととして受け止めちゃう瞬間ってあるんだよね。でもキャリアの終わりに、「もっと楽しんでおけばよかった」「あんなに肩に力入れなくてもよかった」って後悔したくない。ただ、すべての経験をしっかり味わいたいんだ。だって、プロサーファーのキャリアって本当に短いから。

それに、ドッグ(コーチ)と一緒にいる時間も、自分にとってすごく大きい。あの人も同じマインドで、“楽しみたい”っていうのが一番にあるんだ。めっちゃはっきり言う人で、「楽しめないなら、いったい何のためにやってんの?」って。
だから彼の影響で、自分ももっと楽しむことを大切にしてるし、“オンとオフの切り替え”がすごく重要なんだって思えるようになった。コンテストだけじゃなく、人生全体においてもね。

先ほど、Jベイの時にすごくはっきりとした「意図(インテンション)」を設定したと話していましたね。もう少し詳しく教えてもらえますか?

J-Bayでは、ドッグと一緒に意図を設定したんだ。それは自分にとっては珍しいことなんだよね。自分はスピリチュアルなタイプでもないし、ちょっとクサく聞こえるかもしれないけど。
彼が「この大会で何をしたい?何を見せたい?」って聞いてきて、俺はこう答えたんだ。「J-Bayで誰も見たことのない最高のバックサイドサーフィンをしたい」って。これまでどの大会でもそんなこと言ったことなかったけど、J-Bayでは言ったんだ。

その後は、コンペ自体はただの手段になった。点数を取ることよりも、良いサーフィンを見せるチャンスとして使おうと思った。決勝の日も、イーサンやフィリッペに点数が必要な場面で、「8ポイントを取らなきゃ」なんて一度も思わなかった。ただ、「よし、やろう。もう一度良いサーフィンができるチャンスだ」って感じだった。

もし点数が出れば最高だし、出なくても全力を出し切った自分には満足できると思った。

これからも、競技でもプライベートでもこういうやり方をもっとやっていきたい。自分の目標を設定して、それが自分の方向性を示してくれるけど、結果に自分の価値を縛られないようにする感じだね。
自分にとってはすごくクリアになった。スコアやランキング、ジャッジのことは気にしなくてよくて、ただビジョンを実現することに集中できたんだ。

いいですね。それに、J-Bayって本当に完璧な波だからこそ、そうした「意図」を追いかける舞台になるんですよね。つまり、最高のサーフィンをする可能性が現実的にあるってこと。サクアレマみたいな場所とは違って、あそこは波にただ反応するしかないことが多いですからね。

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まさにその通り。ただ、その「意図」も多少調整する必要はあるかもしれないけどね。あのコンディションはマジで信じられない日だった。J-Bayであんなサイズとコンスタントな波を見たのは初めてだよ。普段はもっとゆっくりしてるけど、5〜10分おきにセットが来るんだもん。冗談みたいだった。

レノックスにはここ5年間フルタイムで住んでいて、その前も数年間はパートタイムで住んでましたよね。あれは実質、J-Bayのトレーニング場みたいな感じだったんですか?

そうかもしれないね。バックサイドの基本は若い頃からあったんだ。育ったクロヌラでは、マーティン・ダンにすごく技術的な面で教わって基礎を作ってもらった。でもクロヌラにはライトのポイントブレイクなんてほとんどないんだよ。

南の波はどこも短くてパンチがあるスラブ波なんだ。たくさん波に乗ってリズムを作るタイプで、深く座ってロングウォールを読むタイプじゃない。レノックスに通い始めた頃は、本当に焦りすぎてたよ。長い壁を見ては頭がおかしくなって、考えずにターンを連発してた。ゆっくり動いて、タイミングを見極めて、量じゃなく質を追うのに時間がかかったね。

今はできるだけレノックスでサーフィンするけど、レフトの波が来る時はそっちも追いかける。片方の方向だけに固執したくないからね。でもここを拠点にしてることはすごく大きい。こういう波が安定して練習できる場があるのは自信につながる。特にJ-Bay、ベルズ、エルサルバドル、マーガレットリバーみたいな場所でね。そういうスポットに行くときに「初めて」じゃなくて「慣れ親しんだ感じ」で臨めるんだ。ゼロから攻略しようとしなくていい。

だから、あの勝利はここで暮らしていることに本当に感謝してる。もしレノックスに引っ越してなかったら、正直どこにいたかわからない。まだ迷ってたか、変なスラブハンターを目指してたかもしれない。

コンテストの話に戻りますが、決勝までの道のりはすごかったですね。イタロ、イーサン、フィリッペ、ヤゴ。どの日でもタイトルを狙える強豪ばかりでした。でも、完璧な6〜8フィートのJベイで、イーサンが完璧な壁にテイクオフするのを見てる時って、やっぱり少し怖いものがありますよね?

正直言って、めっちゃ怖い(笑)。でも本当に美しすぎて、目が離せないんだ。イーサンがあんな波に乗るのを見てると、ずっと見ちゃう。彼は本当に完璧なんだよ。今まで彼と何度もヒートを戦ってきた。去年のJ-BayのQFで彼にボコボコにされて、今年のベルズでもまたやられた。

イーサンには一瞬の隙も与えられない。与えたら一気に持ってかれるからね。だから自分は彼に届く範囲にい続けることだけを考えた。幸いあの日は波がすごく安定してて、決断のプレッシャーが少し減った。ミスしても次のチャンスがあったから。
自分はイーサンにプレッシャーをかけ続けて、彼に「もっと攻めなきゃ」って思わせたかった。イーサンが勢いをつけるとほぼ負けないから。とにかく彼に逃げ切らせないことが目標だった。

あの最後の波は面白かった。お互いに波を見てたんだ。俺もいい波だって分かってたし、彼も分かってた。でもあれは中くらいのセットで、もっと大きい波が後ろに控えてて、彼に優先権があった。俺は慌てず冷静に振る舞おうとしてたけど、彼がためらった瞬間、最後の一秒で俺が飛び込んだ。ギリギリ間に合ったけど、遅いテイクオフが逆にうまくいって、波のポケットにしっかりと入れたんだ。波の終わりまで乗って、「あれ、何点だろ?7点?8点?」って感じ。あの日は採点がバラバラだったけど、とにかく全力で攻めたっていうのは確かだよ。

あのサイズだと、基本的にキーホールを毎回外してしまって、波に洗われてずっとポイントの下の方まで流されちゃうんだ。だからビーチを歩いて戻ってたら、ジョーディがちょうどゴードン・マーチャント(ビラボンの創設者)の家をポイントに買ったばかりで、そっちから大きな叫び声が聞こえた。

最初はビルだと思った。イーサンの父親で、ヒート中はいつもどこかの茂みから叫んでるんだ。だから「おお、スコアが入らなかったのかな。たぶんビルがイーサンに向けて叫んでるんだろうな」って思った。
まあ全然問題ないよね、息子がトップ5に入るかどうかの勝負をしてるんだから。

それで少し歩いてまた叫び声が聞こえて、「今日のビルは本当に興奮してるなあ」と思いながら、「ああ、接戦だったんだな」って考えてた。
でもよく見たら、ちょうどジョーディの家の真下で、ジョーディがデッキにいて腕を上げて「スコア出たぞ!良いスコアだ!」って叫んでいたんだ。

マジで凄かったよ。それに多分、前のヒートでイタロに勝ってたから、トップ5の状況が動き始めてて、それもあってジョーディはすごく興奮してたんだと思う。実際、イタロに勝った後、ジョーディが来て「ありがとうな、ブラ」って言ってくれて、「え、なんで?」って思った(笑)。
多分、ランキングが大きく動いたからなんだろうね。

あのヒートはホントに激しかったよ。正直、自分のサーフィンにすごく満足してた。ジョーディがあんな風にデッキで叫んでたあの瞬間が、その日一日のトーンを決めたんだ。

彼は本当にすごいよね。

(ジョーディ・スミス)
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子どもの頃からそうだった。自分も体格が大きめだから、自然とああいうタイプのサーファーに惹かれるんだよね。ジョーディとかオーウェンとか、自分の体格とパワーを生かしてサーフィンする連中に。

だから今、ジョーディを友達って呼べるのは、昔の自分に言ったら「それこそ夢だよ!」って言うだろうね。しかもあの瞬間、デッキの上で彼が腕を上げて「スコアが出たぞ!」って叫んでくれたのは本当にクールだった。
なんか一周回っている感じがする。

ラゴのポッドキャストで「CT優勝はずっと大きな夢だった」と言ってから、40日後に実現したよね。目標は変わりましたか?もっと大きく、もっと高い夢を描く必要が出てきましたか?

変な感じだよね。ちょっとゾッとするというか。

でも、もちろん100%だよ。初優勝を掴んだことで、もっと熱が入って、深く掘り下げられる自信が湧いた。自分は「完璧なサーファーなんていない」って信じてる。優勝まで8年かかったけど、その経験が全部あの日の勝利につながったんだと思う。

今はトップ5入りへの自信も少し持てるようになった。もちろん今年はまだ無理だけど(笑)。
初勝利というハードルを越えたことで、世界タイトルを狙う戦いに加われる自分を想像できるようになった。

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それでは「ドッグパウンド」について話しましょう。レオ、ギャビー、タイラー、そしてあなた自身がメンバーですよね。ドッグのコーチングスタイルや築いているカルチャーは、スネークやレアンドロ、トミー・ウィッツのようなコーチと比べてどう違いますか?それと、彼はかつてあなたのベビーシッターだったって本当ですか?

そうなんだ。彼と奥さんが自分のベビーシッターをしてくれていたんだ。面白いよね。

だから、ドッグはただのコーチ以上の存在。自分にとっては父親みたいな存在なんだ。いつも良い時ばかりじゃないし、簡単でもフレンドリーでもない。正直言って嫌いになる時もあるよ。聞きたくないことを言われることもあるし、「お前はまだダメだ」って言われることもある。厳しい現実を突きつけられる。でも、それが本当のコーチの役目だと思う、ちゃんと気にかけてるならね。

そしてドッグは本当に気にかけてる。深くね。彼が本気になると全部をかけてくる。気に入ってくれたら、戦ってくれるし、そうでなければちゃんと分かるよ。彼は昔ながらの考え方で、「お前の友達になるためにここにいるんじゃない。毎年10%ずつ成長させて、勝てるようにするためにいるんだ」ってスタンスなんだ。

だから聞きたくないことも言う。正直、それが自分にとっては一番良かった。そういう厳しさが自分のベストを引き出してくれる。もしかしたらそれはクロヌラ育ちだからかもしれないけど(笑)。
聞きたくなくても彼へのリスペクトはすごくある。だって、それは彼が気にかけているから言ってくれるんだと分かってるから。もし気にしてなかったら言わない。

彼は自分たちのことを本当に大切にしてる。自分もギャビーもレオも。ギャビーは今年すでに3勝してるしね。でも全部がバラ色じゃない。みんな時々「もうマジで彼は無理」って思う瞬間もある。それでいいんだよ。だってみんな心の底では、彼が自分たちの成功を本当に願っていることを知ってるから。

J-Bayでチームが優勝を独占したのは最高だったよ。いつも大会中に「ここでの最高成績は?」って聞いてたんだけど、彼はJ-Bayでは3位だって言ってた。セミファイナルのあと、戻ってきたら彼がすごく盛り上がってて、最初に言ったのが「ドッグ、俺がお前に勝ったぞ!」って(笑)。

いい瞬間だったよ。彼はこの勝利にめちゃくちゃ大きく関わってくれてる。正直、彼がいなかったら自分がどこにいたか分からない。
もう4、5年一緒にやってるけど、毎年絆が深まっている。これからも一緒にどんどん成長していくよ。

J-Bayでインスピレーションを得るために誰のサーフィンを見ていましたか?あなたはあの伝説的なオッキーの映像についてコメントしていましたね。ダブルポンプなし、ミッドフェイスでのレイバック・ストール、そしてリップ下のカーブ。ほかに参考にしていたサーファーはいますか?

あれはまさにクラシックだよね。デジタルの記録が残ってて、その後に自分がコンテストで勝つと、「ああ、なるほど!」って感じになるのが面白い(笑)。
やっぱり、オリジナルはオッキー、ボビー・マルティネス、ロブ・マチャドかな。それから最近ではウィルコ、オーウェン、ギャビーなんかもいるね。

J-Bayは本当に難しい波だよ、特にバックサイドはテンポを合わせるのが大変で。動画をたくさん見て「この波は完璧だな」って思うけど、実際に行くと「なんだこれ、どうやってみんなこの波を乗ってるんだ?」ってなる。
いわば、派手なクローズアウトみたいな波なんだよね。

正直、最初の2年くらいはこの波が嫌いだった。どう乗ればいいのかまったく分からなかったんだ。ただ波に走ってターンして、波の最後までいこうとするだけで、全然スコアが出なかった。
覚えてるのは、ある年にパーコに完敗した時のこと。自分は波の終わりまで900回ぐらい半ターンを繰り返して、せいぜい4点くらいだった。
一方、パーコは3ターンで9点を出してた。ビーチを歩きながら頭を抱えて、「何が足りないんだ?」ってずっと考えてたよ。

それが変わったのは2年前、ドッグと初めて一緒に来た年だった。全部をシンプルにしたんだ。
無理に波を操ろうとするのをやめて、タイミングを見極めて波のスピードを活かし、ただターンするだけじゃなくて、本当に質の高いサーフィンを作る場所を見つけるようにした。
それがすべてを変えたのさ。
 

個人的には、J-Bayのトロフィーには特別なものがあると思うんです。テニスでいうとグランドスラムがあるけど、ウィンブルドンにはそれ以上の名声や伝説の重みがあるように。そういう感覚、あなたにもありますか?

もちろんだよ。ツアーで優勝するとしたら、ずっと夢見てたのはパイプ、ベルズ、そしてJ-Bayの3つだった。

これらはまさに象徴的な大会で、勝つとみんな「こいつは本物だ。間違いなくめちゃくちゃ上手いサーフィンだ」と認めるよ。

そして、あそこで10ポイントを出すなんて、正直想像もしてなかった。自分の初めての10ポイントがJ-Bayで、しかもずっと練習してきたターンを織り交ぜたサーフィンで出るなんて。
何年か前に「どこで10ポイントが出るか?」と聞かれたら、「多分パイプかチョープーで、ギリギリの怖いドロップで目をつぶってなんとか波を抜けるようなやつだろう」と答えてたと思う。
そういう「楽しんでないけど10ポイントが出た」って感じで。

だから今回みたいに、自分のスタイルで10ポイントを獲ったのは特別だった。しかもJ-Bayのような波で、一生懸命取り組んできたターンで。今のツアーで10ポイントを取るのはすごく難しい。簡単にくれるものじゃないからね。

何度もあなたのバックサイドの水しぶきをポイントで浴びてきた人曰く、あなたのタイミングやポジショニングはいつも完璧に見える。では、なぜ今になってそれがより大きな成功につながったと思いますか?

多分、ずっとアクセルを踏み続けてきたからだと思う。単に「波に乗るだけ」じゃなくて、目の前のすべてに全力でアタックしてきたんだ。

面白い話があって、フィリペとのヒートで4つ目のターンで転んだ波があったんだけど、それが6点くらいで、すごく悔しかった。
10ポイントを出した後のことね。戻ってきてドッグに会ったんだけど、自分はいつも自分に厳しくて、「あそこで転ばなければ最高だったのに」って思っていた。

でも、ドッグはこう言ったんだ。「それをミスだと思うな。まさに俺たちが望んでいたことだ。お前が一週間ずっと言ってたことだろう、ハードにプッシュして攻めろって。特にファイナルの日はな」

その一言で全てが変わったわけじゃないけど、もっとそのスタイルに自信を持てるようになったよ。「そのまま続けろ、それがうまくいってる」って聞けて。もし「それはミスだ」って言われてたら、ファイナルでいつ攻めていつ控えるか迷ってたかもしれない。でも逆に、「これが自分のやり方だ。これでいくんだ」って気持ちで挑めた。

一年間ずっとドッグは「お前はいつか勝つ」って言い続けてた。バーレイで負けた後でも、「いつか分からないけど今年は絶対勝つ時が来る」って言ってた。

でも自分は「負けたばかりだし、まだカットを考えてる段階で、勝つことなんて考えられないよ」って返してたんだ。
それが実際に勝った時、ドッグはただこう言ったよ。「ほら、言っただろ」って(笑)。奥さんにもみんなにも言ってたんだ。だから本当にドッグには感謝してる。最高のヤツだよ。

あなたはJ-Bayでスカッシュテールのボードに乗っていた数少ない選手の一人ですよね?

そうだね。今年はちょっと変えてみたんだ。DHのEEジュリエットモデルに乗っていて、元々スクエアテールで、そのドライブ感と反発力がすごく気に入ってた。ラウンドテールも試してみたけど、動きが緩すぎて合わなかった。
そこでDHが6’3″で少し狭めのスカッシュテールを作ってくれるって言って、それに乗ってみたかったんだ。

何年もスクワッシュに乗ってなかったけど、マーガレットリバーで乗った瞬間、魔法みたいに感じた。サーフィンする毎に調子が上がっていった。ドッグも大興奮だったよ。フィリペとイーマイとのヒートでもそのボードに乗って、それからJ-Bayに持っていった。

予報が良かったから、ドッグは「6’3″のスカッシュでいけ」って言ってくれた。スウェルの前日に乗ってすぐに分かったよ、これだって。テールが1インチ長くなったことでターンからの解放感が増して、ちょっとしたルーズさとリップからのスプリング感が出た。でも長さのおかげでターンのドライブ力もあった。マジックボードってこういうことだよね。

ということでドッグパウンドで完全勝利達成ですね。その後、ニナズで盛り上がりましたか?

そうだね、優勝した夜は街のギリシャ料理店に行ったんだ。僕とドッグ、レオ、ジェイク、そしてみんなの奥さんやお母さんたちも一緒に。大きなディナーでワインもたくさん飲んだよ。そこで、ギリシャ風に陶器の皿を買って地面に叩き割るイベントがあってね。音楽に合わせて踊ったり、盛り上がって面白かった。

でも僕は疲れてて、夜12時にはベッドに入ってた。長い一日だったからね。あんまり飲み過ぎなかったのは二日酔い防止に良かったかな。まあ、いい締めくくりだったよ。

初めてのCTファイナルは8年前のクラウドブレイクでウィルコと対戦でしたね。あの頃からあなたのサーフィンで一番変わったことは何ですか?

いくつか大きな変化がある。まず、ずっと一緒にやっているトレーナーのピート・ロバーツのおかげで、ケガなく体調を維持できていること。これはこのスポーツで長く続ける上で本当に大事なことだよ。
次に、レノックスに移住したこと。ここにはスナッパーやレノックス、アンゴーリといった色々な波があって、トレーニングに最適だし、良いサーファーも沢山いる。
そして最後に、常に好奇心を持ち続けていること。
家ではジェームズ“ウッディ”ウッズと密に仕事をしていて、彼は新しい視点をもたらしてくれて、僕を成長させ続けてくれるんだ。優勝した時、彼に「やったよ」とメールしたよ。彼も誰よりも熱心に関わってくれているからね。

バンティング、シルベスター、クーパー・チャップマンがあなたと同じ時期に活躍していたけど、その当時は誰がブレイクすると思っていましたか?

正直言ってみんなだよ。バンティング、シルベスター、クーパー、ウェイド・カーマイケル、ライアン・カリナン、トーマス・ウッズと、才能のある選手が揃っていて、自分はその中に入っていけると思えなかった。
当時は自分に自信も才能もなかったし、誰も「こいつはクオリファイをする」なんて思っていなかった。だから、目立たなかった自分がツアーで粘り強くやってきたのは、すごくやりがいを感じるし、ちょっとした逆転劇みたいに感じてる。

前に会ったときは新しいEVに乗ってましたよね。あの「イーロンがクレイジーになる前に買ったぜ」ってステッカーをテスラに貼りました?ポストTwitter時代のスタンスをちょっと知りたいです。

いや、それはないよ。しかもあの車は僕のじゃなくて妻の車なんだ。僕はまだ2018年のプラドを大事に乗ってる。あれが僕の相棒だよ。
でもステフのテスラにそのステッカーを貼ってみるのは面白そうだね。多分彼女は「何やってんの?」って言うだろうけど(笑)。

最後に、今年のワールドタイトルは誰に獲って欲しい?

ジョーディだね。
あの大男に優勝して欲しい。彼はずっと憧れの存在で、ツアーでもいつも優しくてフレンドリーで親しみやすい。
サーフィンも素晴らしいし、ただそこにいること、サーフィンを楽しんでいることが本当に伝わってくる。
彼はそれに値するよ。間違いなく応援している。

Stab Interview: Connor O’Leary

PHOTO: © WSL/Kody McGregor

(黒本人志)

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