現地時間5月27日、西オーストラリアのマーガレットリバーで開催されていたCT第7戦『Western Australia Margaret River Pro』が終了。
今年はウェイティングピリオド初日から最終日までキッチリと使い、開催された日の多くは十分なウネリとコンディションに恵まれていた。
2019年以来となる「The Box」もメンズRound of 16の8ヒート中6ヒートで使用され、改めてあの波の凄さを思い知らされた。

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder
最終日は前日よりサイズダウンしたメインブレイクでメンズ、ウィメンズ共にSFとファイナルが行われ、ジョーディ・スミス(RSA)とガブリエラ・ブライアン(HAW)がシーズン2勝目。
ガブリエラはマーガレットリバーでの2連覇も達成してイベントは幕を閉じた。
シーズン2勝はこの二人だけで、共にイエロージャージを着てシーズン後半戦の最初のイベント、カリフォルニア州サンクレメンテのローワー・トラッセルズ に向かう。
2017年以来のトップになったジョーディ

ケリーが抜けた後、ツアーの最年長37歳になるジョーディが第3戦のエルサルバドルでの8年ぶりの優勝からキャリア最高の結果を残している。
2010年と2016年に世界ランキング2位になったことがあり、それ以外のシーズンもタイトル争いに何度も絡んできたが、そろそろ見えてきた引退を前に初のワールドタイトルへの挑戦が現実的になってきた。
シーズン後半戦の残り4イベントの内、3戦で過去に優勝経験があり、ローワーズとJ-bayは2勝している。
「信じられない気分だよ。毎日諦めにずにやるべきことを信じて取り組んできた。その積み重ねの証なんだと思う。もちろん、全部自分一人でやってきたわけじゃない。素晴らしいチームが支えてくれているんだ。今年はただ楽しんで、この瞬間を味わうことを大切にしてきた。いつまでも続くわけじゃないからね。今は誰もがトップ5を狙っていて、みんなが本気でぶつかってきてる。だからこそワクワクするし、世界最高のサーファーたちと競い合えるチャンスが何よりの喜び。先のことを考えすぎず、目の前の1日1日を大切するよ」

ファイナルは波数が少なく、二人で乗った波は合計3本のみ。
マニューバーのコンビネーションで8.50をスコアしたジョーディがチャンスに見逃されたグリフィン・コラピント(USA)を抑えて優勝した。
これもまた自然を相手にするサーフィンコンテストなのだ。
「本当に最高だよ、この1週間、いやこの2、2ヶ月は色々なことがあった。今日は2人にこの勝利を捧げたい。まずは家族、妻、母、父、妹、そして2人の息子たち。もう1人は、亡くなったジャック・マッコイ。僕の人生を通してインスピレーションを与えてくれた存在なんだ。彼のムービー、映像、家族、この勝利はあなたたちのためのもの。愛と祈りを送りたい」
ジョーディはカレントリーダーの座を手に入れただけではなく、オージーレッグだけのランキング「GWM Aussie Treble」でも五十嵐カノアを抜いてトップに立ち、高級SUVの「GWM Tank 300」を手に入れた。
ウィメンズはイザベラ・ニコルス(AUS)が同タイトルを手に入れている。

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder
グリフィンがオージーレッグで巻き返す

2023年、2024年と2年連続で世界ランキング3位だったグリフィンは、今シーズン序盤に絶不調。
ランキング26位でミッドシーズンカットでCS落ちの危機もあったほどだった。
しかし、オージーレッグに入ってからは人が変わったように結果を出し、ベルズ戦で3位、マーガレットリバー戦で2位になり、ランキング11位まで浮上。
「The Box」で信じられないようなバレルをメイク、メインブレイクではエアーリバースでイベント唯一の10ポイントを出すなど弟のクロスビーと共にイベントを盛り上げる立役者になっていた。
「ファイナルでジョーディと一緒に海に入った時、13か14歳の頃、夜中の1時にJ-bayで彼が優勝するのを観ていたのを思い出したんだ。彼の『モダン・コレクティブ』はお気に入りのサーフムービーだったし、そんな彼と今こうしてファイナルで戦えるのは凄い流れだなって思う。本当に感謝してるし、ジョーディがまたトップに戻ってきて活躍してるのを見るのは嬉しいよ。今大会前はカットラインが気になって少しナーバスだった。弟のクロスビーもギリギリのポジションにいたから、突破できて本当にホッとしてる。プレッシャーから解放されて余裕を持ってできたよ。最高の気分でホームに戻れるのが本当に楽しみさ」
なお、弟のクロスビーはSFでジョーディに敗退したため、夢の兄弟ファイナルは次にお預けになった。

2連覇を決めたガブリエラ

PHOTO: © WSL/Cait Miers
ウィメンズサイドは今シーズンのパワーサーフィン代表として定着しているハワイアンの23歳のガブリエラがサンセットビーチのようだったメインブレイクで快進撃を続け、SFでは前日に猪突猛進でミッドシーズンカットをクリアしたレイキー・ピーターソン(USA)を完璧に抑え、最後はケイトリン・シマーズ(USA)とファイナルを争った。
パワーとテクニックのぶつかり合いとなったこの勝負は1本目に9.50をスコアしたガブリエラが優勢となり、7.83のバックアップスコアを重ねてケイティをコンビネーションに追い込んだ。
ケイティは7.17を返したが、逆転には及ばず、エルサルバドル戦に続いてシーズン2勝目。
マーガレットリバー戦での2連覇を達成してイエロージャージも保持している。
「本当に言葉が出ない。9.50の波は、もう完璧だった。振り返ったら、あの波が自分の方にまっすぐ入ってきたのよ。ラインも完璧だったし、ただ全力でサーフするしかないって思って乗った。運良くすぐにバックアップも取れたし、最高に嬉しい!」
日本のコナー、イタリアのレオと同じドッグことリチャード・マーシュのコーチの元で戦っているガブリエラ。
「チーム・ドッグ」は本当に雰囲気が良く、ポジティブに戦える空気が漂っている。

ケイティ復活の兆し

オージーレッグではベルズ、ゴールドコーストとRound of 16敗退が続き、イエロージャージも手放すことになったケイティだが、マーガレットリバーでは調子を取り戻し、ランキング2位を維持して自国のイベントに戻る。
「あの不安定な波のヒートで何本か乗れたのがラッキーだった。私たちはまったく違うスタイルだけど、どちらもハイスコアが出せる。それがサーフィンの魅力よね。正解は一つじゃない。今回は彼女が完全に勝ってた。フェアに正々堂々と私は彼女の2本の波を完璧に見たわ。自分の波に乗った後、振り返ったら彼女が9.50を出した。その次も凄かった。もう、”うん、今日は彼女の日だな”って感じだったわ」

次世代に繋いだブロンテ・マコーレー

PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder
2016年からCTを回り、リプレイスメント出場なども含めると2022年までツアーを戦い続けたローカルのブロンテ・マコーレー。
現役時代を通して、マーガレットリバーでの3度目となる3位入賞を果たし、メインブレイクでの彼女のバックハンドアタックの高評価が改めて際立った。
1989年にこのイベントで優勝した元CT選手デイブ・マコーレーを父に持ち、姉のローラも2014年と2017年にワイルドカードとして出場。マーガレットリバーは、マコーレー一家にとって特別な舞台であり、今回の3位という結果でキャリアを締めくくったブロンテの功績は大きな意味を持つ。
「この場所、このイベント、このチームと過ごした日々が、私の人生を本当に豊かにしてくれた」と語ったブロンテ。
今後は教育の道を歩みながら、西オーストラリアの次世代の女性サーファーたちの育成に力を注いでいく予定とも話している。
次の第8戦『Lexus Trestles Pro』は6月9日〜17日にカリフォルニアのローワー・トラッセルズで開催される。
2028年ロス五輪の会場でもあることから、注目度も高くなるだろう。
『Western Australia Margaret River Pro』結果
1位 ジョーディ・スミス(RSA)
2位 グリフィン・コラピント(USA)
3位 バロン・マミヤ(HAW)、クロスビー・コラピント(USA)
5位 レオナルド・フィオラヴァンティ(ITA)、コナー・オレアリー(JPN)、ジェイコブ・ウィルコックス(AUS)、イーマイカラニ・デヴォルト(HAW)
ウィメンズ
1位 ガブリエラ・ブライアン(HAW)
2位 ケイトリン・シマーズ(USA)
3位 ブロンテ・マコーレー(AUS)、レイキー・ピーターソン(USA)
5位 モリー・ピックラム(AUS)、ルアーナ・シルヴァ(BRA)、ソーヤ・リンドブラッド(USA)、イザベラ・ニコルス(AUS)
Western Australia Margaret River Pro Women’s Final Results:
1 – Gabriela Bryan (HAW) 17.33
2 – Caitlin Simmers (USA) 12.84
Western Australia Margaret River Pro Men’s Final Results:
1 – Jordy Smith (RSA) 12.00
2 – Griffin Colapinto (USA) 4.83
Western Australia Margaret River Pro Women’s Semifinal Results:
HEAT 1: Caitlin Simmers (USA) 14.00 DEF. Bronte Macaulay (AUS) 9.34
HEAT 2: Gabriela Bryan (HAW) 16.34 DEF. Lakey Peterson (USA) 11.64
Western Australia Margaret River Pro Men’s Semifinal Results:
HEAT 1: Griffin Colapinto (USA) 12.17 DEF. Barron Mamiya (HAW) 7.44
HEAT 2: Jordy Smith (RSA) 14.67 DEF. Crosby Colapinto (USA) 6.67
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/



(黒本人志)