Photo: Minato Takahashi

静波サーフスタジアムで初開催。S.ONEショートボード第2戦現地リポート(高橋みなと)

日本のプロツアーでは初のウェーブプール開催となったS.ONEショートボード第2戦『さわかみ 静波サーフスタジアム PerfectSwell(R) PRO』が、8月20日〜22日に開催。

CTのウェーブプールイベント同様にリーダーボード形式を採用して進行した本大会の裏側を、今回も髙橋みなとプロが現地よりリポート。

髙橋みなと

今年度から二部制となり出場枠が限られる今年、安定した波を提供できるプール開催が実現した。

静波サーフスタジアムは「パーフェクトスウェル」の造波技術により安定した波を造り出す

今回は有料で観戦チケットを販売し、VIPチケットは即完売。

選手たちのテイクオフポジションの真上から試合観戦ができるスタンドも用意され、目と鼻の先までスプレーが飛ぶ、かなりの迫力を感じることができた。

ライディングしているのは加藤翔平

その応援スタンドには、地元選手の応援団が。

ここサーフスタジアムアンバサダーの三輪紘也、そしてここで働いている森丈二はローカルシードとして出場し会場を沸かせた。

試合観戦用の特設スタンド

今回はワールドシードで安室丈、伊東李安琉、大音凜太、池田美来、松岡亜音、脇田沙良が出場。

久々のS.LEAGUE参戦となった数名の選手たちに”なぜ参加したのか”の理由を聞くと、ほとんどが口を揃えて ”プールでの試合は必ず波に乗れるし、確実にいい波だから。楽しそうだなと思った” と答えた。

R1、レギュラーの波を乗り終えた時点で1位となった大音凜太

絶好調に見えたが、前日の練習では不調だったという。短い時間で考えすぎたのが良くなかったと振り返り、当日のヒートではきっちりメイクしていた。前日からすぐに調整してみせるのはさすが海外を回って得た経験値が物語っている。

インタビューを受ける大音凜太

R1を1位で勝ち上がり、そのまま最終日のファイナルへと進んだのは西慶司郎

R2,R3をスキップすることから、2日目の出番はなくなり、最終日までプールセッションはしないことに。それについて尋ねると、”R2、R3も戦うということは、良かったライディングと同じこと、もしくはそれ以上をやらなければならない。それを2ラウンドもやるのはかなりのリスクがあることから、ファイナル確定できて良かった。”そういったところまで考えて試合を運んでいるのはさすが歴代グランドチャンピオン。

ファイナルまであと一歩のところで敗退してしまった、選手会長山中海輝

今シーズンから海輝の提案により、試合前には各選手がSNSで大会情報を投稿。沢山の人に会場に足を運んでもらいたい、よりサーフィン業界が盛り上がるようにと、選手の中で率先して動いている。今大会は数年ぶりにお母様も会場に駆けつけ、さらに沢山の方々がチケットを購入し、海輝の応援に駆けつけていた。そういった選手の想いも見ることができるので、海輝はもちろん、各選手のSNSも是非チェックしていただきたい。

選手会長としてツアーの盛り上げにも貢献する山中海輝
山中海輝

もう1人、応援団がたくさんいたのは加藤翔平。

あと1本しかチャンスがない中、逆転しなければいけない緊迫したシチュエーション。

翔平の一番の応援団であるお母様が直前にかけた言葉は、”これ勝たなかったら、さわやか行かないよ!!” 静岡で大人気のハンバーグ屋さんだ。その言葉が見事効き、大逆転でファイナル進出を決めた。

選手と観客の距離感もプール開催の魅力のひとつ

大原洋人の作戦は

プールの波だからこその作戦については、大原洋人から面白い回答があった。

“普段の海の場合、波がどう割れてくるかで臨機応変にアプローチを変えていかないといけない。プールはイメージがしやすいから、テイクオフしてから何の技をどのようにアプローチするかは、事前にイメトレしていたことをやるだけ”

それを試したあとに、思ったよりスコアが出ていなかったらどうする?と聞くと、

”例えば4発リップ入れてる選手とかもいて、でも俺の性格上4発やるよりも思いっきり3発の方がやりたいから、選択肢を減らしていく。今までの経験上、ある程度の構成はできる。これをやれば一番点数が出るだろうという予想もできるけど、その分リスクもある。そういった所を考えた上で構成を変えていく” レベルの高い話で、聞いてる私も勉強になった。 

大原洋人

面白い作戦を立てていたのはもう1人、野中美波。

レギュラーの波ではChannel Islands、グーフィーの波ではMayhemを使用。事前にこうしようと決めていた訳ではなく、練習の時の覚で決めたようだ。1本乗り終える度にコーチと話したり、板を変えることができるのもプールだからこそ。その特性を最大限に活用していた。

今大会の前、練習中に肩を脱臼してしまった川合美乃里。

ドクターからも今回はOKをもらい、海ではなくプールだからこそ出場を決めた。ボトムターンでの右手の引きやバックサイドのテイクオフでは時より痛そうな場面もあったが、今の状態でできることを120%披露。R3で敗退となったが、今大会の私的MVP。

2戦終えた時点で今もなおランキング1位をキープしている。次戦まで時間があるので、まずはゆっくり身体を休めてほしい。美乃里ちゃん、お大事にしてね!

肩の脱臼を乗り越えて今大会4位の川合美乃里

サーフスタジアムアンバサダーの佐藤李と池田美来。

今回優勝した佐藤季は初日から好調だった。秘策を聞くと、”ここの波を熟知しているから、他の選手よりも確実に有利だと思う。特にクセがあるプールのテイクオフのポジションには自信がある” と話してくれた。その実力を試合でもしっかりと発揮し、見事優勝を果たした。

佐藤がラスト1本乗る前、すでに優勝が確定し、ラスト1本がウィニングライドとなった。

“優勝が決まった後で、絶対転んじゃいけないと思い、一番緊張した” と笑顔で語ってくれた。

佐藤李は今大会のシングルスコア、ヒートトータルともにハイエストをマークして優勝

”ここの波を熟知しているからこそ、もっといいライディングができる自分も知っている。なので反省点や改善点も多い” と話してくれたのは池田美来。

R3では乗る波をミスしてしまい、もうあとが無くなってしまう。ラスト1本のチャンスでは、先ほどのミスがなかったかのようにな鋭いターンを連発。会場でのMCをしていた私も開いた口が塞がらなかったのを覚えている。9.50をスコアし1位のポジションでファイナルへ。

“メンタル弱いので” というコメントを試合前にしてくれたが、聞かなかったことにする。(笑)

池田ファミリー

伊東李安琉はファイナルラウンドにて、1本の波で2回のエアーリバースを見事にメイク。

だがその技は、練習では一度もメイクしていなかった。惜しくも逆転には届かなかったが、追い込まれた場面であえて仕掛け、メイクしてみせたのはさすが。
”最後に何か大きなことをやらなきゃいけないと思った。自分は追い込まれた時のほうが決めることができるから、強い気持ちでやった” とコメント。エンターテイナーな一面を見ることができた。

メンズで見事優勝したのは西優司。

ラスト1本、兄である西慶司郎が逆転優勝するためには9.55が必要。

先にライディングを終えた優司は、兄のライディングを見ることなく、スタスタとボードロッカーの方に歩いて行ったのを見かけた。
慶司郎が逆転できず、優勝コールがアナウンスされると、プールサイドにいない優司を全員が探していた。(笑)

なぜ兄のライディングを見なかったのか聞くと、”慶司郎が決めて逆転されたら悲しいから、見たくなかった・・・” とコメント。あれだけ圧倒的なライディングをしたのにも関わらず、不安な気持ちになるのは兄弟の実力を知っているからこそ。

西優司はファイナルで男子トップスコアをマーク
今回の優勝でランキング2位までアップした西優司、1位は慶司郎

今大会、ファイナリストの選手紹介の際には選手が自ら選ぶBGMと共に入場となった。

これはLIVE配信では流れず、会場でしか聞くことができない。

池田美来はM-1グランプリの入場曲。西優司はアンディアイアンのINNERSECTIONという作品で使われている曲を選択。その作品で実際にアンディがやっているポーズを起用し会場を盛り上げた。

ウィメンズはレイデイとなったDay1。メンズの試合観戦をしに来た清水ひなの、清水ひなた、松山黎音、川瀬心那

波の取り合いがないことから、選手たちが終始リラックスし、ピリついた空気感がほとんどなかった今大会。

ライバルである相手が技を決めると、水中で待機している選手が拍手をする場面を何度も見かけた。

スケートボードの大会でよく見るような、相手選手を讃え、リスペクトの気持ちで挑むS1の選手たちは、いつにも増してかっこよく見えた。

プールではプライオリティや駆け引きがないため、海よりもつまらないという人も中にはいるだろう。だがこのようなフェアな戦い方により選手たちがより楽しそうで、ギャラリーも盛り上がっていた。

プールでの試合をまた見たいと思わせてくれる、そんなコンテストとなった。

灼熱の真夏日開催、選手たちはアイスバスで涼むも氷はすぐに溶けてしまった。左から佐藤魁、安室丈、増田来希、須田喬士郎、大音凜太
日陰でプールの水も来る、ベスポジを見つけた宮城和真
ハチマキでスタイルを出してくる長沢侑磨
試合直前の選手たち。こんなに距離が近く、そしてお喋りしながら待機するのはビーチではあまり見ることができない
試合合間の野中美波、脇田沙良

(高橋みなと)

All Photo: Minato Takahashi

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