現地時間8月13日、全11戦の2025年CTレギュラーシーズン最終戦であり、ワールドタイトルを決める「WSL Finals」の出場権を懸けて争われる『Lexus Tahiti Pro』が終了。
ファイナルデーは公式6-8ftレンジのエピックコンディションに恵まれた。
ウィメンズはファイナルだけが残り、ファイナル5も確定していたが、メンズはRound of 16から再開され、ファイナリストに選ばれたジャック・ロビンソン(AUS)とグリフィン・コラピント(USA)は4ヒートをこなすマラソンデーとなった。
まだ3枠が決まっていなかったファイナル5に関わるこの二人の結果により、イベント前に比べて大きな変動があり、残念ながら日本の五十嵐カノアは3位から7位に転落してしまい、2度目のファイナル5は逃してしまった。
それでも今年のカノアはシーズン序盤にJSにサーフボードを変え、ベルズとトラッセルズで表彰台に上がり、久々のUSオープンでも活躍するなど、実りのあるシーズンになった。
ファイナル5を巡る戦い

最終戦の見どころはなんと言ってもファイナル5をかけての勝負。
メンズはヤゴ・ドラ(BRA)、ジョーディ・スミス(RSA)の2枠だけ先に埋まり、残り3枠は11位のコナー・オレアリー(JPN)までと多くの選手にチャンスがあった。
そんな中、勝ち上がってきたのは6位のグリフィン・コラピント(USA)と8位のジャック・ロビンソン(AUS)で、両者共に条件だったファイナル進出でグリフィンはNo3.シード、ロボはNo4.シードを獲得。
一方、カノア、イーサンはファイナル5行きを逃し、イタロは一つ落としたNo5.シードでワールドタイトルを争う。
ファイナルまでの道のりは、ロボがマルコ・ミニョ(FRA)、イタロ、クロスビー・コラピント(USA)を倒し、QF、SFとエクセレントスコアを重ねていた。
グリフィンはジョアオ・チアンカ(BRA)、イーサン、ローカルワイルドカードのミハマナ・ブライを抑えてのファイナル進出。




A.Iの存在を感じながら手に入れた勝利

PHOTO: © WSL/Brent Bielmann
ファイナルはロボのグラブレールからの深いバレル、スピットアウトしてテンポイントアピールまで出た9.50からゴングが鳴った。
グリフィンもすぐに同じようなバレルを抜けるが、僅かに低い9.00。
中盤、グリフィン、ロボの順に少し小さめ波にテイクオフ。グリフィンよりも長いバレルを抜けたロボが7.40を出してニード8.91に追い込む。
グリフィンは一本目と同じようなバレルを抜けないと逆転できないシュチュエーションに追い込まれ、最後までポテンシャルがある波は入らなかった。
残り3分を切って入ったセットは出口がなく、プライオリティが移ったロボが完璧にプロックしてタヒチでの2度目の優勝を決めた。

PHOTO: © WSL/Brent Bielmann
「この場所に辿り着いた。サポートしてくれた全員に感謝したい。全てに愛を感じる。今はただ、この瞬間を噛みしめているよ。使命を持って臨み、それを成し遂げられた。フィジーに行けることに心から感謝している。最後の最後まで勝負がもつれて、また戻ってこれた。また楽しみたいね」
ファイナル直後、グリフィンと長いハグを交わし、チャンネルで待つ愛する家族の元へ向かったロボ。

PHOTO: © WSL/Beatriz Ryder

「自分は普段は割りと静かな方で、大会の日もただサーフィンがしたいだけなんだ。海に出たら自由で、その瞬間に集中していたい。そうじゃないと、弾かれたり、叩きつけられたりしてしまうから。だからこそ、その瞬間を楽しむことが大事なんだ。支えてくれているチームのみんな、そしてジュリア(妻)とゼン(息子)、家族全員、そして、このボードを作ってくれたエリック・アラカワに感謝したい。このボードはエリックが作ってくれたもので、アンディ・アイアンズを感じさせる何かがあったと思う。自分で旭日模様のスプレーを入れたんだ。AIを少し意識して、その存在を感じながらサーフィンしたよ」
彼の勝利を支えたのは、パリ五輪でも話題になったアンディ・アイアンズにインスパイアされた旭日旗デザイン、エリック・アラカワのシェイプ。
また、オーストラリア出身の元プロサーファーで、オーストラリア代表のコーチも務めるマット・ベムローズが常に側にいて、ヒート前は彼の頭を触るのが恒例のラッキーチャームになっていた。
パリ五輪で銀メダルだったロボは1年後に同じ場所で頂点に立った。
ウィンメンズはモリーの一人舞台

PHOTO: © WSL/Brent Bielmann
ウィメンズサイドは大会2日目に一気に進行してファイナルデーはモリー・ピックラム(AUS)とケイトリン・シマーズ(USA)のファイナルオンリー。
両者共にファイナル5も確定させていた。
親友同士のファイナルはモリーのバレルのスキルが際立ち、難しいセクションを抜けてバレルにプルイン。見事にメイクして8.83を出した。
更に2本の8ポイントを出してトータル17.23。ケイティはメイクすれば10ポイントも可能だったビッグセットを掴んだが、出口を見つけることはできなかった。

PHOTO: © WSL/Brent Bielmann
「本当に最高の気分。タヒチは特別な場所。エネルギーを全身で感じられて、本当に素晴らしいわ。今は山々を見ながら、完璧なブルーを眺めている。まさに夢が現実になる場所。そして次はフィジー。この瞬間をしっかり味わいたい。今年はランキング1位で終えられました。大きな前進だわ。フィジーでまた優勝できたら最高ね」
シーズン序盤はケイティとガブリエラが先行していたが、モリーはブラジル戦の優勝でトップに立ち、J-Bayの2位でリードを広げることに成功。
ファイナル5入りは3年連続で、2023年、2024年は5位で終わっている。
今回のタヒチでは全てのラウンドでエクセレントスコアを出し、ウィメンズデーとなった大会2日目にはディフェンディングチャンピオンのヴァヒネ・フィエロ(FRA)とのQFで9.77のハイエストスコアも出していた。
この日はウィメンズサーフィンの歴史に残るような素晴らしいバレルセッションだった。

「間違いなく人生の中でもトップ3に入る瞬間だわ。このイベント全体を通して考えると、多分1位かもしれない。あの2日目は本当に魔法のようで、女子の選手全員が信じられないほど良い波でサーフィンして、みんなが輝ける日だった。その中でケイティと私が勝ち残れたことが本当に嬉しいし、今日こうして素晴らしい波が来てくれたことに心から感謝している」
タヒチで初優勝を果たしたモリーは「WSL Finals」のNo1.シードを獲得。
今年はフォーマットが変わり、No1.シードの選手は下から勝ち上がってきた選手とのヒートを一つ勝てばワールドタイトルを獲得できる。
モリーにとっても、ヤゴにとっても初のワールドチャンピオンのトロフィーは2本の波で手に入れることが可能なのだ。
『Lexus WSL Finals Fiji』は8月27日〜9月4日のウェイティングピリオドを設けて1日限りのタイトルマッチとしてフィジーのタバルア島で開催される。
『Lexus Tahiti Pro』結果
1位 ジャック・ロビンソン(AUS)
2位 グリフィン・コラピント(USA)
3位 クロスビー・コラピント(USA)、ミハマナ・ブライ(PYF)
5位 カウリ・ヴァースト(FRA)、イタロ・フェレイラ(BRA)、コール・ハウシュマンド(USA)、イーサン・ユーイング(AUS)
ウィメンズ
1位 モリー・ピックラム(AUS)
2位 ケイトリン・シマーズ(USA)
3位 ガブリエラ・ブライアン(HAW)、キャロライン・マークス(USA)
5位 エリン・ブルックス(CAN)、タイラー・ライト(AUS)、ヴァヒネ・フィエロ(FRA)、ベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(黒本人志)