米国のトランプ政権が発表した石油増産のための海洋掘削計画に、サーファーらが反対の声を上げている。計画は、北極圏を含むアラスカ州沖、フロリダ沖を含むメキシコ湾(アメリカ湾)、そして、世界のサーフィンを牽引する聖地の一つ、カリフォルニア州沖が含まれる。
サーフスポットの環境保護を目的とした国際NGO「Surfrider Foundation」(本部・米カリフォルニア州)は、他の団体と共に、トランプ氏の大統領令撤回を求める訴訟に加わった。
Surfrider Foundationのアンバサダーには、CT選手のカリッサ・ムーアら著名なサーファーが名を連ね、ケリー・スレーターが立ち上げたアパレルブランド「Outerknown」も同団体とパートナーシップを結んでいる。今回の反対運動がサーフィン界で広がりを見せる中、カリフォルニアのサーファーらも「#DrillingIsKilling」(掘削は海を殺す)を合言葉に、SNSなどで反対の意思を示している。
トランプ大統領「気候変動は詐欺」

AP通信などによると、昨年1月、トランプ氏は2度目の大統領就任を果たした直後、前任のバイデン大統領が退任間際に決定した「海洋掘削禁止措置」を覆す大統領令を発令した。気候変動対策に注力していたバイデン前大統領とは対照的に、トランプ氏は気候変動を「世界中でこれまでに犯された最大の詐欺行為」などと呼び、石油業界の求めを受け、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料の増産を進めようとしている。
トランプ氏の方針を受け、米内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)は昨年11月、新たな海洋掘削の「5カ年計画案」を公表した。海洋掘削は、米政府が管轄する海域をブロック分けし、そのブロックの掘削権を、民間企業に一定期間リースする形で行われる。
カリフォルニアは40年ぶりの新計画




計画案では、2026年からアラスカ州沖で21件、2027年からメキシコ湾で7件、カリフォルニア州沖で6件の計34件をリースする。これまで、米政府は原油流出の懸念などから、メキシコ湾東部は1995年から掘削を許可しておらず、カリフォルニア州沖でも、1980年代半ばから新たなリースはない。第2次トランプ政権となり、数十年間守られてきた米国の海の環境が危機にさらされている。
これに対し、サーフライダー・ファウンデーションなどの環境保護団体は、掘削が海に与える悪影響を主張。
・海底の資源探査で発生する爆音が魚類や海洋哺乳類の聴覚などを妨害し、最悪の場合、死に至らしめる
・掘削時に出る重金属、毒素を含む掘削汚水や揮発性有機化合物による海や大気の汚染
・原油流出事故のリスク
・化石燃料の燃焼による温室効果ガスが引き起こす異常気象、山火事、海面上昇などの気候変動
新計画なくても石油輸出国
加えて、今回の新計画が不要な理由も列挙した。
・米国は世界最大の産油国であり、輸入量よりも輸出量の方が多い
・すでに48000平方km以上の海域がリースされているのに、2024年12月時点でその20%未満しか石油生産を開始していない
・新たな掘削を行っても、石油価格は世界市場によって決まるため、安くなることはない
こうした動きについて、「SURFER Magazine」は、「沿岸部のコミュニティ、サーファー、そして海洋経済にとって、この問題には極めて大きなリスクが伴う。こうした掘削事業が一般のアメリカ国民にどのような利益をもたらすかについてはほとんど語られていない一方で、そのリスクはリターンを大きく上回る」と解説。

Surfrider FoundationのCEO、チャド・ネルセン氏は、「この計画は、私たちの海岸線、サーフスポット、そしてクリーンな水に依存している沿岸経済を脅かす。コミュニティに損害を与え、壊滅的な原油流出事故が再び起こる可能性を高める。私たちは大統領と議会に対し、新たな海洋掘削を拒否するよう求める」と主張した。
インスタグラムなどでは、Surfrider Foundationの各支部やサーファー個人が掘削に反対する活動やコメントを投稿。

オルタナティブロックバンド「パールジャム」のボーカル、エディ・ヴェダーもインスタグラムで#DrillingIsKillingを使い、「この計画はビーチやサーフスポット、沿岸の生態系を脅かし、地元コミュニティや地域経済を支える観光業やレクリエーションに危険を及ぼす」と警告。ケリー・スレーターのサーフボードブランド、「Slater Designs」や元CT選手ミック・ファニングらが賛同を示している。
計画を巡ってのBOEMによる一般からの意見募集は1月下旬に締め切られた。今後は計画案の詳細な分析と評価を経て、本格的に承認されるか決定する。

(沢田千秋)














