現地時間9月14日、『2025 ISA World Surfing Games』が終了。
WSGとして3度目、ISAイベントとしては通算10回目となる会場のエルサルバドルは今回も期待を裏切らないハイクオリティの波が続き、ファイナルデーは前日より更にサイズアップした公式4-6ftレンジ。
パーフェクトなラ・ボカナで9日間に渡る長い戦いが決着した。
都築虹帆が初出場で大健闘の6位

今年は5名の選手が早期敗退となってしまった日本代表、波乗りジャパン。
都築虹帆のみが勝ち進み、リパチャージに回った後も得意のレフトでスコアを稼いでファイナルデーに残っていた。
リパチャージR10はスペインのハニレ・ゴンサレス・エチャバリとメインラウンドR6から落ちてきたオーストラリアのサリー・フィッツギボンズ、エリー・ハリソンとのカード。
都築虹帆は序盤に2本のレフトで5.83、4.10を重ねて3位につけるが、トップのサリー、2位のハニレがスコアを伸ばして引き離し、更に4位だったエリーもラスト6分で長いライトを掴み、バックアップスコアを伸ばして都築虹帆を4位に追いやってしまう。
ここまで何度も逆転してきた都築虹帆だが、今回はチャンスがなく、終了間際に乗ったライトもポテンシャルがなく、ファイナル進出はならず。
初めてのWSGを大健闘の総合6位でフィニッシュした。
なお、日本は国別で14位に終わっている。

Photo: ISA/Jersson Barboza

Photo: ISA/Sean Evans


オーストラリアが通算6度目の団体金メダルを獲得

Photo: ISA/Sean Evans
ファイナルデー前日の時点で2位のペルーに大差を付けていたオーストラリア。
最後はメンズでデイン・ヘンリーが優勝、モーガン・シビリックが3位。
ディフェンディングチャンピオンのサリー・フィッツギボンズが3位、エリー・ハリソンが5位になり、通算6度目の団体金メダルを獲得した。
また、銀銅を合わせると16個目のWSG団体メダル獲得。
2011年の金メダル以来、あと一歩で優勝を逃し続けていただけに今回は格別の喜びとなった。


Photo: ISA/Jersson Barboza

Photo: ISA/Pablo Jimenez
メンズのファイナルを振り返るとエルサルバドルで開催された昨年のISAジュニアのU18ボーイズで優勝していた19歳のデインの独り舞台だった。
序盤に高さのあるフルローテーションで8.67、更にレイバック、スナップ、最後にエアーリバースを完璧に決めたライディングで9.50を重ね、トータル18.17とシングル、トータル共にイベントのハイエストを出して圧勝。
2位になったフランスのカウリ・ヴァーストもパワフルなバックハンドとフルローテーションエアーで2本の8ポイント台を出して追い上げてきたが、最後まで追い抜くことはできなかった。

Photo: ISA/Pablo Jimenez
「このクラブに入れたことは本当に凄いことだと思う。自分ならできると信じていたし、サーフィンの調子も最高だった。ファイナルでは本当に輝きたいと思っていたから、実際にそのチャンスを掴めたことが嬉しい。カウリ・ヴァースト、モーガン、ドゥグラスといった選手と戦うには、ベストを出さないといけない。この場所、この大会とは特別な繋がりを感じている。自分らしくサーフィンできたのが勝利に繋がったと思うよ」
過去にトム・カレンが1980年にISAワールドジュニア、1982年にWSGを制したことがあるが、ISAワールドジュニアのディフェンディングチャンピオンの肩書きを持ったままWSGを制したのは史上初。
二つの金メダルを持つ選手は他にガブリエル・メディナとジョーディ・スミスのみ。
WSLではまだ結果を残していないデインだが、これから台頭してくる可能性は十分にある。
なお、銀メダルのカウリは2023年に5位、2024年に銅メダルと確実に順位を上げている。
モーガン、ブラジルのドゥグラス・シルヴァはISAで初のメダル獲得になった。
スペインの歴史を塗り替えた女性

Photo: ISA/Sean Evans
ウィメンズは序盤に7ポイント台を出したスペインのハニレ・ゴンサレス・エチャバリとポルトガルのヨランダ・ホプキンスのトップ争いとなった。
ファイナルデーに残った6名で唯一のグーフィーフッターとなったハニレはラ・ボカナでポテンシャルがある波が多かったレフトをフロントサイドでスタイリッシュに攻め、もう一本の7ポイント台をスコア。
トータル14.57で2位以下を引き離し、最後までリードを守って初のメダルを獲得した。
ディフェンディングチャンピオンのサリーは戦略を変えてライトで逆転を狙ったが、6ポイント止まりで今年は個人銅メダルに終わった。
「まるで夢の中にいるみたいで、現実じゃないように感じるわ。本当に言葉が出てこないほど。とにかく幸せで、何を言えば良いのか浮かんでこない。ファイナルの舞台に立てること自体に感謝していたし、もしかしたら金メダルが取れるかもって思うだけで嬉しかった。最終的に成し遂げられたけど、それよりもヒートを楽しんで、自分のサーフィンを見せたいと思っていた。金メダルのことは考えず、一つひとつの波に集中して自分のサーフィンを出すことだけを意識した。本当に幸せよ」

Photo: ISA/Sean Evans
20歳のハニレは昨年のWSGで15位になり、パリ五輪の出場資格を獲得。
今回はチームメイトであり、同じく五輪出場を果たしたナディア・エロスタルベが2024年に獲得した歴史的なカッパーメダルを上回る成果を挙げた。
今回の優勝はスペインにとって2017年の団体銅メダルに並ぶ過去最高のチーム成績にも貢献した。
なお、ヨランダは2021年に続きの銀メダル、サリーは通算6個目のWSGメダルを獲得。4つの金に加え、2つ目の銅を手に入れた。
アレナ・ロドリゲスはペルーの女性として4人目のWSGメダリストとなり、カッパーメダルを獲得。
ダニエラ・ローサス、ソフィア・ムラノヴィッチ、アナリ・ゴメスに続く名を歴史に刻んだ。

ISA会長のフェルナンド・アギーレ氏のスピーチ

今日、ファイナルを階段から見ていた時、バヌアツの選手の一人が立ち寄って、こう言ってくれました。『この2週間は人生で最高の時間でした』と。
バヌアツがWSGに初めて参加した今回、その思い出は一生残るでしょう。こうした瞬間こそ、私たちの活動に大きな意味を与えてくれるのです。
私はサーフィンをエルサルバドルの未来の一部として信じ、ISAを信じてくださったナジブ・ブケレ大統領に心から感謝します。
この6年間はエルサルバドルにとってもISAにとっても、そしてオリンピックサーフィンにとっても素晴らしい時間でした。
また、モレナ・バルデス観光大臣。
そして素晴らしい運営チームの皆さんにも感謝します。
その昔、デューク・カハナモクはいつの日かサーフィンがオリンピック競技になることを夢見ました。
当時は「そんなことはあり得ない」と言われましたが、今、その夢は現実のものとなっています。
サーフィンが3度目のオリンピックサイクルを迎える今、私たちはデュークのビジョンに敬意を表します。
彼はサーフィンを信じ、アロハを信じていました。
そして、私たちはそれぞれの形でアロハの大使なのです。ここに平和をもって集い、この2週間を平和に過ごし、今また平和をもって帰路につきます。
これこそがサーフィンの真の精神です。
サーフィン万歳、そして世界に愛と平和が永遠にありますように。
エルサルバドル観光大臣 モレナ・バルデス氏のスピーチ

エルサルバドルに“サーフィンの国連”が集まってくれたことをとても嬉しく思います。
ISAワールドサーフィンゲームズに皆さんと一緒にいられることは、私たちにとって大きな誇りです。
この大会は毎年、特別なものを残してくれますが、私にとって最も大切なのは、国々の間に育まれる友情です。
エルサルバドルにとって、サーフィンは単なるスポーツではありません。
ISAと共に、そしてブケレ大統領のビジョンのもとで、私たちはサーフィンを社会的、経済的、人間的な発展への道だと信じています。
WSGを開催することは、単なる競技の場ではなく、サーフィンを通じて新しいチャンスや友情、そしてより強い未来を築くことなのです。
なお、今年は11月にパラサーフィンがカリフォルニアのオーシャンサイド、12月にワールドジュニアがペルーのプンタ・ロカスで開催される。
『2025 ISA World Surfing Games』結果

団体総合結果
1位 オーストラリア
2位 ペルー
3位 スペイン
4位 フランス
…14位 日本

メンズ個人結果
1位 デイン・ヘンリー(AUS)
2位 カウリ・ヴァースト(FRA)
3位 モーガン・シビリック(AUS)
4位 ドゥグラス・シルヴァ(BRA)
…73位 西慶司郎、稲葉玲王
…85位 大原洋人

ウィメンズ個人結果
1位 ハニレ・ゴンサレス・エチャバリ(ESP)
2位 ヨランダ・ホプキンス(POR)
3位 サリー・フィッツギボンズ(AUS)
4位 アレナ・ロドリゲス(PER)
…6位 都築虹帆
…33位 中塩佳那
…49位 都筑有夢路
ISA公式サイト:https://www.isasurf.org/

(黒本人志)