妊娠したタティアナ・ウェストン・ウェブとパートナーのジェシー・メンデス via instagram@tatiwest

CT選手タティアナ臨月サーフィン!一般の妊婦には「禁忌」!?

ブラジルのCT選手タティアナ・ウェストン・ウェブが臨月までサーフィンする驚異的な姿をインスタグラムにアップした。

8週まではダブルサイズの波で大きなカービングを決め、12週でウェーブプールとみられる場所でバレルをメイク。16週でリーフポイントのインサイドで華麗にリッピング。20週でカットバック、24週でビキニを着てドルフィンスルー。28週でも大きなサーフボードを切り返し、最後の36週は長めのボードの上に立ち、小波をクルージングした。

36週というと、臨月の入り口。一連の動画は世界トップクラスのサーファーだからこそできる凄技で、一般サーファーにお勧めできる領域ではない。

サーフィン大好きな一般女性は妊娠発覚後、どう過ごせばよいのか。タティアナのインスタをきっかけに、専門家らの話を聞いた。

妊娠中のサーフィンは「禁忌」

元プロとして、JPSAで活躍していた大江なぎささん(51)は、40歳で妊娠した。39歳から妊活し、3回目の体外受精で授かった大切な子。「何かあったらと心配でサーフィンはできなかった。でも、サーフィンが妊娠に悪影響を及ぼすことはない気がします。妊娠中にサーフィンしていた友達もいますよ」と話してくれた。妊娠中のサーフィンはしなかった大江さんだが、プロを引退後もサーフィンを続け、2024年には、マスターズ日本代表となっている。

東京西徳洲会病院婦人科部長の松浦拓人医師は、自身もサーフィン歴22年。現在は3兄弟の子育てで海から遠ざかっているが、2年に一度、家族でハワイ旅行をし、サーフィンするのが楽しみだという。

ずばり、妊娠中にサーフィンはしない方がいいのか。松浦医師は「サーフィンを含めた腹部打撲、転倒の危険、無酸素負荷のかかるスポーツは禁忌とされている」と断言する。高い負荷がかかる運動や腹部圧迫は、早産や破水などのリスクにつながる。さらに、高負荷の無酸素運動は胎盤の血流が低下し、胎児に低酸素ストレスが及ぶ可能性があるという。

沖までのゲッティングアウト中に息切れしたり、激しいワイプアウトによってケガをしたり、水中で文字通り無酸素になることも少なくないサーフィンは、妊婦には、かなり危険なスポーツと言えそうだ。

そんな常識を打ち破るタティアナの臨月サーフィン。一般人との違いについて、松浦医師は興味深い見解を示す。

プロにとってサーフィンは歩行と一緒!?

「医学的な話ではないが、プロサーファーにとって、沖までゲットして、波をつかんでテイクオフし、ワイプアウトせずに岸まで乗り継ぐことは、一般人にとって歩いたり走ったりすることと同じだと聞いたことがあります。世界トップクラスのタティアナ選手が試合レベルでなく普通にサーフィンを楽しむことは、我々にとって歩くことと同じかもしれません。サーフィン中の体への負荷を自身でしっかりとコントロールできるからこそ成せる業だと思います」

つまり、タティアナにとってサーフィンは高負荷の運動ではなく日常動作であるが故、妊娠中でも安全に楽しむことができたのだろう。

理想は会話できる運動

臨月のタティアナ via instagram@tatiwest

前提条件からレベルが違うタティアナはさておき、一般人にとっても妊娠中の適度な運動は、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、過度な体重増加を防ぐ上で重要。松浦医師は「好ましいのは『トークテスト』で会話しながらできる負荷が低い運動。妊娠が診断された後はサーフィンではなく、リスクの少ない低負荷の運動を心がけましょう」とアドバイスする。

東京都立川市の井上レディースクリニックでは、妊婦のためのピラティスやスイミングを取り入れている。助産師の廣川希さんは、ジュニア五輪にも出場した元競泳選手という強みを生かし、妊婦の運動療法に力を入れている。

廣川さんによると、運動に参加できる妊婦は、産科医の了承のもと、同院のメディカルチェック(心電図・血圧・経管長チェック・骨密度)をクリアしていることが条件。「切迫流産・切迫早産・前置胎盤等の異常があれば当然、運動は不可です」と話す。

マタニティピラティスやアクアが人気

廣川さんによる「助産師アクア」の様子(本人提供)

マタニティピラティスは、妊娠16週から出産直前まで可能で、出産時に必要な筋力、体力を鍛え、柔軟性向上も期待できる。「妊婦さんはお腹が大きくなるにつれて骨盤が前傾し、腰椎前弯、胸椎後弯、頭部前方位になり姿勢が乱れる。姿勢の修正をして健康的なボディラインをつくることができます」(廣川さん)。参加者からは「一回のレッスンでお腹の位置が高くなった」などの感想が寄せられるという。

また、廣川さんによるスイミング「助産師アクア」は、「水の中の心地よさを体感して、体の力を抜く意識を持ってもらうことが目的」。約40分間、温水プールで分娩時の呼吸法や体の使い方を学ぶことで、赤ちゃんが骨盤誘導線に向かうための正しい角度で力めるようになる。参加者は、眠りが深くなったり、便秘やむくみの改善などを体験できているという。

廣川さんによる助産師アクアの紹介

無理をしない範囲での適切な運動は、妊婦の健康維持と疾患予防に効果的で、安全な分娩の一助にもなりそうだ。

「最高の一本」のためサーフィンは我慢

とはいえ、サーフィンに情熱を注いできた女性にとっては、妊娠中、「やっぱりサーフィンしたい!」と思うかもしれない。そして、パートナーの妊娠によって、サーフィンする時間が減ったと不満を抱く男性もいるかもしれない。そんな方々に向けて、前述の松浦医師からのメッセージを届けよう。

「サーフィンってできない時ほどしたくなる中毒性がありますよね。とてもよくわかります。なかなか波に乗れない時の苛立ち、悔しさ。いい波に乗れた時の喜び、爽快感も最高です。自分ではコントロールできないからこそ、そこで生まれる自然との対話が経験したことのない幸せを感じさせてくれるものです。

実は、妊娠・出産も同じです。その後にやってくる子育ても同じです。思い通りにいかない中でも、環境に合わせて心と体を調整するサーフィンの経験が生きてくるでしょう。波乗りはいつものようにできなくなっても、あなたに待っているのは一人の命との新しい旅路です。いつか一緒にサーフィンができた時、『ママ!パパ!波に乗れたよ!立てたよ!』。その笑顔を見た時、サーフィンできなかった苛立ちなんて一気に吹き飛んでしまうことでしょう。これまで経験したことのない最高の一本が待っている。かけがえのない経験が待っている。ストレスも多い妊娠期ですが、ママとパパ、力を合わせて乗り越えましょう」

サーファー、医師としての視点で語ってくれた松浦医師(東京西徳洲会病院のウェブサイト)

(沢田千秋)

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