Photo by peter "joli" wilson

「ナザレ・挑む勇気と逃げる勇気」 – F+

F+(エフプラス)

さて、カレンダー解説も半ばに来ました。6月のフィリッペのあとはちょうどセンターページ。
いつもこのセンターページはどうしようかな、と迷いどころで、時に入りきれなかったいいショットをコラージュしたり、テーマを決めて選んだり、いろいろなんだけど、ここの所ナザレ関連の写真を使っていて、まぁ、もうメディアというメディアがなく、ナザレの写真や動画もネットで見るだけかなぁ、と思うので、まずはナザレモノを探すことにしている。なんてったってあのビッグウエイブは視覚的には強烈だし。
で、カメラマンとして長い付き合いのジョリさんのアーカイブをのぞいてみると、2025年2月24日のナザレのコレクションがあって、それを眺めていた時に、この写真に出くわした。
衝撃……ですよね? 最初に思ったのはこれ生きてるんだろうか? だ。でもナザレで死亡事故のニュースは入っていないし、重篤な事故の報道もない。したがってこれ、ふたりとも生きてたなら今回のセンターはこれだな、と即決した。
こうしてカレンダーに載ってるということはふたりとも無事だったので、ご安心を。

前で波に飛び込んでいるのがジェットドライバーのデビッド・ランゲル。後ろでレスキューボードにつかまっているのがサーファーのウィル・サンタナ。正しくはちょっと変わったスペルでwillyam santanaウイルヤム・サンタナ。ふたりともブラジル人。
事件が起きたのは2025年の2月24日。ちょうどスウェルが上がり始めているときで、その日初めての35-40フィートのセットの波にウィルがテイクオフしたものの、うまくラインが取れなくてバンプに引っかかりワイプアウト。ウイルはもろに波に飲み込まれて長いこと浮いてこれずにいた。
その一部始終を見ていたダニエルは、ウイルがとても危険な場所でワイプアウトしたので早くピックアップしなくてはと思い夢中でウイルを探した。しばらくするとウイルが水面に飛び出てきたので捕まえたが、ウイルを探すのに夢中になりすぎていて、自分たちの背後に次の波が迫っていることに気が付かなかった。振り返って気づいたときにはすでにその波に自分たちは巻き上げられ始めていて、これはジェットで逃げるより飲み込まれたほうがいいと判断したのだという。

ショッキングなこのワイプアウトの映像版

ダニエルがこの写真のように飛び込み、ウィルはその反対側に飛び込み、ふたりともセットにまかれはしたものの、ジェットには当たらずに済んだ。
そう、最悪のケースはジェットと共に波にのまれぐちゃぐちゃになること。波のパワーでジェットと共にたたきつけられれば人間なんてひとたまりもない。できる限りジェットから遠く離れて巻かれるのが最善の策だ。
瞬時にこの決断ができたからこそ二人は助かったわけだ。ジェットを捨てて波にまかれるという判断が命綱だった。この写真を見て、ジェットドライバー先に逃げてるし、とか思ってはいけない。ダニエル、ウイル、ジェットスキーの3つの物体が同時に波にのまれるとき、なるべくバラバラの方向、タイミングで巻かれることが最優先だった。

こんな衝撃的な、生死を分けるコンマ何秒の瞬間にこそ、その冷静な判断は求められる。挑む勇気と逃げる勇気。その両方を兼ね備えていなければナザレを滑ることは許されない。トーインサーフというのはサーファーとジェットドライバーの二人三脚のチーム戦であり、ただの命知らずのチャレンジゲームではない。豊富な知識と経験に基づいた冷静な行動が常にできる者だけに許される、エクストリームスポーツなのだ。

波に巻かれたジェットスキーに固定されていたアクションカメラが映し出していた映像

F+編集長つのだゆき

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