F+(エフプラス)
私はトップアクションから次のボトムターンに入るつなぎの部分につぎはぎのないことが大事だと思うし、そこで減速せずに加速できるサーファーが上手い、と思う。しかしつなぎやワザとワザの間のトリミングとかは少なくともここ数年問題にされていないので、私の好みでしかないわけだけど。
今はレール抜こうがパンピングしようが、クリティカルセクションですごいことやってればそれでいい。だけど、同じすごいことをするにもそれまでのつなぎがスピーディでスムーズなら、よりハイポイントが出てくる。アーリーラウンドで8点出ていたものが、レベルの上がるクオーター、セミになるといきなり7点台で押さえられてしまうようなことをよく見るけど、それは相手との比較になるとつなぎやほかのディテールも見られてしまう、ということだと思う。
レールは入れ続けながら左右の膝の送りで切り替えるより、一度ニュートラル、つまりフラットな状態にして左右を切り替えるほうがラクだし、よく見ていればワンターンの最後のところで一瞬フラットにしてパタッとレールを入れ替えているサーファーはCT選手にも多い。
ターンごとにこういうワンクッションがあって失速してしまうサーファーと、ターンごとに加速していくサーファーの実力の差は大きい、と私は思う。全盛期のケリー・スレーターは、いったいこの人いつどこでレールを抜くんだろう、というぐらい、いつでもオンレールで加速。膝が伸び切ってしまうことがなく、常にもうひとふみ分の余裕があり、スプレーは非常に滑らかなアウトラインだった。

最近はレールを入れるオンレールより、レールを抜くオフレールの動きがもてはやされていて、オフレールの典型であるエアーとかスナップとかそういう動きがよく見られるけど、同じオフレールでも、オンレールのライン上でコントロールのできているオフレールと、ラクして回すのに抜いちゃうオフレールはまるで違うと思う。
このオンレールのライン上でレール抜けちゃってるけどコントロールされている動きは、ジョンジョンのそれが群を抜いているかなと思うけど、ヤゴもそれを手にしていると思う。

例えばエアー中は物理的には完全なオフレールなわけだけど、そこに波があるように飛び、その続きのラインとして着地した瞬間には波側のレールが入っているような動き。着地のあとのロスタイムゼロで、飛んでるスピードを連れたまま次のターンに入っていく。
そういうエアーをツアーに最初にもたらしたのはフィリッペ・トリードとかイタロ・フェレイラとかなんだろうけど、その進化系としての2025年のヤゴ・ドラがある。

さて、一枚の写真をそういう目で分析すれば、誰のサーフィンがすごいのかが自然にわかるし、どういうサーフィンを目指さなくてはならないのかがわかるはずだ。
日本では普通に誰もが、もっと蹴って、もっと蹴って、って言うけど、それ日本特有の大きな間違いだと思う。
英語ではPush the railだ。Kick the railとは決して言わない。キックするのはKick out=プルアウトだけ。むかしむかし、どこかの誰かが「Push」を「蹴る」という日本語に訳したところから、現在の日本特有の、早いけど軽い、面の固いところでは歯が立たない、トップアクションで止まるサーフィンスタイルが成立してしまったんだと思っている。トップは蹴らないで押し込んでほしい。波のパワーと脚力の押し相撲。そして押し込んだら次は手前に引き寄せてレールを入れ替える、波の面をえぐり取る感じだ。ロスタイムゼロ、トップハーフで加速、ボトムターンは引きずらない、今はそれがマストだ。だから強靭な体幹と脚力が必要だし、世界のトップサーファーの下半身、特にケツ筋、裏モモ筋周りのぶっとさと来たら、おいおい、ってぐらいすごいわけだ。
日本のサーフィンを世界レベルにするには、まず「蹴る」をやめることかな、と私は思う。根本的な路線変更(笑)。
さて、かなりマニアックにスプレーについていろいろ掘り下げたけど、ひとつのスポーツでトップを目指そうと思ったら、そのチームの誰かがマニアックに掘り下げて正解を見つけて、正解に向かって突き進まないと大願は成就できない。そこで子供の場合は親の目が大事、ということになる。不正解を正解と見誤って突き進んでしまうと大変なことになる。どういうサーフィンを目指すかで、どういうレベルのサーファーになるかが決まってしまうのだから。