昨年、大きな注目を集めた「滋賀県草津市へのサーフィン用ウェーブプール構想」。全国のサーファーから期待の声が寄せられ、大きな話題となった一方で、具体的な建設については大きな進展がなく「計画はどうなったのか」と不安視する声も少なくなかった。
しかし、実際に計画が頓挫したわけではない。
本プロジェクトは、草津市土地開発公社による公募により「株式会社JPF」が優先交渉権者に選定されたことから始まった。そして今年3月には、建設予定地である烏丸半島で開催されることで知られる「イナズマロック フェス」を主催する西川貴教氏が、地域活性化を見据えて株式会社JPFサーフ執行役員に就任。地元に根ざした事業展開として、音楽イベントとの連携も視野に入った取り組みが進められている
さらに今年7月、株式会社JPFは草津市との協定締結を発表し、同時に烏丸半島の市有地およそ9ヘクタールを5億6000万円余りで取得する契約を締結。まちづくりと一体となったプロジェクトであることを改めて強調するとともに、当初「2026年春の開業を目指す」としていた計画を見直し、新たに「4年後の2029年オープン」を目標に掲げた。
今回、THE SURF NEWSでは草津市に取材を行い、この施設建設が確定に至った経緯や、市としての期待について話を聞いた。
市有地売却の判断に至った背景は?
烏丸半島中央部の民間活用地について、独立行政法人水資源機構が所有しておりましたが、当該地の活用が長らくはかられなかったことから、平成31年に草津市土地開発公社が土地を買い受け、観光集客施設の公募を行いました。
民間事業者を選定する際の基準・条件は?
公募型プロポーザル方式にて事業提案を行っていただき、最も優れた事業提案をされた応募者を優先交渉権者として、株式会社JPF が選定されました。
今回のウェーブプール事業に期待することは?
最大2mの波を人工的に発生させられ、国際大会なども誘致できる一方、浅瀬では初心者やこども達もサーフィンを楽しめるなど、幅広い方々にサーフィンを通して滋賀県草津市を知っていただける機会になると考えています。
市民の反響等があれば教えてください。
直接的な反響はまだ聞いてはいないですが、株式会社JPF サーフの執行役員の西川貴教さんのコメントにもありましたように、「サーフィンは私には関係ない」と思われている方も、着衣泳の体験やライフセーバーの育成、また、波を利用したフレイル予防など、サーフィン以外での多様な使い方もできるため、多くの方に人工サーフィン施設を活用していただきたいです。
今後市はどのように関与・監督していく予定ですか?
今後、施設の着工に向けた開発等に係る手続きが必要になるため、草津市もサポートしながら進めていきます。
土地売却のほかに、市としてのインフラ支援や制度的支援はありますか?
計画地は、景観法等の厳しい規制がかかる場所になりますが、都市計画の制度を活用して、計画されている人工サーフィン施設が建設できるよう、サポートしていきます。
今後、周辺地域等の開発予定や、構想的なものがあれば教えてください。
周辺施設の「道の駅草津」において、国交省が支援する「道の駅」第3ステージに選定されました。(全国10駅の内の1つ、近畿圏では唯一)「まち」と「道の駅」が一体となり、「まちぐるみ」でリニューアルを目指します。
国内外を問わず、ウェーブプールの建設計画には様々な要因でスケジュールが遅れるケースは少なくない。本施設についても当初予定より3年遅れとなる目標の再設定ではあるが、自治体との連携に加えてすでに用地を確保している(予約契約の締結のため)点は大きな前進といえる。株式会社JPFによれば、残る投資家との調整が整えば一気に進展する可能性もあるとのことで、今後の動向に期待がかかる。

共創者募集のクラウドファンディング実施中
なお、株式会社JPFでは、本計画をさらに推進するためのクラウドファンディングを実施中。
支援者は「未来の波を共に描く共創者 = WAVE CREATORS. 」と呼ばれ、プロジェクトの基盤づくりやコミュニティ形成に参加することができる。
集まった支援金は、
・WAVE CREATORS. への謝礼
・人材採用の原資
・コミュニティ運営費用
・AIカメラやフォーム解析ツールなど、サーフィン体験を豊かにする開発費用
などに活用される予定。
詳細は以下URLより。
海がなくても、最高の波はつくれる。― 滋賀に世界最大級ウェーブプールを!
https://camp-fire.jp/projects/865774/view
(THE SURF NEWS編集部)