今秋開催されるISA(世界サーフィン連盟)の世界選手権「World Surfing Games」に向けた代表選考合宿が22日、千葉県鴨川市のマルキポイントで行われ、日本サーフィン連盟(NSA)が指定するショートボードの強化指定選手が集まった。
世界選手権に先立ち、今年9月に開幕するアジア大会では、優勝者に、全競技で最初となる2028年ロス五輪の出場権が与えられることになった。アジア大会の日本代表権を持つのは、男子は世界最高峰のCT(チャンピオンシップ・ツアー)を回る五十嵐カノア。女子は東京五輪銅メダリスト都筑有夢路とシニア入りしたばかりの池田未来。
アジア大会は五十嵐、都筑、池田が代表
まずは、アジア大会でのロス五輪出場枠の獲得が、サーフィン日本代表「波乗りジャパン」の至上命題。来日中の五十嵐は選考会には参加しなかったが、合宿会場を訪れてNSA幹部らと今後のスケジュールなどについて打ち合わせをしたり、旧知の選手らと交流した。

今秋の世界選手権の日本代表は男女ともに3枠ずつ。男子は、五十嵐とCT選手のコナー・柄沢・オレアリー、女子は都筑と中塩佳那がすでに代表権を持っており、残る1枠が選考会の対象となった。
NSAは今回の選考から、初めて点数制を導入した。選考会でのパフォーマンス、CSやQSの実績、選手としての意識などを100点満点で採点し、最高点の選手を代表に選ぶ方針。代表選考の曖昧さを排除し、透明化を図った。
主な点数の内訳は次の通り。
【技術評価】配点/50 ※選考会で採点
| スピード/パワー | 0~10 |
| バリエーション | 0~10 |
| タクティクス(戦略) | 0~15 |
| メイク率 | 0~15 |
【実績評価】配点/40 ※実績は前シーズンで高い方のスコアのみ採用
| CT選手 | 30 |
| CS男子20位、女子12位以内 | 23 |
| CS男子30位、女子20位以内 | 20 |
| WSG4位以内 | 20 |
| WSG8位以内 | 18 |
| CS選手 | 18 |
| QSアジア5位以内 | 15 |
| JPSA2位以内 | 10 |
| 強化指定選手 | 5 |
| 開催地適正、経験 | 1~5 |
| 大波での経験、技術 | 1~5 |
【態度、意欲評価】配点/10
| コンプライアンス意識など | 0~5 |
| 代表としての適応性、協調性など | 0~5 |
世界選手権の男女残り1枠巡る争い



世界選手権の代表選考にあたり、すでに代表権を持つ五十嵐、オレアリーを除くと、男子のスコアは、CS21位の大原洋人、同28位の西慶司郎が20点でトップ。次点に安室丈、伊東李安琉、岩見天獅、加藤翔平が続く。
女子は、代表権者の都筑、中塩を除くと、池田、佐藤李、都築虹帆、野中美波、松岡亜音が18点で並ぶ。
選考の採点のうち、配点50点で最も大きなウエイトを占めるのが選考会という位置づけだが、この日のマルキはオンショア小波の難しいコンディション。当初は選手それぞれが3ラウンドこなす予定だったが、時間経過とともに風で波がつぶされ、2ラウンドで終了した。ただ、池田、松岡、都築、野中が揃ったヒートだけは、同じメンバーで3ラウンド目を行うようコーチ陣から指示が入り、代表争いの熾烈さが際立った。


選考会終了後、スコア制を巡る各選手の意見や代表への意気込みなどのコメントは以下の通り。
稲葉玲王「パリ五輪以降ふわふわ」

「今日はできることはやったかな。ハワイから戻って、いきなりこの波だったので、なかなか難しかったですけど、なんとか乗れたんでよかったです。(スコア制は)今日の朝、知った。CSは去年出てないんで、どうしたらいいんだろうっていうのが一番。もうちょい早い発表があれば、準備できたのかな。

昨シーズン前半は、パリ五輪以降、自分の中で燃え尽きたわけじゃないけど、情熱がそこまで入らず、もがいたというか、初めての経験。ふわふわした状態だった。後半は全部いったんリセットして一つ一つの試合に集中して結果を残せた。五輪代表は、今回の選考でちょっとイメージが変わっちゃったから、どう目指したらいいのか。でも、応援してくれる人もいるし、出たい気持ちはあるので、しっかり向かっていこうと思います。カノアがアジア大会で優勝してくれれば枠が増えるので、応援したい。『頼むぞ』って感じです」
西慶司郎「中東情勢で欧州遠征も大変」

「この波のサイズ、コンディションでも、いつも通り、自分のパフォーマンスを発揮できた。対応力をアピールできたかなと思います。(代表のスコア制は)すごく見やすくなった。不透明な部分を明確にしてもらえたので、どこで頑張ればいいか、しっかり見えてきた。昨シーズンはCSにフル参戦し、世界の壁はすごく高かったけど、自分が得意とする波の時には、しっかりリザルト出せてるんで、胸を張って来シーズンもCS回るチャンスがあれば、さらに上を目指したい。

今年CSを回れるかはまだわからない。昨シーズンCS20位以内を目標に回ったので、そこに残れなかったのは自分の実力不足。スケジュールを組むのも大変だし、(中東情勢のために)ヨーロッパに行くルートも変わってくると思う。ドバイやアブダビ経由がキャンセルになっているので、今シーズンは世界を転戦するには大変になってくるかなと思います。どうしようもないですね、選手には。ははは」
大原洋人「CS最終戦前にぎっくり腰」

「今日はアピールできた点はなかったですね。オーストラリアのCS最終戦の4日前にぎっくり腰みたいなケガをしちゃって。試合はぎりぎりで出たけど、そっからサーフィンせず、今日が3回目かな。痛みがなくなるまでサーフィンしないようにして、今はだいぶ痛みはなくなった。スコア制では、慶司郎と同じかな。今日の総評で落とされたら、それでしゃーないし。これ以上何かできたわけではないので。昨シーズンは、結果も踏まえて、自分の過ごし方、準備の仕方が完璧ではなかった。もしCTに入れてても1年で落ちてたのかなとか。そういうことに気づけた。カノアとかコナーみたいに当たり前のように毎年CTに残って、トップ5狙いますとか、そういうレベルの人たちと、生活スタイルや取り組み方含めて差があるのかなって。技術云々より、1日1日彼らの方が取り組んでるのかもなとか。今のままじゃ、こんなもんだよなという現実を突きつけられた年だった。生活の一つ一つを見直す必要があるのかなとシーズン終えて思いました」
都筑有夢路「アジア大会自信あります」

「アジア大会はここでオリンピック行きを決めるって思って臨みたい。ISAは自分の経験にもしたいし、今後の大会で日本の子たちがいいスポットやシードになれるよう、団体優勝を目指したいし、自分も優勝してチームジャパンに貢献したい。オリンピック行きを早く決めて気持ち的にも安定したい。自信はあります。アジアのライバル?いないです(笑)。CT入りがかかった昨シーズンのCS最終戦は、自分のサーフィンを見てもらってみんなが感動したりワクワクしたりする気持ちになってほしいというのが一番にあったので、プレッシャーもそんなに大きくなくて。どれだけ自分に集中できるかをモチベーションにやっていた。CT入りできずもちろん悔しいですが、その悔しさが次に進む力になるので、来シーズンに向けて燃やしていきたい。スコア制は、ああいうのを提示してくれると選手も何をやればいいか明確に分かるし、それに向けて練習できるので、サーフィン界全体が引き上がるいいきっかけになるんじゃないかな」
池田未来「ロス五輪のチャンスにワクワク」

「小さいころから、ロス、ブリスベンのオリンピックで金メダルを取ることを目標にしていて、そのチャンスを掴めるかもしれないアジア大会ということで、本当にすごく、今からワクワクしています。もちろん優勝してオリンピックに出たいんですけど、あまり考え過ぎちゃうとダメかなって思うので、みなさんに自分のサーフィンを見せることだけにフォーカスしたいなと思っています。初めてのシニア代表。体力が一番あるので、最初にプライオリティをゲットできたりとか、体力は自信を持ってあると言えます。昨シーズンCS回ってみて、QSとは緊張感がやっぱ違うなって。一人ひとりのパワー、圧、オーラっていうか、そういうのが結構重たく感じる時もあります、試合で。最初のCSの試合は緊張し過ぎて、2、3日前から背中がずっと痛くて。試合の時も緊張し過ぎて、たぶん酸素がうまく渡ってなくて手足が痺れたりとか。でも最近はそれがだんだんなくなってきた」
中塩佳那「アジア王者としてCSに挑む」

「去年初めてシニアでWSGに出て、自分の実力が足りなかったのと、いつもCS回ってる選手以外の他の国の選手もいて、もっとコーチと戦略、戦術についてコミュニケーション取ってやったら勝てたヒートだったなっていうのが多くて。今年はもっと自分に自信をもって臨みたいなと思います。初のCS参戦は、ワイルドカードもらったのが3月後半で時間がなくて、ボードや心の準備もしきれてないまま臨んだ1年だった。去年のWSGからJSのボードで調子が良くて、自分のサーフィンも変わった。技術もバリエーションも増やしていきたい。昨シーズンはCSで失敗した部分を改善してQSに臨めていたので、いい感じにハマって、アジアチャンピオンという結果が出せたのかなと思います。今年はアジアチャンピオンとしてCSを回るので、気持ち的に『私いける』と思って挑めるのはすごく大きいな」
田中コーチ、五輪枠一番乗りは「業界にプラス」

田中樹コーチの総評は以下の通り。
―動きがよかった選手は
「やはりCSを回る海外組は、疲れもあると思いますけど、試合をつい最近までやってたんで、今日もよく動いてたかなというのは感じました」
―池田、松岡、都築、野中のヒートは2回やった
「普段、あんな4人のマッチアップなんてないんで。コーチ陣としては、いつもCSを回ってるこのメンバーで、どうやったら勝ち切ることができるか、本戦も一発勝負なので、こういうメンバー、悪いコンディションの波でもどう勝ち切るかっていう、タクティクス的な部分や安定感があるライディングをどれだけできるかを見たくて2回やりました」
―スコア制では、今日の評価が重要になる
「今回はこの波ですし、本戦とかけ離れてる部分が多々あるかもしれないですけど、基本的な動き、ヒートの動きは見ればだいたい分かるし。僕も河村(海沙コーチ)もCS回ってるんで、そこも含めながら、テクニカルも考慮して。ここだけのサーフィンだと、今日調子悪かった選手もいるので、1年間通して見て、ここでの試合でどれだけできるかを含めて採点します」
―ISAの男女残り1枠はもう決まったのか
「これから強化委員や審査する人が何人かいるので、いろいろな項目を揉んで、発表できるタイミングでする。僕らはスコアシートを作って渡します」
―アジア大会優勝が即オリンピック1枠になる
「日本の五十嵐、都筑、池田にはチャンスはすごくある。五十嵐も今日来て、どういうタイミングで会場の田原に来て練習するかとかスケジュール調整もした。都筑、池田も海外遠征の中でスケジュール調整していきたい。枠が取れたら、僕が知ってる情報だと、ロス五輪の全競技の中で最初に代表が決まる競技になるんじゃないかな。そういうことはかなりサーフィン業界にプラスなことなので、ぜひ意欲的に取れるよう準備はしていきたい」



(沢田千秋)






















