CT枠半減?2028ロスオリンピック予選の新制度が噂に
2028年ロサンゼルス五輪に向け、サーフィン界では水面下での動きが海外のSNS上で噂されている。それは、チャンピオンシップツアー(CT)を統括するWorld Surf League(WSL)と、オリンピック競技としてのサーフィンを統括するInternational Surfing Association(ISA)の間で、オリンピック出場枠に関する新たな制度変更が検討されているというものだ。
現時点で公式な確定発表はない。しかしその内容が事実であれば、サーフィン競技の構造そのものを揺るがす大きな転換点になる可能性がある。

これまでの2020年東京・2024年パリ大会では、WSLチャンピオンシップツアー(CT)の前年ランキングがオリンピック出場枠の重要な指標だった。
しかし噂される新制度では、CT経由の出場枠が男子10枠・女子8枠(各国最大2名)から半減し、男女各5枠に縮小、さらに各国最大1名までに制限される見込みだ。加えて、年間を通じたパフォーマンスがオリンピック出場への王道ルートだったが、今回さらに対象は2028年シーズン最初の4戦のみになる可能性があるという。
もしこの案が採用されれば、シーズン全体での安定した成績よりも、開幕直前の短期決戦での決定力が重視されることになる。ギリギリまで出場選手がわからないため、観戦者や選手にとっては緊張感が高まる。しかし、わずか4戦で五輪への命運が左右される構造では、波のコンディションや会場の選定も重要なポイントとなる。

ISA主導へ、過去大会が示す課題
今後、男女各24名(合計48名)のオリンピック出場枠のうち、最大で男女各19名(全38名)がInternational Surfing Association(ISA)主催大会で争われる可能性がある。また、2027年7月〜8月にペルー・リマで開催予定の「Pan American Games(パンアメリカンゲームス)」についても、これまでと同様に出場枠が配分される見込みだ。
もしこの新案が実現すれば、今年開催されるISA ワールドサーフィンゲームスはこれまで以上に重要な大会になる可能性が高い。制度上、予選システムの策定権限はISAにあり、ISA側は「ロサンゼルス2028に向けた予選案をIOCに提出した」と発表している。ただし、正式承認前の段階であるため、詳細については未公開。また、WSL側も公式的には現時点でコメントをしていない。
2021年にエルサルバドルで開催された“ISA ワールド・サーフィン・ゲームス”では、すでに五輪出場を決めていたCTサーファーのガブリエル・メディナ、イタロ・フェレイラ、フィリッペ・トレドなどを初め、世界トップクラスの選手も次々と途中棄権する事態となった。この背景には、「オリンピック出場権を持つ選手が、他の選手のチャンスを奪わないよう配慮する」という理由があった。

また、2018年12月にはペルーのアロンソ・コレアが人生最大の分岐点に立った。ハワイで開催されるVans World Cup of Surfingで結果を出せば、ペルー人男子初のチャンピオンシップツアー(CT)入りという快挙が見えていた。しかし同時期、母国で行われる2018 Pan American Surf Games(パンアメリカンゲームス)と日程が完全に重なっていた。
PASA側は彼の帰国を待つ姿勢を示したものの、期限に間に合わなければ失格という状況。背景にはオリンピック予選制度があった。パンアメリカ地域の選手にとって、五輪出場への最も現実的なルートはパンアメリカンゲームズで上位に入ること。そしてその出場条件は、PASAへの参加そのものだったのである。このときコレアには、「CTか、五輪か」という究極の選択が突きつけられた。
アロンソはペルーへ戻り、PASAに出場する道を選んだ。理由は、五輪への現実的なルートが大会出場にあったこと、ペルー政府から“オリンピックに最も近い選手”として資金面の支援を受けていたこと、そしてPASAを欠場すれば五輪の可能性も政府支援も同時に失う危険があったからだ。
彼にとってそれは単なる「CTか五輪か」ではなく、「五輪への道か、支援と将来か」という問題だった。「オリンピックは4年に1度しかない。でもCTに入るチャンスはまた来る」と彼は言う。
結果、アロンソは2020年東京オリンピックへの出場は逃したものの、2023年のISA ワールドサーフィンゲームスで活躍。ペルーチームを優勝へと導き、2024年パリオリンピックの出場権を獲得した。

オリンピックサーフィンの方向性を問う新議案
ブラジル出身で、プロサーファーの選手団体である World Professional Surfers(WPS) の最高執行責任者(COO)のクリスチャン・ベゼラはこのように主張する。
”私はアスリートのことを一番に考えている。
今回の状況で最も不利益を受けるのは、CTの選手たちだ。これまで1年を通して続くプラットフォーム(チャンピオンシップツアー)があり、全員に12のイベントが用意されていた。さまざまなタイプの波、あらゆるジャッジ基準、30分ヒートという形式は、オリンピックのフォーマットとも非常に親和性が高い環境だった。
しかし、そのプラットフォームを活用する代わりに、選手たちはISAワールドサーフィンゲームズに頼らなければならなくなる。まず、ISAに出場するには自国の連盟による選考や基準を満たさなければならず、そもそも出場できるかどうかも分からない。
さらに、仮に出場できたとしても、20分ヒートで4人同時に戦う形式が9日間続く長丁場となる。すでに過密なCTカレンダーをこなしている中で、そのスケジュールをどう管理するのかという問題もある。選手たちはただでさえ多くの移動やロジスティクスに対応しており、状況はさらに複雑になっていくだろう。
両者(ISA側とWSL側)が歩み寄り、この状況をもう少しシンプルで負担の少ないものにできる合意点が見つかることを願っている。ISAの大会は、世界中のサーファーが集まる本当に素晴らしいイベントだ。しかし、オリンピックを目指す選手たちの可能性という観点から見ると、この新案を素直に祝福することはできない。”
また、2018年〜2023年までCTでも活躍し、現在CSランキング22位につけるブラジル出身のマイケル・ロドリゲスも、「よく言った。(ISA側)はアスリートのことなんて考えていない」とコメントしている。
今回の制度変更が実現すれば、競技サーフィンは新たな段階に突入する。
メリットとしては、ISA大会の価値向上や、国別対抗戦の緊張感が増すことが挙げられる。五輪の理念である“世界的な普遍性”に沿った枠配分により、より多くの国や地域にチャンスが広がる可能性もある。
最大のリスクとして挙げられるのは、オリンピックの競技レベルが低下する可能性だ。チャンピオンシップツアー(CT)の選手たちは、世界各地の多様な波での戦い、さまざまな大会形式やジャッジ基準への対応、そして厳しいクオリファイのプロセスを経験してきたトップアスリートである。その選手たちがオリンピックに出場する可能性が低くなるとすれば、大会全体のクオリティが問われることになる。
また、大会日程の重複を避けるためのスケジュール調整は、選手のキャリアや将来設計に直結する重要な課題だ。過密なツアーカレンダーの中で、どの大会に照準を合わせるのかという判断は、競技成績のみならずスポンサー契約やランキングにも影響を及ぼす。
今後は、International Surfing Association(ISA)、World Surf League(WSL)、International Olympic Committee/国際オリンピック委員会(IOC)の緊密な連携がカギとなる。
ロサンゼルス2028大会への道は、これまで以上に挑戦的かつ刺激的なものになるだろう。オリンピックサーフィンの方向性を左右するこの議案から、今後も目が離せない。














