( I JUST GOT SPPONSORED BY RED BULL) Image:Nathan Florence(YouTube)

ネイザン・フローレンス〜ビッグウェーブの先にある選択 〜

サーフィン界で仲良しとして知られるフローレンス3兄弟を知らない人はいないだろう。

3度の世界チャンピオンに輝いたジョン・ジョン・フローレンス、ビッグウェーブサーフィンで名を馳せるネイザン・フローレンス、そしてイヴァン・フローレンス。

ハワイ・ノースショアを代表するサーファーたちだ。

その中でもネイザン・フローレンスは、誰も足を踏み入れたことのない未開のポイントや「最大級のうねり」が入ると聞けば、世界のどこへでも向かうフリービッグウェーブサーファーとして知られている。

船旅の現実

ネイザンがSTABのインタビュー “Nate Florence On The Pipeline Board Matrix, His Superhuman Status & The TRUE About The Boats”で語ることはつまり、「時間とお金をかけて船で未知の波を追い続けること」と、「確実に良い波が立つ場所を目指すこと」
そのどちらが本当に自分にとって価値があるのかという問いだ。「ジョン、ごめん」と冗談交じりに漏らす一言からは、世界チャンピオンの兄とは異なる価値観を持つネイザンらしさが垣間見える。

最近の動きを尋ねると、ネイザンは兄弟とともに南太平洋に船を置き、そこからシドニー、ホノルルを経由してヨーロッパへと移動した。
しかし、到着したポイントでは波に恵まれず、「時間とお金を無駄にした」と悔しさをにじませたという。ビッグウェーブを追い続ける旅は、常に成功と隣り合わせではない。

「船での旅はロマンがある」と思われがちだが、サーフトリップの現実は決して甘くない。

移動距離や停泊できる場所は限られ、天候にも大きく左右される。燃料代、税金、港湾使用料、メンテナンス費など維持費は高額で、国によっては「食料をすべて廃棄しなければならない」ケースもあるという。ネイザンはこれを「完全な戦略ゲーム」と表現する。

結局のところ、どんな波を「良い波」と定義するのか。

ネイザンの言葉からは、サーフィンの本質的な問いが浮かび上がる。「良い波」とは必ずしも完璧な波だけを指すのではない。3〜4メートルの波を求め続ける人もいれば、小さな波でも大切な人たちと、誰もいない静かな海で冒険を共有する時間に価値を見出す人もいる。価値観は人それぞれだ。

(VELA Episode 4 of 4)
Image: John John Florence(YouTube)

レッドブル施設で挑む身体改革

そんなネイトが旅の最終目的地として向かったのが、オーストリアにあるレッドブル・アスリート・パフォーマンス・センターだ。プロアスリートにとって健康管理とフィジカルの維持は不可欠。この施設では1週間ほど、徹底したメディカルチェックやトレーニングが行われた。

VO₂max(最大酸素摂取量)の測定では55という数値を記録。ウォータースポーツ選手としては非常に優秀なスコアだが、ネイト本人は満足していない。「フランスの選手には数値が87を超える人もいる。それに近づかなければ」と、さらなる向上を目指す姿勢を見せた。

REDBULL ATHLETE PERFORMANCE CENTER
https://www.redbullperformance.com/en/approach

同センターでは血液検査や栄養状態の分析、体幹や柔軟性の測定に加え、過去の怪我についても詳細にチェックされた。ネイザンは昨年、後頭部から2度激しく転倒し、首を強打している。骨折を疑うほどの衝撃だったことを伝えると、即座にMRI検査が行われたという。

その後も検査結果をもとに、筋力トレーニングや持久力向上のプログラム、栄養管理の指導が徹底して行われた。分析の結果、背中や大腿四頭筋は非常に強い一方で、体幹とハムストリングには弱さがあることが判明。「これから取り組むべき課題がたくさん見つかった」と、ネイザンは前向きに語っている。

パイプラインで貫くネイザンのスタイル

最後に、ノースショアでいつからインサイドに座らず、セカンドリーフからのロールインを選ぶようになったのかと問われると、その理由は明確だった。次世代のサーファーたちに、キャリアを前進させるための波を譲りたいという思いがあるからだ。ビッグウェーブサーファーでありローカルと聞くと欲張りなイメージを持たれがちだが、そこにはネイザンの思いやりのある一面が見える。

子どもの頃から兄弟とともにサーフィン漬けの毎日を送ってきたネイザン。人生で最も大きな波に乗ったときは6’9〜6’10のボードを使用していたという。しかし現在では、どんなにサイズのある日でも最大で6’8。世界最高峰のサーファーが集うパイプラインはローカル色が強く、常に高い緊張感に包まれている。それでもネイザンは「自分のスタイルを失わず、セッションでは常にアクティブでいたい」と語る。

波を追い、価値観を問い続けるネイザン・フローレンス。その姿は、サーフィンというカルチャーの奥深さを改めて映し出している。

(SURFING THE BACKDOOR SHOOTOUT, THE HEATS BARRELS AND BEATDOWNS!)
Image:Nathan Florence(YouTube)

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