WSLとISA、それぞれのフィールドで活躍するサーフィンカメラマンたち。その中でISAサイドのベテラン、ショーン・エヴァンスがYouTubeチャンネルを開設し、コンテストの裏側を公開している。
機材選びの極意から、過酷な水中撮影の裏技、そしてプロフェッショナルとしての心構えまで。トップフォトグラファーが明かす「サーフィン撮影のリアル」とは?
機材選びの結論:スピードか、画素数か?

Image: Sean Evans(YouTube)
動画の舞台は、2025年にエルサルバドルで開催されたWSGこと『ISA World Surfing Games』
ショーンはSonyのフラッグシップ機「α1 II」をメインに据えつつ、大会用に貸与された「α9 III」もテスト導入した。注目すべきは、α9 IIIが誇る「秒間120コマ」という驚異的な連写性能だ。
「まるで映画のようだ」とショーンはその滑らかさを絶賛しつつも、サーフィン撮影における現実的な結論を導き出した。
「正直なところ、サーフィン撮影に秒間120コマは必ずしも必要ではないかもしれない。個人的には秒間30コマがスイートスポットだ。それよりも、エルサルバドルのような遠距離のポイントでは、5000万画素の『α1 II』が持つトリミング耐性が圧倒的なアドバンテージになる」
200-600mmのレンズを使用しているが、クロップ(切り出し)を行えば、十分なクオリティを保ったまま実質1200mm相当の超望遠撮影が可能になる。この「距離を埋める力」こそが、コンテスト撮影の勝敗を分ける鍵だと彼は語る。

水中撮影の現場術:DIY精神と「岩場の歩き方」

水中撮影は、体力と機材の戦いだ。
ショーンが愛用しているのは、15年モノのウォーターハウジング。「α1 II」に70-200mm F2.8をセットアップして使用している。
「まだそんなものを使っているの?」と笑われることもあると言うが、そこには彼なりのDIY精神が詰まっている。

Image: Sean Evans(YouTube)
「動画撮影用のボタンをカスタム増設して、ズームギアも回せるように改造してあるんだ。自分が撮れていると確信しているから、再生確認画面なんて必要ないよ」
また、岩場からのエントリーに関して、実用的なアドバイスも。
「岩の上を歩くコツ? フィンを履いたまま歩くことだ。これが意外と完璧に機能するんだ」
華やかな写真の裏側には、こうした泥臭い工夫と、伝説の水中カメラマンである故ラリー・ヘインズ氏から受け継いだ「ドライバーとの連携」のノウハウが息づいている。

Image: Sean Evans(YouTube)
プロの流儀:膨大な編集作業と「慢心」への戒め

Photo: ISA/Sean Evans
カメラマンの仕事はシャッターを切って終わりではない。
海から上がれば、即座に膨大なデータの選別とリネーム作業が待っている。ウェブマスターに納品するため、すべてのファイル名を規定通りに書き換える地道な作業だ。
「小学4年生でタイピングをマスターしておいてよかったよ」と彼は笑う。
しかし、どんなベテランでも失敗はある。ショーンは動画の中で、自身の「慢心」が招いたミスを告白している。
「調子に乗ってポジショニングを過信したら、すぐにしっぺ返しを食らったよ。デーンと対戦相手の重要なプライオリティ争いの瞬間、レンズに水滴がついたのか、ピントを外してしまったのか、完全に撮り逃したんだ。謙虚さを忘れてはいけないね」
トッププロでさえ、自然相手の撮影では常に学びがあるのだ。
機材よりも大切なこと
大会最終日、チーム一丸となって撮影を終えたショーンは、これからのフォトグラファーたちに向けてこう締めくくった。
「高価なカメラや機材がすべてじゃない。本当に大切なのはフォトグラファー自身であり、その機材をどう使いこなすかを知り尽くしていることだ」
デイン・ヘンリーやハニレ・ゴンサレス・エチャバリといった新王者が誕生したこの大会。その劇的な瞬間は、ショーンのような情熱ある裏方たちの「チームワーク」によって世界中に届けられている。
(黒本人志)














