メンズ24名、ウィメンズ12名に絞られたCT後半戦はカリフォルニア、ブラジル、南アフリカ、タヒチの4戦。
トップ5がフィジーでの「WSL Finals」でワールドタイトルを争うことになる。
選手が絞られたことで時間短縮され、3日間での終了はカリフォルニア戦と同じだったが、ブラジル戦は1スウェル毎に飛び飛びで進行してウェイティングピリオド最終日の6月29日に終了した。
ファイナルデイは公式3-4ftレンジと公表。しかし、実際は日本サイズだとダブルオーバーはあった。
それでも綺麗なフェイスを保っていたパーフェクトなビーチブレイクのイタウナビーチに世界一熱狂的なファンが集い、熱狂と興奮で会場はヒートアップしていた。





2016年以来のアメリカン人タイトル

メンズサイドは2016年にハワイのジョン・ジョン・フローレンスが優勝して以来、2017年のエイドリアーノ・デ・ソウザから始まり、フィリッペ、ヤゴ、イタロとブラジリアンが連勝という自国選手が強過ぎる、ある意味異例のイベントだった。
今年は初日、2日目こそブラジリアン・ストームが巻き起こっていたが、ファイナルデイはイタロ・フェレイラがオージーのイーサン・ユーイングに敗れ、ミゲル・プーポがアメリカのコール・ハウシュマンドの勢いに抑えられてしまった。

ファイナルはコールと同郷のグリフィン・コラピント。
サンクレメンテの親友同士の勝負になった。
また、このカードは2024年のベルズ戦のファイナルと同じでその時はコールが優勝していた。
序盤はコールがフロントサイドとなるレフトでのパワフルな3ターン、バリエーションが評価されて9.40とイベントのハイエストスコアを出してリード。
中盤、グリフィンはバックハンドで長いボトムターンからクローズセクションに全てを込めたターンをメイク。1ターンで8.23を出して応酬するが、覚醒していたコールは後半に再びフロントサイドで素晴らしいライディングを重ね、7.17、7.50とバックアップスコアを伸ばし、トータル16.90で圧勝。
特に7.50のライドはスタイリッシュなスナップから全身全霊を込めて後ろ足をプッシュしたレイバック気味のフィニッシュと思わずMCが唸る迫力。スコア以上にコールの存在感を示した1本だった。
一方、グリフィンの方はエアリアルのメイク率が低く、逆転を狙ってのフルローテーションも決まらずと安定感がなかった。

PHOTO: © WSL/Camila Othon
「正直、現実とは思えない。言葉が出ないよ。長くて楽しい1年だったし、この場所が大好きさ。本当に全てが最高なんだ。自分の好きなことをやってるだけなのに、こんなに素晴らしいなんて。ファンも凄かった。応援してくれる人も、そうじゃない人も、世界で一番情熱的な人たちだよね。それにエネルギーをもらってる。まるでスタジアムで試合してるみたいだった。ビーチを見渡しても、隙間がないほど人がいる。まさに僕らが夢見て、目指してきた舞台。これ以上のことは想像できないよ」
約10年に渡るブラジル人の連勝記録に終止符を打った24歳のコールは、キャリア2度目の優勝で12位に浮上。
前半戦はミッドシーズンカットの危険もあったが、今はファイナル5入りを目指せるポジションまで挽回している。
「グリフィンとまたファイナルを戦えるなんて、夢のようだよ。ツアーでのファイナルは2回ともグリフィンとの対戦だったんだ。親友とのサーフィンは、エクスプレッション・セッションみたいなものさ。“何する?”って感じで海に出て、ただ楽しんでるだけだったよ」
ファイナル5に王手をかけたグリフィン

シーズン序盤の不調が嘘のようにベルズ戦からSF以上をメイクし続けているグリフィン。
ブラジルでは、カレントリーダーのジョーディ・スミス(RSA)、イーサン・ユーイング(AUS)と上位陣を倒してのファイナル進出。
勝利者インタビューで得意のフリースタイルラップ(たまにやる)まで披露するほど調子が良かった。
ランキングもじわじわと上がり、現在6位。
ワールドタイトルを争うファイナル5入りに王手をかけた。
「勝利を手にした親友のコール・ハウシュマンドにおめでとうを伝えたい。今週は“人生を信じること”がテーマだったと思う。結果や未来を気にせず、海に全てを委ねること。結局のところ、どうなるかなんて本当に分からないんだ。だから、毎日ベストを尽くして、良い人間でいようとするだけでいい。あとは自然と道が開けるものだからね」
モリーがイエロージャージを獲得

メンズサイドよりも荒れた試合になった今年のウィメンズサイド。
トップ5の内、4名がElimination Roundで敗れるという波乱の中、唯一快進撃を続けたモリー・ピックラム(AUS)がルアーナ・シルヴァ(BRA)とファイナルを争い、今シーズン初優勝。
ランキングでもガブリエラ・ブライアン(HAW)を抜いて遂にトップに立ち、次のイベントではイエロージャージを着用する。
「今年はずっと自分のベストを尽くすために本気で取り組んできたの。実は、ヒート前にはちょっと感情的になりそうだった。“また勝つチャンスがもらえる”って思ったら込み上げてきたわ。リオで勝つのはずっと夢だった。私はエネルギッシュな性格だから、ブラジルの熱気も大好き。今年この場所で勝てたことは、本当に意味のあることよ。支えてくれた皆さん、ありがとう。きっと地元ではみんな夜中に起きて観てくれてたんじゃないかな。沢山の愛を感じたわ。この瞬間を一番愛してくれて、支えてくれた人たちと分かち合いたかったから、ビーチに戻った瞬間に家族に電話したの。本当に心から感謝している」



22歳のモリーにとって今回の優勝はCT通算3勝目。
2023年、2024年と連覇したサンセットビーチ以外の初のタイトルとなる。
2025年は9戦中8戦でQF以上、その内の3回でファイナル進出を安定感を誇っている。
ポイント差から考えてファイナル5入りはほぼ確実となり、あとは残り2戦で有利なシードを維持することが初のワールドタイトルに向けての重要な鍵となる。
ルアーナとのファイナルでは開始直後にバックサイドの1ターンで6.83を出し、すぐに同じようなライディングで5.67を重ね、波とのタイミングが合わないルアーナをコンビネーションスコアに追い込む。
中盤にはフロントサイドでカービング、フィニッシュを綺麗に決めて8.17とハイスコアを伸ばした。
ルアーナは一つ一つのターンは良いものの、上手くまとめられず、ミスが多かったためにスコアを出せなかった。
「ルアーナは間違いなく地元のヒーローだし、そう呼ばれるにふさわしい選手よ。本当に素晴らしいサーフィンをしていたし、競争心も強くて、戦う力を持った選手。だから最後までずっと怖かった。自分も良いスコアを出していたけど、安心はできなかったわ。そんな彼女に勝てて本当に嬉しい」
2007年のシルヴァナ・リマ以来のファイナル

21歳で今シーズン急成長を遂げているルアーナ・シルバは、ベルズ戦に続いてキャリア2度目のファイナル進出。これはブラジル人選手としては2007年のシルヴァナ・リマ以来の快挙であり、しかもファイナルまでの道のりでは、ケイトリン・シマーズ(USA)、タイラー・ライト(AUS)、キャロライン・マークス(USA)という歴代ワールドチャンピオンを次々と破る快進撃を見せた。
「本当に素晴らしい1年よ。ブラジルでのこの1週間は特別な時間だった。家族みんなが応援に来てくれて、南ブラジルからは叔母まで駆けつけてくれたの。久しぶりに会えて本当に嬉しかった。ビーチにいた全ての皆さんにも心から感謝したい。信じられないくらいのサポートで、それが私を最後まで突き動かしてくれたの」


PHOTO: © WSL/Camila Othon
レギュラーシーズンの残り2戦は南アフリカとタヒチ。
7月11日〜20日に第10戦『Corona Cero Open J-Bay』が世界屈指のライトのポイントブレイク「J-Bay」で開催される。
『VIVO Rio Pro』結果
1位 コール・ハウシュマンド(USA)
2位 グリフィン・コラピント(USA)
3位 ミゲル・プーポ(BRA)、イーサン・ユーイング(AUS)
5位 ヤゴ・ドラ(BRA)、ジェイク・マーシャル(USA)、ジョーディ・スミス(RSA)、イタロ・フェレイラ(BRA)
ウィメンズ
1位 モリー・ピックラム(AUS)
2位 ルアーナ・シルヴァ(BRA)
3位 キャロライン・マークス(USA)、エリン・ブルックス(CAN)
5位 タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)、タイラー・ライト(AUS)、アレナ・ロドリゲス(PER)、レイキー・ピーターソン(USA)


VIVO Rio Pro Presented by Corona Cero Women’s Final Results:
1 – Molly Picklum (AUS) 15.00
2 – Luana Silva (BRA) 9.23
VIVO Rio Pro Presented by Corona Cero Men’s Final Results:
1 – Cole Houshmand (USA) 16.90
2 – Griffin Colapinto (USA) 14.40
VIVO Rio Pro Presented by Corona Cero Women’s Semifinal Results:
HEAT 1: Luana Silva (BRA) 10.43 DEF. Caroline Marks (USA) 6.57
HEAT 2: Molly Picklum (AUS) 13.06 DEF. Erin Brooks (CAN) 7.60
VIVO Rio Pro Presented by Corona Cero Men’s Semifinal Results:
HEAT 1: Cole Houshmand (USA) 15.06 DEF. Miguel Pupo (BRA) 13.83
HEAT 2: Griffin Colapinto (USA) 14.84 DEF. Ethan Ewing (AUS) 14.20
VIVO Rio Pro Presented by Corona Cero Women’s Quarterfinal Results:
HEAT 1: Caroline Marks (USA) 12.16 DEF. Tatiana Weston-Webb (BRA) 4.10
HEAT 2: Luana Silva (BRA) 12.80 DEF. Tyler Wright (AUS) 8.84
HEAT 3: Molly Picklum (AUS) 10.50 DEF. Arena Rodriguez (PER) 7.17
HEAT 4: Erin Brooks (CAN) 9.84 DEF. Lakey Peterson (USA) 8.94
VIVO Rio Pro Presented by Corona Cero Men’s Quarterfinal Results:
HEAT 1: Miguel Pupo (BRA) 12.33 DEF. Yago Dora (BRA) 10.30
HEAT 2: Cole Houshmand (USA) 13.50 DEF. Jake Marshall (USA) 13.26
HEAT 3: Griffin Colapinto (USA) 14.90 DEF. Jordy Smith (RSA) 9.80
HEAT 4: Ethan Ewing (AUS) 14.43 DEF. Italo Ferreira (BRA) 13.40
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(黒本人志)