超ワイドテールにダブルフォイルの二枚フィン。ミニシモンズのドライブ感は『スロットル全開』。 Pictures by Ryo Ri. Surfer: Junichi Shimada

シングル・ツイン・トライは、こうイメージすればよく解る(番外編 ミニシモンズ)

もう1つのツインフィン。ミニシモンズ的発想はスピードこそ全て、スタイルこそ全て!

シリーズ「おいらはサーファーの味方」No. 30

シングル・ツイン・トライは、こうイメージすればよく解る』のツインフィン番外編として「ミニシモンズ」をテーマにコラムしました。


ミニシモンズの生みの親はだれ?

さて、2000年に入って、「ミニシモンズ」というデザインがサーフィンの世界に登場した。デビュー当時は「なんだこりゃあ!」と誰もが目を見ひらき「これ乗れるの?」と絶句した。「シモンズ」という昔の木製サーフボードがルーツとなったミニシモンズ。一度は歴史に埋もれて消えてしまったデザインに、ふたたび光が照らされ、ソフィスティケートされて蘇ったというわけだ。

ミニシモンズの生みの親はサンディエゴのシェーパー「ジョー・バグアス」。彼は元祖シモンズと出会ったときに、その原理に興味を持ち、現代版を作ろうと思い立った。ウィンドサーフィンやカイトサーフィンのボードもシェープする彼は、その経験と、かつ流体力学も考慮し、ミニシモンズを2006年に新しいサーフボードとして完成させた。従ってミニシモンズは元祖シモンズの直系でありながら、レトロフィッシュやMRよりもずっと若いツインフィンということになる。

http://joebsurfshapes.com/
ミニシモンズと、半世紀以上も時代を先取りしすぎた元祖シモンズ
https://www.youtube.com/watch?time_continue=5&v=C8DTnpsWmtA
ジョー・バグアスのインタビュー

ボブ・シモンズは正しかった

なぜミニシモンズが21世紀に再デビューしたのか、それは元祖シモンズが流体力学に基づいたたいへん優れたデザインだったから~(チコちゃん風)。というのも元祖シモンズを作ったボブ・シモンズはアメリカ空軍にエンジニアとして雇われるほどの工学的に天才肌だった人物。

当時のサーフボードのデザインに疑問を抱いていたボブは、ある日リンゼイ・ロード博士が著した船体の滑走に関する本と出会う。その本を読み、プレーニングという自然現象が起きることを知る。プレーニング性能の高いサーフボードを開発すれば、より速いスピードを得られるという結論にボブは達する。(プレーニング:サーフボードが波のフェイスを滑っている状態)

ボブはサーフボードに、ワイドテール、ダブルフォイルのツインフィン、ボトムコンケープと当時はまだ誰も考えていなかったアイデアを盛り込み、当時、最速のサーフボードを完成させた。
しかしそのサーフボードは、市場ではあまり受け入れられなかった。当時の一般的なサーフボードとは、見た目も合わせてかけ離れたデザインだったためだった。しかもボブ・シモンズ自身が、サーフィン中の事故に遭って死んでしまい、開発が行き詰まり、シモンズというサーフボードはサーフィンの世界からフェードアウトしてしまう。

http://www.minisimmonssurfboards.com/
ミニシモンズ流行の一役を担ったタイラー・ウォーレンのバーオブソープ

しかし南カリフォルニアのサーファーを中心にして、再びこのシモンズというデザインが見直され、「ミニシモンズ」という名で再デビューを果たす。彼のデザイン理論が正しかったことが21世紀になって改めて証明された。つまり彼の発想はあまりにも早すぎたというわけだ。

元祖シモンズの理論を受けついだミニシモンズの特徴は、ボード本体の幅が広く全長が短いこと、テールもワイドでスクウェアかダイヤモンドが多い。2枚のフィンは、ツインフィンのサーフボードの中で一番大きくダブルフォイルの半月型や、キール型が装着される。フィンプレースメントはトゥーインしていないものが多く、平行かほぼそれに近く、しかもテールエンドに近い場所にセットアップされている。これらは水流の抵抗をできるだけ少なくしながらも安定を得るためで、元祖シモンズから受け継いでいるのはもちろんだ。

https://www.naludamagazine.com/
Tia Blanco ズングリムックリのミニシモンズも持つ人でキュートに・・

ミニシモンズとは対局にあるMRタイプのツインフィンは、片面フォイルで、トーインしたサイドフィンのセットアップはターンの性能が高い、と以前のコラムで説明した。その一方で水流の抵抗が発生しやすいというデメリットもあることはもうすでにご存知と思う。

しかしミニシモンズはフィンの形状がダブルフォイルで、プレースメントも平行、つまりツインフィンと言っても、MRタイプとは全く異なる性能が備わっていて群を抜くスピードを誇る。しかも全長が短いために、サーフボードに乗っているときのフィーリングは、他のサーフボードとは異質なフィーリングだ。近いといえばレトロフィッシュだが、やはりそれとは違った乗り味をミニ・シモンズは持つ。(現在ではさまざまなハイブリットのミニ・シモンズが登場している)

元祖シモンズからフルアップデートされたミニシモンズの登場は、サーフボード界に一石を投じた。長さが短くても、幅がそれを補って十分な揚力は得られればプレーニングも早いということが証明され、CTサーファーたちが試合で使用するサーフボードにも少なからず影響を与えている。

4’11”は筆者のサーフィン人生で最小、でもダウンザラインでのドライブ感は人生で最速 Shaper;Jeff Mccallum

とにかくミニシモンズは全長が短くてもプレーニングに十分なアスペクトレシオ(縦横の比率)が得られる。ちなみに私が初めて乗ったミニシモンズのサイズは4’11”×22”×2”(150cm×56cm×5cm)しかなかったが、オーバヘッドの波でも十分に機能し、小波でもテイクオフが早かった。

ミニシモンズをツインフィンの番外編として紹介したのは、できるだけ多くのサーファーにこのサーフボードを体験してもらいたいという気持ちが筆者にはあるからだ。見た目よりも乗り味はずっとナチュラルだし、その群を抜くスピード感はサーフボードの認識を新たにするに違いない、とくに、大きなラインを描ける波では驚くべき性能を発揮する。

(李リョウ)

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